国会で3人の憲法学者が相次いで「安保法案は憲法違反」との見解を示し波紋を広げています。
与党推薦の立場ながら「憲法違反」の意見を述べた長谷部教授がTBSの「NEWS23」の取材に応じました。
TBSの文字ニュースを紹介します。
文中、茶色で示した部分はインタビューの合間に挿入されている前日や以前のニュースです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
与党推薦教授「危険なやり方」 学者199人「違憲」
TBSニュース 2015年6月8日
国会で3人の憲法学者が相次いで「安保法案は憲法違反」との見解を示したことが波紋を広げています。実は3人だけではありません。199人の憲法学者も「憲法違反」との見解を表明しています。与党側は問題の火消しに躍起ですが、国会で与党推薦の立場ながら「憲法違反」の意見を述べた教授が「NEWS23」の取材に応じ「安保法案の進め方は極めて危険なやり方だ」と批判しました。
週末、新宿で街頭演説に立った自民党・谷垣幹事長。
「平和安全法案も、まさに最高裁判所が判断する憲法論の枠内で作られている」(自民党 谷垣禎一幹事長 7日)
抗議のプラカードが目立つ中、新たな安全保障法制は憲法論の枠内で作られていると改めて理解を求めました。
「帰れ、帰れ、帰れ」
「帰れ帰れと叫ぶだけでは平和は来ません日本の平和と安全に抑止の力が必要なのか必要でないのか、そのことをじっくり議論しようじゃありませんか」(自民党 谷垣禎一幹事長 7日)
同じ日、地元・山口で党の大会に出席した高村副総裁も・・・
「国民の命と暮らしに責任を持つのは憲法学者ではない。政治家が国民の命と暮らしに責任を持たなければならない。ぜひ、ご理解をいただきたい」(自民党 高村正彦副総裁)
国会で3人の憲法学の重鎮たちがそろって安保法制を「憲法違反」と答えた問題。中でも、与党推薦の立場だった早稲田大学・長谷部恭男教授が違憲との認識を示したことの余波が続いています。その長谷部教授が8日、「NEWS23」の取材に応じました。先週の発言以降、見知らぬ人からメールや手紙が相次いでいるといいます。
「(普段届くのは) お前の意見はけしからんという手紙だが、今回は見知らぬ方からよくぞ言ってくれたという手紙が多く驚いている」(早稲田大学 長谷部恭男教授)
長谷部教授が憲法違反だと指摘した集団的自衛権の問題を改めて整理します。日本では憲法9条で戦争の放棄がうたわれていますが、外国の攻撃を受けたときには、自衛のための武力行使、いわゆる個別的自衛権が認められるとされてきました。これを安倍政権は去年7月、あくまでも日本を守ることが目的であれば、密接な関係にある他国を守るために武力行使ができるとの趣旨で解釈を変更。集団的自衛権が限定的に認められるとしました。
「国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではないことから、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、立憲主義に反するものではありません」(安倍晋三総理大臣 先月26日)
「およそ、自国に対する外国からの攻撃があった時に、それに対して反撃をするというのと、他国を防衛するために自国の武力を行使する、これは全く事柄の性質が違うもの。これは論理的な整合性は損なわれている」(早稲田大学 長谷部恭男教授)
長谷部教授はその上で、今回の安保法制の進め方は危険なやり方だと指摘します。
「もし、仮に集団的自衛権の行使を容認すべきだというのであれば、それは正々堂々と憲法改正の手続きに訴えるべき。国民の理解がどうも行き届かないうちに日本の防衛のあり方、国のあり方を根本的に変えてしまおうというのは、極めて危険なやり方である」(早稲田大学 長谷部恭男教授)
実は、長谷部教授は以前から去年7月の閣議決定の問題点を指摘してきています。そのため、ことさら今回の違憲発言が注目されるとは思っていなかったといいます。
「こういう発言をする人間を呼んできたことに間違いがあったのだと言う方がいるように聞いているが、だとすると、一体、誰を呼べば良かったのか。圧倒的多数の憲法学者は、これは憲法上許されないと考えているはず」(早稲田大学 長谷部恭男教授)
憲法違反、そう判断した憲法学者は3人だけではありません。
「(署名は)合計で193人になってます」(聖学院大学 憲法学 石川裕一郎教授)
聖学院大学で憲法を研究する石川教授ら5人は、全国の憲法学者およそ300人に安保関連法案に反対する声明への賛同を呼びかけました。
「憲法に対する政権の認識が、憲法そのものが相当軽視されている。この法案が通ってしまうと、法規範として憲法が持っている意味がどうなるんだろうと」(聖学院大学 憲法学 石川裕一郎教授)
活動を始めてからおよそ2週間で続々と返信が届き、8日午後10時時点で署名は199人分に上っています。
「(学者からの反応は)多いですし、かなり早く集まった感じがします。政府の動きが極めて早いというか、悠長に構えていると、法案がどんどん成立していってしまう」(聖学院大学 憲法学 石川裕一郎教授)
憲法の専門家たちの意見を政府はどう受けとめるのでしょうか。国会での議論は10日に再開されます。