2016年9月25日日曜日

豊洲新市場建物の耐震性能 不足の疑いが

 豊洲新市場の建物の地下部分で盛り土が施工されてない問題については、いま小池都知事が率先して基本設計を変更した経過等を確認させている最中で、TVなどで連日取り上げられています。
 盛り土の問題は鮮魚市場の『安全性かかわるもので、最重要事項の一つです。
 
 そのほかにも、新市場には建屋床の耐荷性能の不足、荷さばきがしにくい、鮮魚などを運搬するターレ-(電動式台車)の通路(方向転換個所)に余裕がない、店舗の間口が狭くてマグロが捌けない(使い勝手が悪い)など、市場として致命的と思われる『機能設計』上の問題が山積していることが指摘されています。
 
 今回さらに耐震性能不足(=違法建築)の疑いという、『強度設計』上の問題が指摘されました。
 24日付の日刊ゲンダイによると、(5階建)仲卸売場棟4階「荷捌きスペース」3800㎡)の押さえコンクリートの設計厚さ1センチだったのですが、それでは防水性が不十分なために実際は15センチ厚コンクリートを敷設しました。それはいいのですが、それによる床の重量増加分1300トンが構造計算書に反映されていないということです。
 
 建物の4階部分の重量が大幅に増えれば、杭荷重、柱荷重、床支持材荷重等がその分増え、併せて地震時に縦方向・横方向に加わる荷重も増えるので、建屋の構造計算(強度計算)をやり直す必要があります。
 豊洲新市場のような公共性の高い建物は、一般のビルや家屋より高い耐震性能が求められていて、一般の建物の耐震強度の125倍の性能(余裕率)を持つ必要があります。
 日刊ゲンダイが構造計算書を確認したところ、原設計での余裕率(複数項目)の最低値が1・25倍ピッタリになっているので、建物の4階部分が1300トン増加すれば当然余裕率(の一部)は1・25を割ることになります。
 
 同紙はその問題について、都の担当者とのやり取りの概要を報じています。
 詳細は記事を読んでいただくとして、要するに1300トンの重量増加を盛り込んだ構造計算書の訂正版は未だ作成されていなくて、耐震基準を満たしているかどうかは分からないということです。
 
 建物は完成しているのに、その強度上の根拠となる構造計算書の再計算をまだ行っていないというのであれば、まずそれ自体が違法(建築)に当たります。
 床の耐荷重不足に関しては、豊洲新市場に入る店舗に対して大型の水槽(生け簀)を持ち込まないように・・・などという呆れるしかない通達が出ているということなので、当然構造計算(コンピュータソフトで行う)は耐震計算を含めて繰り返し行っている筈です。それなのにまだ訂正版が出ていないというのは、公表できない結果になっている可能性が考えられます。建物の強度不足は地震時に大事故を起こす惧れがあるので、放置することは出来ません。都は一体何をしているのでしょうか。
 8月26日付日刊ゲンダイの記事も併せて紹介します。
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深まる違法建築疑惑 豊洲の耐震性能「大丈夫」に根拠なし
日刊ゲンダイ 2016年9月24日
 混迷を極める豊洲新市場。新聞、テレビは「盛り土」問題で大騒ぎだが、耐震基準を満たさない“違法建築”疑惑もくすぶっている。日刊ゲンダイの取材で、都は豊洲の建物が建築基準法上、適法である証拠を何ひとつ持ち合わせていないことが分かった。豊洲の「安全」はもはや、幻想と言うしかない。
 
■情報開示請求に見当外れの文書
  本紙は8月25日発売号で、豊洲新市場の “違法建築” 疑惑を報じた。公共性の高い建物は、民間所有の建物の「125」倍の耐震性能が必要だと建築基準法で義務付けられている。仲卸棟の安全性を証明する「構造計算書」によると、一部が125倍ギリギリの数値になっているが、もともと記載がなかった1000トン超の「押さえコンクリート」が後から追加されたことで重量がかさみ、125倍に満たない “違法” 状態の恐れがあることを指摘したのだ。
 この疑惑について、当時、都は「改めて計算し直したところ、134倍の性能があることが分かり、『押さえコン』を追加しても125倍を下回ることはない」(中央卸売市場・新市場整備部)と説明していたが、これがトンデモないごまかしだった。
 
  本紙は情報公開法に基づき、都に「耐震性能134倍の根拠資料」を開示請求した。今月20日に開示された計算書には、確かに「134」と記されていたが、ナント、この計算書には「押さえコンの追加分の重量が反映されていない」(新市場整備部)というのだ。
 
  そのうえ驚いたことに、本紙が“違法”状態と指摘したのとは全く別の場所についての計算書だった。仲卸棟は構造上「左、中央、右」に3分割されていて、それぞれの区域ごとに計算されている。本紙が当初、問題視した場所は「左ブロック」だったが、都が示した計算書は「中央ブロック」。なぜ見当外れの“根拠”を示したのか。新市場整備部の担当者に聞いたが、説明になっていない。
 
