シリアのアサド大統領はロシアの提案を受け入れて、「米国がシリアに対する威嚇的な政策をやめること」を条件としながらも、化学兵器禁止条約に加盟する意向を表明しました。
これでひとまずはアメリカは軍事介入を見合わせることになりました。しかし、「シリアに対する威嚇的な政策をやめること」といわれたアメリカが、それに反発する可能性は勿論あります。
一方CNNによれば、アメリカは2週間も前から、再びシリアの反政府勢力に武器を供給し出しました。
これまでもアメリカは中東などでの政情不安定、大衆蜂起や政変の殆どにかかわってきました。
このたびのシリア空爆構想についても、「アメリカが支援する反政府勢力が劣勢に立たされているのを挽回するため」、という見方は出ていました。
国内にアサド氏を非難する勢力があるのと同様に、アサド氏は温厚な人であると評価し支持している勢力も無数にいます。
もともと「民族自決」、「内政不干渉」というのが国際間の大原則なのですが、そのことを完全に無視して、早い頃には東南アジア各国で一連の政変に、そして今では中東その他での政情不安定に、一貫してかかわっているのがアメリカであり、CIAです。
自分たちのいうことを聞かない政権は倒す・・・それがアメリカのポリシーです。
軍事介入の口実となった化学兵器の使用は、反政府勢力がサウジから譲り受けた毒ガス兵器を運搬中に、誤ってガス放出させてしまったものであったことをAP通信記者が暴露しました。仮にそのことがなくても、そもそも国連の調査団を呼び入れたアサド政権側が、その2、3日後に自ら化学兵器を使用するなどは常識的にあり得ないことでした。
13日の朝日新聞の「声」欄に、「化学兵器はダメで核兵器は許されるのか」という主旨の投稿がありました。誰かそれに答えられる人はいるのでしょうか。
「化学兵器はダメでナパーム弾は許されるのか」、「夜となく昼となく米本国にいながら無人攻撃機のミサイル発射ボタンを押して、目標地点の周囲数メートル以上の人間を爆殺するのは許せるのか」、という疑問にはどうでしょうか。
他にも特殊な火薬で地上の広範囲を無酸素状態にして、そこにいる人間を殺害する爆弾も現に使われているということです。
最強者には何でも許されるという、いわば「中世期的な不条理」はいまもなお健在です。
いまだけというよりは、人類はいつまでもそのくびきから脱することができない、というのが正確なところかもしれません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シリア、化学兵器禁止条約に加盟 アサド大統領が表明
東京新聞 2013年9月13日
【モスクワ、ジュネーブ共同】 シリアのアサド大統領は、自国の化学兵器を国際管理下に移すロシア提案を受け入れ、化学兵器禁止条約に加盟する意向を表明した。アサド氏が自ら保有を認め、条約加盟を明言したのは初めて。ロシアのテレビ局が12日、インタビューを放映した。
ただ、国際機関への情報開示は加盟の1カ月後に始めると説明。また加盟の条件として「米国がシリアに対する威嚇的な政策をやめること」を挙げており、米国が反発する可能性もある。
ケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相は12日、ロシア提案をめぐりジュネーブで会談する。少なくとも13日までの日程。提案の成否は、米国によるシリア攻撃回避の鍵を握る。
米、シリア反体制派への武器供給開始 小火器や対戦車兵器
CNN 2013年9月12日
(CNN) 米政府当局者は11日、シリア情勢に関連し、同国のアサド政権軍と戦う反体制派への武器供給をここ2週間内に開始したことを明らかにした。
提供されている武器は、小火器や対戦車用の兵器、弾薬類など。これら武器は米国製ではなく、資金供与して他国製を確保したとしている。これらの兵器供与は米中央情報局(CIA)が行っている。
武器を手渡した相手の詳細は伝えられていないが、反体制派の代表組織「国民連合」やシリア軍の離反者で組織する反体制派武装組織「自由シリア軍」は米国から武器の提供を受けたことを否定した。
米政府はシリア内戦で、過激派に流出する事態を恐れ、反体制派への武器支援には消極的だった。しかし、アサド政権軍による化学兵器使用疑惑が発覚した後の今年6月、反体制派への直接の武器支援に転じる意向を表明。ただ、供与する武器は殺傷能力のない種類としていた。
反体制派への武器供給の開始は米紙ワシントン・ポストが最初に報じていた。
シリア情勢をめぐっては軍事介入に傾斜していたオバマ米政権が、ロシアによるシリアの化学兵器を国際監視下で管理するなどの提案に同意し、外交手段で事態打開を図る姿勢に転じた。ただ、アサド政権による時間稼ぎなどを阻止するため、武力行使の準備は続行する方針を示している。