日本体育大学の清水准教授(憲法学)が特定秘密保護法案について、ご自分が出されたパブリックコメントをブログで公開しました。
教授の意見書を読むと同法案の問題点が良く分かります。
以下に紹介します。
(17日がパブリックコメントの締め切り日です)
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私が提出した秘密保護法についてのパブコメです
清水雅彦の憲法・鉄道・バイクetc. 2013年9月16日
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「特定秘密の保護に関する法律案」についての意見
2013年9月16日 清水雅彦
現在、私は大学で憲法学を研究・教育している者です。憲法研究者としての立場から、「特定秘密の保護に関する法律案」(以下、「秘密保護法案」と略す)を検討した場合、以下の理由からこのような法律の制定には反対です。
1 パブリックコメントの期間を延長すべきです
そもそも、このパブリックコメントの募集期間が短すぎます。法案は国民の権利・自由に大きな影響を及ぼす可能性があるのですから、期間を延長すべきです。これでは形だけ国民に意見を聞いたというものにすぎず、主権者国民を馬鹿にしています。
2 法案に関する情報をもっと開示すべきです
今回発表された法律案の概要では情報量が少なすぎます。これまで、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」の記録が破棄されていたことが明らかになっていますし、情報公開市民センターが内閣情報調査室に法案に関する情報の開示を求めたところ、「国民の間に未成熟な情報に基づく混乱を生じさせるおそれがあ[る]」からという、全く主権者国民を馬鹿にした理由で非開示にしました。法案制定前からこのような秘密主義を貫く政府に、秘密保護法案を提出する資格はありません。
3 そもそも制定する必要がありません
現在、国家公務員法や自衛隊法、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法など現行法によって、既に秘密保護法制は整備されています。現行法の不十分さが立証されないかぎり、新たな法律を制定する必要はありません。
4 処罰対象の拡大と厳罰化は国民を萎縮させます
秘密保護法案の対象は、国や自治体だけでなく、行政機関等から事業委託を受けた民間事業者・大学にまで拡大する可能性があり、処罰対象が公務員に限らず、広く民間人にも及ぶことを意味します。また、秘密の取得行為や教唆行為及び煽動行為も処罰の対象にするということは、国民の知る権利に応えて取材・報道活動に従事する報道関係者の活動も処罰される可能性があります。そして、罰則規定が国家公務員法や自衛隊法より重い懲役10年以下に厳罰化されていることは、実際に法律が適用されなくても法律の存在自体が国民の表現活動に対して大きな萎縮効果を持ち、国民生活にとってマイナスです。
5 さまざまな国民の権利・自由を侵害する可能性があります
このような法案が制定されたならば、国民に広く影響を及ぼす可能性があります。まず、報道関係者を筆頭に広く国民の取材・報道など表現の自由が制約され、国民の知る権利が十分に保障されないことになります。適性評価制度の導入によって、関係者のプライバシー権や思想・良心の自由が侵害され、場合によっては大学等の学問の自由も侵害される可能性があります。さらに、規定の仕方によっては秘密保護法違反で起訴された者の公開の法廷で裁判を受ける権利や弁護を受ける権利が侵害されることもありえます。
6 必要なのは情報公開と国民の権利保障
民主党政権の時は、情報公開法の改正が予定されていましたが、現在の自公政権の下ではその予定はありません。今、必要なのは国家の秘密を覆い隠し、国民のさまざまな権利を侵害することになる秘密保護法の制定ではなく、国民主権の下で国民が適正な民主的決定を行うための情報公開です。秘密保護法案を国会に提出しないことを強く求めます。