機密指定を解除された米国公文書によって、1970年当時、沖縄返還に伴って尖閣諸島の施政権も日本に戻ってくることから、日本が尖閣に気象観測所を建設し将来は周辺の石油探査拠点として使用しようとしたことに対して、米国が「台湾、中国との対立のリスクを高める」ことになるからと反対したことが分かりました。
当時中国は毛沢東主席の時代で、米中・米ソは対立状態にありましたが、そういうなかでも尖閣諸島の領有権に関しては米国は中立の立場を取りました。それは現在も続いている立場で、いわば善意の第三者の見解と見ることができます。
日本が米国の意向に従って気象観測所の建設を断念したのは、領土問題の存在を認識したからにほかなりません。米国のいうことだから無条件に従ったまでだというのは勿論通用しません。
尖閣諸島は日本の領土であって領有権問題は存在しない(⇒ 鄧小平氏の領有権問題棚上げ提案自体もなかった)というのが現在の日本政府の立場で、領土を主張できる根拠も確かに持っています。
しかしながら中国もまた、簡単には否定することのできない領有権の根拠を主張しています。
公平に見て日中双方に言い分があるということです。
中国が領土上の膨張主義を持っているという見方もありますが、そうかといって「領有権問題は存在しない」という立場に固執して、一切の妥協や話し合い自体を拒否して ただ「ひたすら島の防衛を固める」ということでいい筈がありません。
日中間の緊張が増し対立が深まることは米国も望まず、長年 日本に要求してきた「集団的自衛権の行使」も、日中間の対立を促進するから不要だといまは考えているとまで言われています。
TPP交渉を見るにつけても、米国相手ならいかなる国益でも言われるがままに提供している日本が、相手が中国となると一切の妥協を拒否し、領有権問題棚上げ論さえも認めないというのは理解に苦しむところです。
先ずは日中間に尖閣諸島の領有権問題が存在することを認めて話し合いを始めるべきです。
本当に日本は第三者を説得できるのか、国際司法裁判所に提起することを含めて、そろそろ考え直してみるべきではないでしょうか。
以下に産経新聞に記事を紹介します。
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沖縄返還前の「尖閣観測所」計画、米圧力で中止に 中台反発を懸念
産経新聞 2013年9月5日
沖縄返還前年の1971年、尖閣諸島の施政権も日本に戻ってくることを見越し、尖閣に気象観測所を建設しようとした日本政府に対し、米政府が計画中止を求め日本側が応じていたことが5日、機密指定を解除された米公文書で分かった。尖閣の領有権を主張していた中国や台湾が実効支配の確立を急ぐ日本の動きに反発、地域の不安定化を招くことを懸念した。
米国は72年、沖縄の一部として尖閣の施政権を日本に返還したが、主権判断は棚上げに。文書は日中台の対立に巻き込まれるのを防ごうと腐心した経緯を明らかにしており、尖閣の主権問題をめぐる米国の原点を示すものといえそうだ。
71年1月11日付の在日米大使館公電などによると、日本政府は翌年の施政権返還をにらみ気象観測所を尖閣に建設することを計画、政府の財源で着工すると米政府に伝達。将来、周辺の石油探査拠点としても使用すると説明した。当時のロジャース米国務長官は「台湾、中国との対立のリスクを高める」として、日本の観測所建設に反対するよう在日米大使館に指示した。