福井県若狭湾の沿岸には国内原発の3割(基数ベース : 15基)が集中していて、日本の原発銀座と呼ばれています。しかし非常に不幸なことに、そこがまた国内でも活断層が最も多く集中している地域でした。一体なぜそんなことになったのでしょうか。
原発の建設に当たっては周辺や敷地内の地層を調査し、最終的に安全であると原子力安全保安院が認めなければ進められません。保安院にはそうした審査能力があるとも思えないので、実際には保安院が選んだ専門委員会が審査した筈ですが、そこがいわゆる原子力ムラのメンバーであったがために、結果的にこういうことになりました。いずれにしても最終的な責任は保安院にあります。
建設認可申請書類に含まれていた大飯原発の地層データ=地層断面図
のコピーの一部を、たまたま市民グループが保有していたのを、活断層の専門家である東洋大の渡辺満久教授※(変動地形学)が見て、活断層だろうと判断しました。それが「F-6断層(破砕帯)」です。
※新潟県生まれ。80年東京大学理学部卒業。理学博士(東大大学院理学系研究 科
地理学専攻 博士課程修了)
しかし同教授らがその後何度関西電力にその地層データの提出を求めても、紛失したということを口実に提出せずに、申請書類を保管している筈の保安院もまた出しませんでした。
そうした経過ののちに、保安院の組織替えが迫ったこの夏になって、ようやく大飯原発を含む若狭湾沿岸一帯にある原発の活断層の調査が行われることになりました。
しかし例えば大飯原発の調査を担当する企業が、3、4号機を建設した三菱重工と同系列の「ダイヤコンサルタント」(東京)であったり、その調査方法も、前出の渡辺満久教授が活断層の調査には有効でないと指摘するボーリング調査が多用されているなど、依然として不明朗な進め方がされています。 「ムラ」を守るためには何でもアリでは国が滅びます。
以下に福井新聞の記事を紹介します。
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敦賀原発下、副断層なら廃炉も 福井県内で破砕帯再調査
福井新聞 2012年9月12日
原発の敷地内にある断層(破砕帯)をめぐり、活断層かどうかの調査が福井県内の各原発で進められている。東日本大震災を受け、経済産業省原子力安全・保安院はこれまで動かないとされてきた断層の再点検に乗り出し、疑いの残るものは現地で追加調査するよう指示したためだ。中でも焦点となるのは日本原電敦賀原発の破砕帯が、敷地内の活断層と構造的に関係する「副断層」かどうか。他の原発でも活動性、連動性が調査される。結果は11月から来年3月にかけて報告されるが、審査は原子力規制委員会に受け継がれ、調査結果をどう評価するかも難しい作業となる。
破砕帯の再検証が全国に広がる発端は、保安院が4月に敦賀原発で行った現地調査。敷地内を通る活断層「浦底断層」から複数の破砕帯が枝分かれするように1、2号機の直下にも延び、同行した専門家は「浦底断層に引きずられる形で動いたのではないか」と指摘。活断層である可能性が浮上した。
原電は活動性を否定したものの、保安院は再調査を指示。地層と破砕帯の関係や、破砕帯の活動性の有無などを確認し、11月に結果を報告する予定。
国の規定では、自ら地震を起こす主断層だけでなく、これに連なる副断層も活断層として扱い、その上に原子炉を設置することは「想定していない」としている。一方、保安院は「副断層と認められても廃炉となる法的手続きはない」ともいう。
ただ、原子力規制委員会の発足後は、最新の安全規制を既存原発にも適応するバックフィット制度が導入されるため、新たな基準に基づき廃炉につながる可能性はある。
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国の耐震指針では、原発の耐震性を判断する場合に考慮する活断層は12万~13万年前以降の活動があるものと規定。これに当てはまる年代に活動があったか調べるほか、周辺の活断層と原発敷地内の破砕帯が連鎖的に動くかどうかの確認も大きなポイントになる。
国の専門家会議では、関西電力美浜原発と日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」の破砕帯が、両原発の近くに位置する活断層「白木―丹生断層」と連動して動く可能性が完全には否定できないと指摘された。ただ、保安院は「敦賀原発と違い、今のところ活断層と直接つながる副断層と思われない」とし、大飯原発での調査を含めて「連動や活動性を否定するためのデータ拡充が主眼」とも説明する。
美浜原発ともんじゅの調査は、敷地内のコンクリートなどをはぎ取って地下の破砕帯を直接確認。連動性の有無を調べるため、海の音波探査や地表踏査などを行う。
3、4号機が7月に再稼働した大飯原発で再調査するのは、1、2号機と3、4号機の間をほぼ南北方向に走る「F-6断層(破砕帯)」。東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)らが活断層の可能性があると指摘した。関電はボーリングや試掘溝調査などを行う。
大飯原発については12月、美浜原発ともんじゅは来年3月に結果が最終報告される予定。
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調査をめぐる課題の一つは、事業者自らが調査主体となっている点だ。河瀬一治敦賀市長は保安院に中立性を担保するよう要請したほか、国の専門家会議でも同様の指摘が出ている。
政府は原子力規制委に関する13年度予算の概算要求で、これまで電力会社任せだった断層調査を規制委が実施するための費用を盛り込んだ。
県の原子力安全専門委員会は大飯3、4号機の安全性を確認した際、F-6断層を「安全評価上問題ない」とした保安院の評価を追認した。しかし一連の追加調査の動きを踏まえ、中川英之委員長は「大飯だけでなく敦賀半島も含め、破砕帯の現場検証や議論を進めたい」と再検証の考えを示している。