2015年6月21日日曜日

シールズ関西の声明:私たちはなぜ「戦争立法」に反対するのか

 シールズ関西( 自由と民主主義のための学生緊急行動:関西)が戦争立法反対の声明を出しています。
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シールズ 関西(=自由と民主主義のための学生緊急行動)の声明 
私たちはなぜ「戦争立法」に反対するのか
2015年6月19?日
「戦争立法」の主要問題点
 
 2015年5月14日、安倍晋三内閣は、11法案を含む「安全保障法制法案」(以下、「安保法制」)を閣議決定しました。この「安保法制」の中身は、新法案である国際平和支援法と、10の改正法案を1つに束ねた、平和安全法制整備法案で構成されています。具体的には、集団的自衛権の行使や他国が行う戦争への後方支援、グレーゾーン事態やPKOの対応などが新たに提起されました。この「安保法制」により、海外における自衛隊の活動範囲と活動内容が大幅に拡大し、日本は様々な方法で戦争に参戦することが可能になります。
 
 安倍政権は、自衛隊が国外の戦争に参戦することが、日本の平和のために必要であるといいます。しかし、日本が戦後70年間維持してきた「平和主義」とは、武力に依拠した結果、多くの人間の命を奪った戦争への痛切な反省から、武力に頼らずに平和を達成していこうとする姿勢です。戦争は決して人間を幸福にすることありません。戦争を行うことを可能にする今回の安保法制によって、安全が保障されることはありません。
 
このような安保法制に対して、私たちは以下の2点から反対を表明します。
①立憲主義、代表制民主主義の軽視
②安保法制により、戦争に巻き込まれるリスクが高まる
以下では、この2つの側面から問題点を指摘していきます。
 
①立憲主義、代表制民主主義の軽視
(a)立憲主義に反する閣議決定
 現在議論されている安保法制は、集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定に基づき、法案化されたものです。しかし、集団的自衛権の行使は、憲法に違反する行為であるため、本来であれば、国民投票による改憲手続きが要求されます。それにも関わらず、安倍政権はそれを回避し、解釈で憲法を変えることにより、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しました。このような、内閣の一存で進められた「解釈改憲」は、明らかに憲法を軽視した行為であり、立憲主義に反しています
 
(b)代表制民主主義に反する法制定過程
 また、今回、「平和安全法制整備法案」として、10もの法案が一束ねにされ、国会に提出されました。安倍政権は、この10の法案を、今夏までにという非常に短い期間で立法する意向を示しています。国会は、唯一の立法機関であり、法律が1つ作られる、あるいは変更されるうえで、十分な議論を行う責任があります。法内容が異なる10もの法案を一括で、さらに短期間で改正しようとする安倍政権の行為は、この国会を軽視する行為であり、代表制民主主義を形骸化させるものです。
 
 ②戦争に巻き込まれるリスクが高まる
 安倍首相は、海外で自衛隊は武力を使えないというこれまでの立場を、「積極的平和主義」という言葉を使い、逆転させようとしています。「積極的平和主義」とは、中国の台頭やISISといった、日本を取り巻く安全保障環境が近年変化したことを受け、日本の平和と安全を、アメリカなど国際社会と軍事的に協力して維持・獲得していく必要がある、という考え方です。そのため、今回の安保法制を整備し、自衛隊が海外で武力を用いることを可能にする必要があるというのです。
 しかし、自衛隊が海外で武力を使えるようになることで、アメリカが行う対テロ戦争へ参戦することが可能になるなど、戦争に巻き込まれるリスクが高まります。それにより、例えばこれまで以上にテロの対象となるなど、逆に日本の平和が脅かされることにつながりかねません。同時に、自衛隊員が殺される、あるいは、敵や民間人を殺す危険性も確実に増大します。
 
(a)抑止力が高まり、日本が安全になることはない
 今回の安保法制は、紛争解決の手段として軍事力に依拠することで、国家間の軍事的緊張を余計に煽り、戦争へと発展するリスクを高めるものです。安倍政権は、集団的自衛権を行使することなどを可能にすることで、中国の軍事行動を抑止したいと考えています。しかし、軍事力をもって敵対姿勢を見せることで、中国の反発を生み、逆に軍事行動を促進させてしまう危険性があります。また、相互不信を深めることにもつながり、その結果として、意図しない武力衝突を引き起こすことも考えられます。
 同様に、安保法制によってテロを防ぐことはできません。むしろ、自衛隊が海外で戦争に参戦することが可能になることで、相手側から明確な敵と見なされ、これまで以上にテロの対象となる可能性が高まることになります。中国にしろ、ISISのようなテロリズムにしろ、武力によってこれらの事態が抑止されることはありません。
 
(b)歯止めが明確でない法案
 今回の安保法制では、多くの「事態」が設けられましたが、どれもが具体的にどのような事態や危険を想定しているのかは曖昧なままです。そのため、集団的自衛権や他国軍の戦争支援等を行うことに対する制限がなく、日本への影響が低い場合であっても、時の政権の恣意的な解釈により濫用され、いたるところで戦争に参戦することが可能になる危険性があります。
 「武力攻撃事態法改正案」では、集団的自衛権を行使する要件として、「存立危機事態」が新たに設定されました。これは、「日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けたことにより、日本の存立が脅かされ、国民の生命や権利が根底から覆される明白な危険がある場合」とされています。しかし、具体的にどのような危険が該当するかは明確でないため、解釈次第でいくらでも対象を拡大することができてしまいます。政府は、ホルムズ海峡が機雷で封鎖され、日本への石油の輸入が困難になった場合を、具体例として挙げていますが、それだけで、国民の生死が左右される危機であるとは到底考えられません。曖昧なままであれば、このような経済的被害であっても、戦争を行う理由とされる可能性があります。
 この他にも、「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」などが設けられましたが、全ての事態が曖昧であるだけでなく、各事態の境界を明確に区別することもできません。このような事態のままでは、歯止めなく集団的自衛権の行使や戦争支援が可能になります。
 
(c)自衛隊員の命に関わるリスクが増える
 今回の安保法制により、自衛隊員の命に関わるリスクは確実に高まります。「重要影響事態法案」、「国際平和支援法案」では、米軍を始めとした他国軍が行う戦争に、地球規模で自衛隊を派遣し、「後方支援」をより広い地域で行えることを新たに可能にすることが提起されました。
 日本はこれまで、日本周辺に限り、米軍のみを支援することを可能としてきました。しかし、今回の法案により他国軍の戦争をいつでも、どこにおいても支援することが実質的に可能になります。また、支援活動を行う場所も拡大されます。これまでは、「非戦闘地域」に限定されていましたが、今回の法案では、「現に戦争が行われている現場」以外の場所とされ、自衛隊がより戦闘に近い現場で支援活動をするようになります。さらに、「後方支援」の内容も拡大され、これまで禁じられてきた武器の輸送や弾薬の提供、戦闘機等への給油が可能とされました。これより、他国の武力行使に自衛隊がより一層関与することになります。
 「後方支援」とは、国際的に見れば、実質的な戦争参加に他なりません。2003年のイラク派遣においても、自衛隊は攻撃を受けている事実があります。今回の法案で、「後方支援」を行う活動範囲、内容が拡大されたことで、これまで以上に攻撃の対象とされる危険性が増し、自衛隊員が殺し、殺されるリスクが増加されることは明らかです。