アメリカのオバマ大統領はシリア攻撃に先立って、議会の承認を受けることを表明しました。フランス以外はイギリスを始め同盟国の参加が見込めず、国内の世論も支持しないなかでは、政府の考えだけで断行はできないと判断したものと思われます。
夏休み中の米議会は9日に再開されるので、その週内に採決を行う見通しで、政府は上下両院に対して、軍事攻撃に踏み切る根拠について機密情報を含む詳しい説明を行い、理解を求める考えでいます。
アメリカでは下院議員161名が大統領に事前の議会承認を求める書簡を渡し、世論調査でも国民の80パーセントが、アメリカ軍のシリア攻撃には下院と上院による承認が必要だと考えています。そうしたなかで上下両院で承認されるかどうか予測が難しいとされています。
オバマ氏は拒否された場合に攻撃を断念するのかどうかには言及しませんでした。
一方、唯一アメリカと共同歩調を取るとしているフランスでは、国内の世論は軍事介入反対に大きく傾いていて、西アフリカのマリへの1月の軍事介入では支持が多数を占めたのとは対照的です。シリアが不安定化すればイスラム過激派勢力が伸長する=シリア攻撃が過激派を利する という懸念が背景にあるとされています。
国連のネザキー報道官は1日の記者会見で、シリアでの化学兵器の使用疑惑については、あくまでも国連安保理が主要な役割を果たし、国際社会が結束して臨むべきだとし、国連の調査団が現地で採取したサンプルは、2日から分析を始めることを明らかにしました。
同報道官は、アメリカのケリー国務長官がすでに化学兵器が使用されたという独自の証拠を入手したと述べたことに対しても、「国連が現地調査を通じて化学兵器の使用の実態を公正に把握できる唯一の機関だ」としました。
西側諸国は、シリアの反政府勢力の側には化学兵器を製造する能力はないとしていますが、サウジから化学兵器入手したという情報もあるようです。また化学物質はシリア政権側が砲弾に封入してを打ち込んだとしていますが、毒ガスが発生したのは静寂な深夜であり、住民は着弾音や破裂音などは聞いていないと報道されています。
何よりも政権側には化学兵器を使用する必要性がなく、また使用すれば逆効果になるのは明らかで、政権側も当然そのことを承知していました。
この事件には謀略の疑いが色濃く感じられます。
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米、シリア攻撃先送り オバマ氏「議会承認求める」
東京新聞 2013年9月1日
【ワシントン共同】オバマ米大統領は8月31日、ホワイトハウスで声明を発表、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したと非難し「軍事行動を起こさねばならないと決断した」と初めて明言した。同時に軍事介入について米議会に事前に承認を求める考えを表明した。間近とみられていた対シリア攻撃は先送りされた。
オバマ政権は議会への働き掛けを強めているが、上下両院の夏季休暇明けは9月9日のため、軍事介入に踏み切るのは9月中旬以降にずれ込む公算。議会の承認は予測が難しく、オバマ氏は拒否された場合に攻撃を断念するのかどうかには言及しなかった。
米の軍事攻撃に「ノー」 NY繁華街で市民ら集会
東京新聞 2013年9月1日
【ニューヨーク共同】米ニューヨークの繁華街タイムズスクエアで31日、米国によるシリアへの軍事攻撃に反対を訴える集会が開かれ、数百人が「ノー・ウォー・シリア(シリアでの戦争に反対)」と気勢を上げた。
市民団体などが呼び掛けた集会で、参加者らは「米国の軍事介入にノー」「シリアから手を引け」などと書かれたプラカードを掲げて抗議。
オバマ大統領と、イラク戦争当時のブッシュ元大統領の写真を並べ「誰が行うかにかかわらず戦争犯罪を許すな」と書かれた横断幕も見られた。
国連「安保理が主要な役割を」(シリア問題)
NHK NEWS WEB 2013年9月2日
アメリカのオバマ大統領がシリアへの軍事行動に踏み切るにあたって議会の承認を求める方針を示したことについて、国連のネザキー報道官は1日の記者会見で、「大統領の決定は国際社会の広いコンセンサスを得たうえで化学兵器問題への対応を打ち出そうという動きの一環だとパン・ギムン事務総長も受け止めている」と述べ、国連として評価していることを明らかにしました。
そのうえでネザキー報道官は、シリアでの化学兵器の使用疑惑については、あくまでも国連安保理が主要な役割を果たし国際社会が結束して臨むべきだというパン事務総長の考えを強調しました。また、ネザキー報道官は、シリアで現地調査に当たった国連の調査団について、オランダのハーグにある化学兵器禁止機関が中心となって、2日からシリアで採取したサンプルの分析を始めることを明らかにしました。
一方、アメリカのケリー国務長官がすでに化学兵器が使用されたという独自の証拠を入手したと述べたことについては、「国連は現地調査を通じて化学兵器の使用の実態を公正に把握できる唯一の機関だ」として、国連による調査の意義を訴えました。