――開示された計算書は、134倍の根拠になっていない。
 「確かに押さえコンの追加分を反映した計算書でない以上、根拠としては不十分かもしれない」
 
――なぜ反映した計算書を示さないのか。
 「訂正手続きがなされておらず、反映した計算書がないからです。いつ訂正手続きを行うかは分かりません」
 
――仲卸棟の左ブロックは、耐震基準を満たしていないのではないか。
 「問題ないと思っていますが、資料がないので分かりません
 
  構造設計1級建築士の高野一樹氏はこう言う。
 「都が開示した計算書は、134倍の根拠になっていません。やはり押さえコンの重量が増えた分、仲卸棟の左ブロックは125倍を下回っている可能性があります。また、元の設計よりも建物全体の重量が増えているので、骨組みや杭にかかる負担も大きくなっていることが考えられます。これらの問題を検証し、全てクリアしなければ『安全』とは言えないでしょう」
 2005年の「姉歯事件」では、耐震偽装で多くのマンションやホテルが建て替えに追い込まれた。5884億円もの血税をつぎ込んだ豊洲も今から建て替えるのか。
 
  都はこれまで、建物の地下を空洞にし、盛り土をしなくても「問題ない」と言い続けてきた。今回の耐震性能のケースでも根拠もなく「問題ない」と言い張っている点で同じ構図だ。都庁という“伏魔殿”はどこまでも都民をバカにしている。 
 
 
移転撤回の決定打 豊洲新市場に耐震不足“違法建築”の疑い
日刊ゲンダイ 2016年8月26日
 これは「移転撤回」の決定打だ。荷物の重みで床が抜ける、間口が狭くてマグロが切れない――本紙はこれまで再三、豊洲新市場の欠陥を報じてきたが、ついに“違法建築”である疑いまで浮かび上がった。小池都知事もいよいよ決断のしどころである。
 
■1300トンのコンクリ塊を急きょ敷設
  別表は日刊ゲンダイが入手した豊洲新市場の「構造計算書」だ。中身を精査すると、不可解な記述が目につく。「仲卸売場棟」内の一部で、床の防水層を保護し、床そのものの損傷を防ぐために敷設される「押さえコンクリート」が、異常に薄い箇所が見つかったのだ。
  仲卸売場棟の4階に入る「関連物販店舗」と「荷捌きスペース」の両エリアに敷設された押さえコンクリの厚さは、たった1センチ。同じ階の「小口買出人積込場」は15センチ、1階の「荷捌きスペース」が25センチなのに比べると随分、心もとない。都に聞いてみた。
「『1センチ』と表記された箇所は、モルタルとセラミックを混ぜた補強材を使用しています。関連物販店舗のエリアは、この処理で床の強度に問題はない。荷捌きスペースは、実際には1センチの補強材に加え、15センチの押さえコンクリを敷設しています」(中央卸売市場・新市場整備部)
 
  ところが、構造計算書をいくら見直しても、荷捌きスペースには15センチの押さえコンクリについての記載は一切ない。どういうことなのか。
 「構造計算書の作成後、実際の施工に際し、現場が『やっぱり15センチの押さえコンクリは必要』と判断したとみられます。荷捌きスペースには、水や氷に漬かった鮮魚が運び込まれる以上、防水機能を強化する必要があり、急きょ計画を変更したようです。現状、計画変更手続きはなされていません」(同)
 
  ある構造設計の専門家は、「急な計画変更は珍しいことではないが、建物の重量が大幅に変わる以上は、早期に変更手続きを行わなければ、耐震基準を満たさなくなる恐れがある」と指摘する。
 コンクリの重量は1立方メートルあたり約235トン。1平方メートルで厚さ15センチの塊の重さは約350キロになる。4階荷捌きスペースの広さは3800平方メートルだから、単純計算で1300トン超の重量が加算されたことになる。
 
  実は、建物全体の重さが増したことで、建築基準法に抵触する可能性がある。
 「豊洲新市場のような公共性の高い建物は、一般のビルや家屋のような民間所有の建物より高い耐震性能が必要です。一般の建物の耐震性能を『1』とすると、『125』倍の性能を持たせなければならない。これは建築基準法に規定されています。構造計算書や設計図を見ると、豊洲は『125』倍ピッタリの数値で設計されている。押さえコンクリートを追加で敷設し、建物が重くなったのなら、耐震性能は『125』倍に満たず、“違法建築”状態になっている可能性があります。建物の重量が増せば、地震が起きた際、建物自体に与えるダメージが大きくなることにもなるのです」(建築エコノミストの森山高至氏)
  もはや小池知事は「立ち止まって考える」程度では済まない。