安全保障関連法案に反対するさまざまな分野の学者や研究者らのグループが東京で記者会見し、法案は憲法に違反しており、学問と良識の名において廃案を求めるなどと訴えました。
学者の会の声明文とともに、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の声明文も併せて紹介します。
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安保関連法案 反対する学者が廃案求め声明
NHK NEWS WEB 2015年6月15日
後半国会の焦点となっている安全保障関連法案に反対する学者らが東京都内で会見し、法案は憲法に違反しており、学問と良識の名において廃案を求めるなどと訴えました。
会見したのは、集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案に反対する、さまざまな分野の学者や研究者で作るグループです。
この中で学習院大学の佐藤学教授が「審議中の法案は、他国が海外で行う軍事行動に自衛隊が協力し、加担するもので憲法9条に違反する。学問と良識の名において断固として反対する」として、廃案を求める声明を読み上げました。
経済学が専門で青山学院大学の間宮陽介特任教授は、「政府は違憲の指摘に対し『学者の論理だ』というが、政治家の判断が常に正しいとはかぎらず、第三者がチェックすることが大切だ」と指摘しました。
また、国立天文台の海部宣男名誉教授は、「科学も芸術も取り込まれた戦前の翼賛体制を反省していないのではないかと民主主義の危機を感じている。憲法学や政治学の問題と言って黙っているわけにはいかない」と述べました。
声明には、これまでに2700人余りの学者や研究者のほか、一般のおよそ1800人が賛同しているということで、今後も訴えを続けていきたいとしています。
【学者の会の声明文】
「戦争する国」へすすむ安全保障関連法案に反対します
「戦争しない国」から「戦争する国」へ、戦後70年の今、私たちは重大な岐路に立っています。安倍晋三政権は新法の「国際平和支援法」と10本の戦争関連法を改悪する「平和安全法制整備法案」を国会に提出し、審議が行われています。これらの法案は、アメリカなど他国が海外で行う軍事行動に、日本の自衛隊が協力し加担していくものであり、憲法九条に違反しています。私たちは憲法に基づき、国会が徹底審議をつくし、廃案とすることを強く求めます。
法案は、①日本が攻撃を受けていなくても他国が攻撃を受けて、政府が「存立危機事態」と判断すれば武力行使を可能にし、②米軍等が行う戦争に、世界のどこへでも日本の自衛隊が出て行き、戦闘現場近くで「協力支援活動」をする、③米軍等の「武器等防護」という理由で、平時から同盟軍として自衛隊が活動し、任務遂行のための武器使用を認めるものです。
安倍首相の言う「武力行使は限定的なもの」であるどころか、自衛隊の武力行使を際限なく広げ、「専守防衛」の建前に反することになります。武器を使用すれば、その場は交戦状態となり、憲法九条一項違反の「武力行使」となることは明らかです。60年以上にわたって積み重ねられてきた「集団的自衛権の行使は憲法違反」という政府解釈を安倍政権が覆したことで、米国の侵略戦争に日本の自衛隊が参戦する可能性さえ生じます。日本が戦争当事国となり、自衛隊が国際法違反の「侵略軍」となる危険性が現実のものとなります。
私たちは、かつて日本が行った侵略戦争に、多くの学徒を戦地へ送ったという、大学の戦争協力の痛恨の歴史を担っています。その歴史への深い反省から、憲法九条とともに歩み、世界平和の礎たらんと教育研究活動にたずさわり、再び戦争の惨禍を到来させないようにしてきました。二度と再び、若者を戦地に送り、殺し殺される状況にさらすことを認めることはできません。
私たちは、学問と良識の名において、違憲性のある安全保障関連法案が国会に提出され審議されていることに強く抗議し、それらの法案に断固として反対します。
2015年6月
安全保障関連法案に反対する学者の会
◇呼びかけ人(*は発起人 五十音順)
青井 未帆 (学習院大学教授 法学)
以下省略 (計61名)
【日本ジャーナリスト会議の反対声明文】
違憲の「戦争法案」は廃案、安倍内閣は退陣を
米国が世界で引き起こす戦争に自衛隊が参戦する安全保障関連法案、いわゆる「戦争法案」の審議が始まった国会で4日、自民・公明両党推薦の参考人を含む3人の憲法学者が揃ってこの戦争法案を「憲法違反」と断じた。安倍政権は「違憲ではない」(菅官房長官)と強弁するが、同法案の違憲性は鮮明となった。日本ジャーナリスト会議は、国会が立法府としての名誉と責任に於いて、同法案を廃案とするよう強く要求する。
これまでの審議で、戦争法案の多くの問題点が明らかになった。安倍政権は、集団的自衛権の行使について「政府が総合的に判断する」として拡大解釈の余地を残す答弁を繰り返し、他国に日本攻撃の意図が無くても集団的自衛権の行使は可能としている。安倍政権は、自衛隊は戦闘が発生しない地域に派遣するとしているが、法案には明記されていない。集団的自衛権行使に歯止めがかからないことを、政権自体が認めているのだ。
戦争法案で自衛隊の派兵について、安倍政権は地理的な限定をせず、支援地域は地球の裏側まで拡大する危険性がある。日本の安全に直接関係のない有志国連合による対「イスラム国」軍事作戦への支援も「法律的にはあり得る」としている。アフガン戦争で各国が参加した国際治安支援部隊(ISAF)のような国際組織にも派兵される可能性が強い。自衛隊の海外での武力行使は際限なく拡大する。
自衛隊の後方支援はこれまで「非戦闘地域」に限られていたが、戦争法案では「現に戦闘が行われている現場以外」に広げている。米軍などへの弾薬補給や自衛隊の現地補給基地などは攻撃の対象となる。自衛隊員が「殺し、殺される」危険が現実のものとなり、犠牲者は格段に増える。しかし、政府は「自衛隊のリスクはこれまでと変わらない」などとし、戦争法案がもたらす危険な現実を国民に説明せず、不誠実な態度に終始している。こうした状況を反映して、直近の世論調査では「安保法案 今国会成立『反対』59%」(「読売」8日)-推進派メディアでさえ「理解広がらず」と認めざるをえない事態である。
国会で与野党が合意して招致した憲法学者が声を揃えて「憲法違反」と指摘した事実は重い。安倍政権がこれに耳を傾けず、強行採決を企むことは、国民主権を踏みにじり、国権の最高機関である国会をないがしろにする暴挙であり、断じて許されない。私たち日本ジャーナリスト会議は、この戦争法案を廃案とし、安倍内閣の即刻退陣を要求する。併せて、全てのメディアに、廃案へ向けて取材・報道を強化するよう呼びかける。
2015年6月12日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)