3日、特定秘密保護法案(旧名称:「秘密保全法案」)が自民党のプロジェクトチーム(PT)で大筋が了承されました。知る権利が侵されないようにするとか、報道の自由が損なわれないようにするとかのリップサービス的な議論はあったようですが、別にそれらが法案に反映されたわけではありません。
PTの大筋了承を見て、6日には合計8紙が同法案に反対する社説を掲げました。
8月20日以降、分かっているだけでも合わせて22紙になります。社説には書かなくとも法案反対の記事を載せている新聞も勿論あります。
因みに各社のタイトルは下記の通りです。
(タイトル中の「特定秘密保護法案」と社名中の「新聞」は記載を省略)
6日付
報道の自由への配慮が必要だ (読売)
知る権利侵害の悪法許さない (赤旗)
知る権利 侵害するな (沖縄タイムス)
情報管理の行き過ぎを懸念 (熊本日日)
法制化は見送るべきだ (京都)
知る権利に重大な影響も (岐阜)
知る権利に重大な懸念 (茨城)
知る権利を保障できるのか (河北新報)
5日付
国民主権と民主制の否定だ (琉球新報)
拭えぬ 知る権利の侵害 (西日本)
国民の知る権利守れるか (徳島)
危険な法案は断念せよ (信濃毎日)
4日付
懸念材料が多すぎる (毎日)
3日以前
解釈で統制強化の恐れも (佐賀)
漏えい防ぐ効果は薄い (神奈川)
国会での慎重な議論を (南日本)
政府は国会提出方針の撤回を (愛媛)
知る権利 は大丈夫か (中国)
国民不在の法制化やめよ (琉球)
情報の国家統制は危うい (山陽)
脅かされる 「知る権利」 (北海道)
権利の侵害は許されぬ (朝日)
国民の権利に大きな懸念 (高知)
情報の国家統制は危険 (京都)
秘密保全法(新名称:特定秘密保護法)案の危険性についてはこれまでもしばしば取り上げて来ましたが、これだけ多くの(殆どの)新聞が反対しているのは珍しいことです。
如何に危険な法案であるのかが、このことからも分かります。
以下にしんぶん赤旗の主張(=社説)を紹介します。
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(主張) 特定秘密保護法案 知る権利侵害の悪法許さない
しんぶん赤旗 2013年9月6日
安倍晋三政権が国民の知る権利を侵害する「特定秘密保護法案」の概要を公表し、国民からの意見公募(パブリックコメント)を始めました。秋の臨時国会に法案を提出し成立させる構えです。
概要は、「防衛」「外交」「安全脅威活動」「テロ」の4分野のなかから行政機関の長が指定するものを「特定秘密」とし、漏えいした職員などへの罰則も最高で懲役10年にまで引き上げることを明記しています。国家秘密を外部に流出させないことを表向きの理由にしていますが、ほんとうの狙いが国民やメディアの目をふさぐことにあるのは明らかです。
異常な重罰主義
秘密保護の対象を「特定秘密」にしたのは、何でもかんでも秘密にされるといった国民の批判をかわすためです。しかし4分野はあいまいで、「特定秘密」の範囲も行政機関の長の判断次第で拡大される仕組みです。原発情報も「特定秘密」にされかねません。
概要は「特定秘密」を取り扱う国家公務員が漏えいした場合、最高で10年の懲役という罰則を規定するとしています。国家公務員法の1年以下、自衛隊法の5年以下をはるかに上回る罰則規定です。「各議院」「各委員会」を対象にあげて国会の活動を対象にする文言もあります。「特定秘密」にたずさわる民間企業の従業員にも懲役5年以下の罰則がついています。法案の危険性は明白です。
報道関係の取材が処罰対象にされかねないことも懸念されます。「特定秘密」の管理者の「管理を害する行為」や「教唆又は扇動」も処罰の対象としています。管理者を粘り強く説得し、情報を得ようとする取材を処罰の対象にするのでは取材の自由に反します。
政府はいまでも国家情報の多くを秘密扱いにし、国民が知ることのできない状況にしています。防衛省は12万件以上も秘密です。外務省などの他省庁も同じです。にもかかわらず、「特定秘密保護法」を新たにつくるのは、日米両政府が2007年に結んだ「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)を根拠にしています。
アメリカの「防諜(ぼうちょう)法」は「違反者」に懲役10年を科しています。GSOMIAはこの「防諜法」並みのレベルにしないと重要な国家秘密を提供できないとして、アメリカが日本に押し付けたものです。安倍首相がアメリカの「国家安全保障会議」をまねた日本版「国家安全保障会議」(NSC)設置法案と一体で、「特定秘密保護法」を制定しようとしているのは、まさにこのためです。
安倍首相は憲法解釈を変えて「集団的自衛権」行使の容認にふみきろうとしています。日本をアメリカと一体に海外で「戦争する国」に変えるためです。国民とメディアの目をふさぎ、「国民の知る権利」を侵害して、日本をアメリカの戦争に参加させる企ては断じて許されません。
暗黒政治くりかえすな
日本国民は、戦前の政府と軍部が「軍機保護法」などで国民の目と耳をふさいだことが侵略戦争につながったという苦い経験をもっています。戦前の暗黒政治をくりかえさせないためにも、「特定秘密保護法」策定の阻止が不可欠です。
憲法が保障する「国民の知る権利」を生かすことこそ、悪法を許さないためにも重要です。