2013年9月8日日曜日

日米首脳会談でもTPPの年内交渉妥結を合意

 5日から始まったサンクトペテルブルクでのG20首脳会議に先立って、約1時間日米首脳会談が行われた際に、安倍首相とオバマ大統領の間でTPPの年内妥結で合意したことが分かりました。

 交渉期間を縮めればそれだけアメリカ以外の参加国が不利になることは明らかで、日本の国益も守れないし、国益を守るためにアメリカの要求を頑強に拒否しているマレーシアやベトナムなどの努力をも無にしかねません。
 
 理解しがたいことですが、安倍首相や甘利大臣はTPPで日本の国益を放棄することに対して、一貫して確信犯的に振舞っています
      2013年9月4日 「国益を守る好機なのに 売国の安倍政権(TPP)

 それはそれとして、過半数を占めていた筈の自民党内のTPP反対勢力までがいま、なりを潜めているのはどうしてなのでしょうか。
 これほどまでに政権とその与党が、国益を無視することになんらの抵抗感も持っていないというのも、まことに不可思議な話です。

 以下にTPP交渉についての東京新聞と日米首脳会談についての日経新聞の記事を紹介します。
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TPP交渉 「年内妥結」合意 残り3カ月厳しさ増す
東京新聞 2013年9月8日
 安倍晋三首相がオバマ米大統領との首脳会談で、環太平洋連携協定(TPP)交渉の年内妥結で合意したことで、日本政府が各国と交渉する時間は残り三カ月となった。日本のように途中から交渉に参加した後発国は、先に交渉を進めていた米国など先発国が合意した事項を拒否する権利がない。もともと不利な立場の日本は首相の決断で、利害が対立する国の譲歩を引き出す時間がさらに短くなった。 (城島建治、大杉はるか=安倍首相同行)

 「なぜ、オバマ氏の要求にそのまま応じたのか。交渉期限を設けたことで、譲歩を引き出す時間がなくなった」。首相を支える政府関係者はこう批判した。
 TPPをめぐっては、日本、米国、カナダなど十二カ国が現在、二十一分野で交渉中。そのうち、関税撤廃などを協議する「市場アクセス」、医薬品の特許などを取り扱う「知的財産」など五分野で交渉が難航しており、利害対立が目立つ。
 交渉時間を少しでも確保したい日本としては、交渉妥結が遅れれば、有利な条件を勝ち取る可能性が増える。
 また、日本は後発国であるカナダ、メキシコ両国と連携し、時間をかけて米国など先発国から譲歩を勝ち取る戦略を描いていた。両国首脳が参加する二十カ国・地域(G20)首脳会合はそのいい機会だったが、TPPについて協議しなかった。
 首相がオバマ氏と会談した五日。TPPに慎重な自民党議員でつくる「TPP交渉における国益を守り抜く会」(森山裕会長)が開いた会合で、交渉脱退を求める声が出された。西田昌司参院議員は「今は国益が守られているか判断できない」と指摘した。

 米国主導で進むTPP交渉について、以前から自民党内で批判が強い。
 関税が原則撤廃され、安い外国の物品やサービスが日本に流れ込めば、日本の農業などは打撃を受ける。農薬などの基準が緩い外国の食品が大量に輸入されれば、食の安全も低下しかねない。
 こうした声は首相にも届いていた。しかし、首相は無視するかのように、年内妥結を求めるオバマ氏に追従した

日米、シリア情勢改善へ連携 首脳会談で確認 
日経新聞 2013年9月5日
 【サンクトペテルブルク=佐藤賢】20カ国・地域(G20)首脳会議が5日午後(日本時間同日夜)、ロシアのサンクトペテルブルクで開幕した。これに先立ち安倍晋三首相はオバマ米大統領と約1時間会談した。オバマ氏はシリアでの化学兵器使用は「国際法違反」と明言し、両首脳はシリア情勢の事態改善に向けて連携する方針を確認。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の年内妥結をめざして協力することでも一致した。

 シリア情勢について首相は「緊密に引き続き連携し、事態を改善していきたい」と表明。「大統領の考えは十分理解している。重い決意と受け止めている。国際社会の幅広いコンセンサスを得ようとする大統領の努力を評価する」と述べた。「難民、周辺国支援に取り組んでいく」とし、人道支援を拡大する方針も伝えた。
 首相は「化学兵器の使用はいかなる場合も許されない。北朝鮮などの大量破壊兵器を保有する国との関係にも波及する」と指摘。オバマ氏は「化学兵器使用は国際法違反で、対応が必要との認識で安倍首相と一致していると考えている」と語った。シリアへの軍事介入について直接の言及はなかったという。

 首相はTPPに触れ「戦略的観点からも非常に重要だ。年内妥結に向けて緊密に協力したい」と力説。「力強い日本の成長が力強い日米関係につながる」との認識を示した。

 首相は国家安全保障会議(日本版NSC)設置や防衛大綱の見直し集団的自衛権の行使容認に関する検討を挙げ「日米同盟強化を見据えたものだ」と説明した。沖縄県の米軍普天間基地の沖縄県内移設にも言及し「難局をしっかり打開したい」と強調。首相は大統領の来日を招請し、オバマ氏は「ぜひ調整したい」と応じた。

 日米両首脳は3日に電話でシリア情勢を巡り約30分間協議。G20首脳会議の際の会談は見送る方向だったが、米側の要請で一転して実現した。ロシアや中国がシリアへの軍事介入に反対する中、軍事介入を容認する姿勢の日本と米国の結束を誇示する狙いがある。