2013年9月11日水曜日

枝野9条私案は集団的自衛権の行使に道を開くもの

 民主党の枝野氏が「文芸春秋」に寄稿した憲法9条改憲私案が話題になっています。
 報道によれば私案の趣旨は、自衛権行使の要件を明文化した条項を条に追加し、憲法解釈の幅を極力狭めることで「時の内閣の判断で憲法解釈を変更できる可能性をなくす」ことと説明しているようです。
 しかし改憲案をみると、確かに9条の1項、2項はそのまま残していますが、新たに「9条の2」(1項~4項)と「9条の3」(1項~3項)を追加することで、これまで問題とされてきた集団的自衛権の行使や、国連から要請のある自衛隊の海外活動をすべて認めるという内容になっています。
 これはいわゆる加憲ではなくて明確な改憲であり、一体何が安倍政権の暴走に対する歯止めになっているのか理解できません。

 日本共産党の市田書記局長は9日の記者会見で、この私案について記者に問われ、「集団的自衛権の行使に道を開く危険な内容結論からいうと私案は、安倍政権が進める集団的自衛権行使の容認に道を開く、きわめて危険な内容だ。歯止めどころかそれを促進するものだ」と批判しました。

 以下にしんぶん赤旗、東京新聞の記事と枝野9条改憲私案を紹介します。
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枝野9条改定私案―歯止めどころか集団的自衛権の行使に道を開くもの 
市田氏が批判
しんぶん赤旗 2013年9月10日
 日本共産党の市田忠義書記局長は9日の記者会見で、民主党の枝野幸男元幹事長が雑誌に発表した憲法9条改定にむけた私案について記者に問われ、「集団的自衛権の行使に道を開く危険な内容だ」と批判しました。

 市田氏は、枝野氏の試案が、安倍政権が狙う集団的自衛権の解釈の見直し、将来的には憲法そのものの明文改憲にたいし対立軸を示し、解釈改憲に歯止めをかけるものといわれているが、「結論からいうと私案は、安倍政権が進める集団的自衛権行使の容認に道を開く、きわめて危険な内容だ。歯止めどころかそれを促進するものだ」と指摘しました。
 市田氏は、「憲法の命ともいうべき、侵略戦争の反省の上にたって『二度と戦争はしない』という9条1項を生かしめているのは、『軍隊をもたない』『交戦権は認めない』という9条2項だ」と強調。その上で、「(私案は)その2項を変えないというが、新たな条項を加えることによって、事実上、日本がアメリカと一緒に海外で戦争できる国にしようとする安倍政権と同じ道を歩む危険なものだ」「(安倍政権の路線の)対立軸でなく促進の役割だ」と述べました。

枝野氏 9条改憲私案 自衛権行使要件を明文化
東京新聞 2013年9月8日
 民主党憲法総合調査会長に任命された枝野幸男元官房長官が憲法九条の改正私案をまとめ十日発売の月刊誌「文芸春秋」に寄稿したことが七日分かった。自衛権行使の要件を明文化した条項を九条に追加し、憲法解釈の幅を極力狭めることで無原則な軍拡に歯止めをかける必要性を打ち出している。「時の内閣の判断で憲法解釈を変更できる可能性がある」ことが現行憲法の最大の問題と指摘。解釈変更で集団的自衛権の行使容認を目指す安倍政権の姿勢を批判した。

 私案は改憲派と護憲派による「両極端の主張」と異なる「第三の道」と称し、最重視すべきは「自衛目的ではない武力行使に踏み切らないようにすることだ」と強調。「個別的」と「集団的」に分けた自衛権の考え方には疑問を投げ掛けた。
 具体的には、内閣法制局の従来解釈に基づき(1)急迫不正の武力攻撃を排除するため(2)他に手段がない場合(3)必要最小限の範囲で-とした現行の自衛権発動三要件を条文に明記。同時に、日本を守るために行動する他国と共同して自衛権を行使できる、などとした。
 国連平和維持活動(PKO)など国際機関の活動には「正当、明確な意思決定に従い、国際法規に基づく場合に限り、参加や協力ができる」としている。

民主党枝野憲法総合調査会長が示す憲法9条
(朝日新聞デジタル版より引用)
 【現行部分】 
 1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
 2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 

 【追加条項】 
 9条の2 
 1項 我が国に対して急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がない場合においては、必要最小限の範囲内で、我が国単独で、あるいは国際法規に基づき我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を守るために行動する他国と共同して、自衛権を行使することができる。 
 2項 国際法規に基づき我が国の安全を守るために行動している他国の部隊に対して、急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がなく、かつ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全に重大かつ明白な影響を及ぼす場合においては、必要最小限の範囲内で、当該他国と共同して、自衛権を行使することができる。 
 3項 内閣総理大臣は、前二項の自衛権に基づく実力行使のための組織の最高指揮官として、これを統括する。 
 4項 前項の組織の活動については、事前に、又は特に緊急を要する場合には事後直ちに、国会の承認を得なければならない。 
 9条の3 
 1項 我が国が加盟する普遍的国際機関(現状では国連のこと)によって実施され又は要請される国際的な平和及び安全の維持に必要な活動については、その正当かつ明確な意思決定に従い、かつ、国際法規に基づいて行われる場合に限り、これに参加し又は協力することができる。 
 2項 前項の規定により、我が国が加盟する普遍的国際機関の要請を受けて国際的な平和及び安全の維持に必要な活動に協力する場合においては、その活動に対して急迫不正の武力攻撃がなされたときに限り、前条第一項及び第二項の規定の例により、その武力攻撃を排除するため必要最小限の自衛措置をとることができる。 
 3項 第一項の活動への参加及び協力を実施するための組織については、前条第三項及び第四項の例による。