2012年9月21日金曜日

憲法時評 「日米同盟と慰安婦問題」 の紹介


 20日、伊藤真氏が主宰する法学館憲法研究所のホームページに、同所顧問の浦部法穂氏の憲法時評「『日米同盟』と『慰安婦問題』」が掲載されました。
以下に要旨を紹介します。 

【要 旨】
▽民主党では野田氏の再選が濃厚と聞くにつけても、よほど人材がいないと思われるし、自民党の総裁候補5人の顔ぶれを見てもやはりその感がある。
 
2009年に政権の座についた民主党は、当初は「対等な日米関係」を掲げたが、野田内閣は自民党政権以上に露骨な対米従属路線を突き進んでいる。「日米同盟こそが最重要」というのは、結局「アメリカの言うことに逆らわないで従うことが最も重要」ということになっている。
 
▽以前には憚られた「日米同盟」という言葉がおおっぴらに使われているのは、9条の「空洞化」がそこまで進んだということでもある。
 
▽民主党代表選でも自民党総裁選でも、候補者が例外なく「日米同盟の強化」を言うと同時に、日本の戦争責任を否定する発言も多く聞かれる。8月末に野田首相が、「慰安婦問題」について「軍や官憲が強制連行したことを証明する資料はない」と発言したが、これは安倍晋三・元首相と全く同じ発言である。
 
2007年にアメリカ下院で、慰安婦問題に関する日本政府の公式謝罪を求める決議案が採択されたとき、日本の政治家・学者など44人が『ワシントン・ポスト』紙に、「日本軍によって強制されたことを示す歴史的な文書は発見されていない」、「慰安婦は、当時世界で一般的であった公娼制度のもとで働いていた」などという「事実」をあげて、下院決議案の不当性を訴える広告を出したが、それがむしろ「逆効果」となって、決議案に賛成する議員が増えた。これはアメリカ的感覚では、慰安婦問題は「女性の尊厳と人権」に関わる問題であり、強制性の有無などは重要ではなく、まして「当時としては一般的なことだった」などとして正当化するような言いぐさは、破廉恥きわまりないと受け止められたからである。
 
2006年のブッシュ・小泉首脳会談での共同文書「21世紀の新しい日米同盟」では、「普遍的価値観と共通の利益に基づく日米同盟」ということを掲げたが、日本が「慰安婦問題」についてあれこれ責任回避のようなことを言うのは、(実際のアメリカがそんな立派なことを言える国・社会なのかは別にして、アメリカの)「普遍的価値観」を否定することになる。
 
▽アメリカが、社会の「本能的嫌悪感」を背景に、「普遍的価値観」の観点から日本に「慰安婦問題」への対応への圧力をかけてくる可能性は、決して小さくない。そうなってから「すみませんでした」と謝るのか。それとも、「河野談話の見直し」を主張する安倍氏などは、いざとなれば「普遍的価値観」を共にはせずに、「日米同盟」を壊すこともいとわない、というのであろうか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後のところは、「日米同盟」を宗としつつ「慰安婦問題」からは逃げようとしている人々への、痛烈な揶揄となっています。 

 「憲法時評」の全文は下記のURLにアクセスしてご覧ください。

 (※ 新聞記事や声明文などを除き、著作権をもつ文書については、今後は原則としてこの形式にします。)