愛媛新聞は21日、「集団的自衛権の行使 戦後平和主義の否定に等しい」とする社説を載せました。
「集団的自衛権の行使を容認すれば、武力行使の領域が際限なく拡大され、海外での戦闘行為にも道を開くことになる。そして平和憲法の下、日本が戦後一貫して堅持してきた平和主義を否定するものである。当然、中国や韓国はじめ周辺国をいたずらに刺激し反発を招く。」と、明快に述べています。
北海道新聞は、政府が、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更の結論を、来年春以降に持ち越す方針を固めたと報じました。
公明党が行使の容認に慎重な姿勢を堅持していることに配慮したもので、、年内にまとめる新防衛大綱に行使容認の政権方針を明記するのは困難になったということです。
この「行使の容認」は愛媛新聞が述べているように平和憲法を根底から覆すものであり、“解釈によって憲法を改変する” ないしは “法律によって平和憲法を凌駕する” というもので、決定が数ヶ月遅れるということに意義があるというようなことでは勿論ありません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説) 集団的自衛権の行使 戦後平和主義の否定に等しい
愛媛新聞 2013年9月21日
政府は、集団的自衛権の行使を禁じている憲法解釈の見直しに向けた議論を本格化させた。
安倍晋三首相が設置した安全保障に関する有識者懇談会が7カ月ぶりに議論を再開、全面的な行使容認を盛り込んだ報告書を年内にもまとめる段取りだ。
集団的自衛権の行使容認は、専守防衛を旨としてきた日本の安全保障政策の大きな転換となる。武力行使の領域が際限なく拡大され、海外での戦闘行為にも道を開くことになりかねない。平和憲法の下、日本が戦後一貫して堅持してきた平和主義の否定であり、断じて許されない。
歴代政権は、日本は国際法上、集団的自衛権を有しているが、憲法9条で許容される自衛のための必要最小限度の範囲を超えるとして行使を認めていない。政府の「法の番人」である内閣法制局の長官経験者らも、解釈改憲には否定的な見解を示している。
それなのに政府は、行使容認の目的を国民に十分説明しないばかりか、真正面から憲法改正を論じようともしていない。衆参で過半数を制した余勢を駆って、歴代内閣が積み上げてきた憲法解釈を独断で変更しようとする姿勢には危惧を感じざるを得ない。
第1次安倍政権時に懇談会がまとめた報告書は、公海上の米艦の防護や、米国を狙った弾道ミサイルの迎撃について集団的自衛権を認めるよう求めた。今回は類型や同盟・友好国の対象を拡大する方向で議論が進む見通しだ。
しかし、専門家の間でも有事の場合、米艦防護などは個別的自衛権の発動で対応可能との見方が強い。非現実的な類型を種々想定し、集団的自衛権の行使を包括的に容認しなければならない緊急性も必然性もないのだ。
首相の念頭には、北朝鮮の核開発や中国の海洋進出など、変化する東アジアの安全保障環境への危機意識があるとみられる。だが、今、行使容認に踏み込めば、関係改善の糸口が見えない中国や韓国はじめ、周辺国をいたずらに刺激し、反発を招くだけだ。
同盟国のアメリカは、自衛隊の活動領域拡大に歓迎の意向を示すものの、アジアでの影響力維持を狙う戦略上、日本と中韓との関係悪化を回避したいのが本音のはず。日本が軍事的貢献度を高めても、日米安保体制強化にはつながるまい。むしろ、共通敵との戦争に巻き込まれるリスクが増すだけになりかねない。
日本がとるべき道は、唯一の被爆国、戦争を放棄した平和国家として、国際社会で核兵器廃絶や軍備削減、外交による平和的紛争解決を主導することだ。強引な政権運営によって、国民を再び危険にさらすような対応を急ぐことではない。
集団的自衛権容認、越年へ 憲法解釈変更で政府
北海道新聞 2013年9月21日
政府は、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更手続きの結論を来年春以降に持ち越す方針を固めた。早期開始で調整していた自民、公明両党による与党協議も先送りする。公明党が行使容認に慎重な姿勢を堅持しているため、時間をかけて検討する必要があると判断した。政府関係者が21日、明らかにした。行使容認の政権方針を、年内にまとめる新防衛大綱に明記するのは困難な情勢となった。
首相周辺は公明党の対応を踏まえ「集団的自衛権は急ぐ話ではない」と言明した。少なくとも来年1月召集の通常国会で2014年度予算を成立させるまでは結論を出さない意向を示した。