2012年9月18日火曜日

独首相が原発ゼロ目指す日本の決断を歓迎 政府は面映ゆいのでは?

 政府が14日に、「2030年代に原発ゼロを目指す」という新たなエネルギー戦略を決めたことに対して、ドイツの首相がその決断を歓迎するスピーチを行いました。しかしこれは野田政権にとって面映ゆいことではなかったでしょうか。 

東京新聞その他が伝えているように、米国が日本の「原発ゼロ」方針に不快感を示したことで、日本の原発ゼロ政策はすっかり骨抜きになりました。この「米国の不快感」というのは、スリーマイル島の原発事故(1979年)以来原発新設を中断している米国の原子力産業は、現在日本の技術と資金の両面で支えられているものの、ここで日本が原発ゼロを打ち出せば、日本の技術力低下は避けられず、原発増設を進める中国に原子力市場で主導権を握られかねないからだというもので、言わば随分身勝手な言い分なのですが、それを唯唯諾諾と受け入れるのが、半世紀以上にわたって取られている日本の対米姿勢であるわけです。 

政府が曲がりなりにも「30年代に原発ゼロを目指す」と言わざるを得なかったのは、原発ゼロを願う強い世論の前では選挙対策上そうするしかなかったのですが、米国の圧力で、その振りをしばらくの間することさえ出来ませんでした。 

それに対してドイツは実に徹底していました。2002年に先ず倫理委員会を立ち上げて、そこから「10年以内に脱原発が可能」との提言を受けて、22年までに全ての原発を停止することを決定しました。
問題はその委員会のメンバーですが、どのようなエネルギー政策を求めるかは、社会、消費者が決めるべきとの考えから、元環境相やドイツ研究振興協会の会長、カトリック司祭、財界人、消費者団体などの17人とし、原子力の研究者は1人も入れませんでした。このように中立性の高い人たちが決めた結果なので、決定は権威のあるものとなり、国を挙げて尊重する方針となりました。 

もともとドイツと日本とでは、戦争責任の取り方についての国際的な評価でも、雲泥の差がありました。今回の「原発ゼロへ」の取り組みを見ても、改めてそうしたことが思い起こされます。 

以下に独首相が日本の原発ゼロ決断を歓迎したニュースと、古い記事ですが「なぜドイツは原発を止められたのか」の記事を紹介します。
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独首相、原発ゼロ目指す日本の決断歓迎
TBSニュース 2012918 

 2030年代に原発ゼロを目指すとする日本政府の戦略について、すでに「脱原発」を表明しているドイツのメルケル首相は17日、日本の決断を歓迎すると述べました。
 
 「私は日本の決断を歓迎します。それぞれの国が、独自のエネルギー政策を決定するのは当然のことです」(ドイツ メルケル首相)

 メルケル首相は、「日本の決断を歓迎する」と述べた上で、再生可能エネルギーの導入や、発電の効率化などについても、今後、日本に協力していく考えを示しました。
 ドイツは、すでに、2022年までに全ての原発を廃止すると決めていて、風力などの再生可能エネルギーの発電量は、去年、全体の20%を超え、原発の18%を上回ったとしています。 

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なぜドイツは原発を止められたのか
ミランダ・シュラーズ・ベルリン自由大学教授講演 朝日新聞201174

( 前 略 ) 17基の原発があるドイツでは2002年、シュレーダー政権が22年までに原発を全廃することを決めた。メルケル政権は昨秋、原発の稼働期間を34年まで延長したものの、福島の原発事故後、地方選挙で反原発を掲げる緑の党が大躍進した。政府は原発の是非を諮問する倫理委員会を立ち上げ、「10年以内に脱原発が可能」との提言を受けて、22年までに全ての原発を停止することを決定した。

 原発事故が起きた日本より、ドイツでのインパクトの方が大きいのはなぜか。
 背景には、1986年に旧ソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故がある。1000キロ離れていたドイツにも雨などで放射能が届き、1年ほどは「子どもを外で遊ばせない方がいい」「野菜を食べない方がいい」といった騒ぎが起きた。
 また、米ソ冷戦の時期で、西ドイツに米国のミサイルを置くという議論があり、第三次世界大戦が起きたら、ドイツがグラウンド・ゼロ(爆心地)になる、という懸念もあった。
( 中 略 )
 原発の是非を諮問する倫理委員会には、元環境相やドイツ研究振興協会の会長、カトリック司祭、財界人、消費者団体など17人の委員がいたが、原子力の研究者は1人もいなかった。どのようなエネルギー政策を求めるかは、社会、消費者が決めるべきとの考えからだ。
 原発容認派と反対派が半々くらいだったが、いつかは原発を廃止した方がいいという点で一致した。問題が起きた時のリスクが、ほかのどのエネルギーよりも大きく、国境を超えて世界に影響を与え、放射性廃棄物という問題も次世代に残してしまうからだ。原子力は倫理的ではないエネルギーだ、と委員会は判断した。
 ただ、いつまでに原発を廃止するかという点については、2035年までという立場の人や、明日にでも、という人もいて、合意に至るのが難しかった。

 メルケル首相には、原子力はもちろん、CO2を排出する火力も減らすべきだと提案した。ドイツは苦労するだろうが、今それをする必要がある。
 そして、再生可能エネルギーに投資すべきだ。1990年ごろ、ドイツで再生可能エネルギーはほとんどなかったが、固定価格買い取り制度を導入した結果、現在では電力生産量の17%を占めている。2022年までに35%に増やすという政府の目標を達成するのは、そう難しくないだろう。  ( 後 略 )