TPPは「百害あって一利なし」といわれます。自民党でさえも反対派が過半数を占めていたので、昨年暮れの衆院選では「関税撤廃など6つの懸念事項が解消しない限りTPPには参加しない」と公約しました。
しかし政権につくと何故かTPP批判勢力はすっかりなりを潜めました。夏にある参院選前に党内に内紛は生じさせないという合意からだということです。まさに国益を踏みつけにして党利にしがみついたわけです。
4月12日に公表されたTPPに関する日米事前協議の内容は酷いものでした。しかも日本側は事実を必死に隠す文書に仕上げたのですが、アメリカ側も文書で内容を公表するので日本側の隠蔽は不成功に終わりました。
これについてもマスメディアは殆ど報じませんでしたが、内田聖子氏などにより日・米の両発表文書の差異を指摘されて窮地に陥った政府は、ついに「両国の文書の差異には関心はない」と開き直りました。
要するにそこから見えてくるのは事前交渉で一方的に譲歩を重ねた日本の姿です。安倍政権の姿勢ではTPP交渉の席を蹴るどころか、この先も際限もなく国を売る譲歩が重ねられていくに違いありません。
10日付のしんぶん赤旗に「安倍内閣に交渉参加の撤回を強く求めます」とする日本共産党の声明が載りました。
そこでは、日米事前協議の過程で、関税を「すべて撤廃」し、さらに国民の暮らしに関わるルールを「非関税障壁」として撤廃・削減する危険性が明らかになり、加えてアメリカのいうままに譲歩を重ね日本を丸ごと売り渡しかねない安倍内閣の「亡国」的な姿勢も明白になったとして、「交渉参加の即時撤回」を強く求めています。
まことに国益を守るためにはTPPの交渉の座からは直ぐにも撤退するしかありません。
長文の記事なので以下に事務局が要約したものを紹介します。
全文は下記のURLをクリックしてご覧ください。
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TPP交渉への参加は日本をアメリカに丸ごと売り渡すことになる
安倍内閣に交渉参加の撤回を強く求めます・・・・日本共産党 (2013.5.9)
しんぶん赤旗 2013年5月10日
(事務局で要約)
対米事前協議「合意」=アメリカの一方的な要求を丸のみ
昨年来続けてきたアメリカとの事前協議から次のことが明らかにされた。
重要農産物の「聖域」確保の保証は何もなし
第一に、安倍首相が「守るべきものは守る」といった米、乳製品、砂糖など重要農産物の関税撤廃の「聖域」確保の可能性がほとんどないことが明確になった。
対米事前協議「合意」文書に明記されたのは、日本がTPPに参加する場合「包括的で高い水準の協定の達成」をめざすということだけで、(政府の言い分とは逆に)「すべての品目」について「関税および非関税障壁」を撤廃・削減する原則の確認だけである。
アメリカ政府の発表した「合意」文書には日本の重要農産物についての言及は一切なく、米議会に通知した文書でも、「日本が全品目を交渉の対象とし、高水準で包括的な協定を年内に完成させると約束した」としているだけである。
日本の参加に合意した有力国は全品目の「高い自由化の実現」を参加条件として確認しているので、農林水産物の関税全廃が迫られるのは明らかである。
アメリカ業界が満足するTPP「入場料」を受け入れ
第二に、日本の交渉参加の条件とされた「入場料」をほとんど丸のみしたことである。
米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)の輸入規制を2月から緩和し、米保険会社の営業利益に配慮してかんぽ生命の新規商品の販売を中止させ、米国車の簡易輸入手続き台数の大幅増なども日本側から一方的に持ち出した形にして認め、さらにアメリカが日本製自動車にかける関税を長期にわたって維持することも受け入れた。
アメリカの「積年の関心事」を“解決”するための2国間協議も約束
第三に重大なのは、4月の日米「合意」で、TPP交渉と並行して自動車分野をはじめ保険、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、衛生植物検疫などの非関税措置について、更に日米2国間協議を行い、TPP協定の協議終了までにまとめて、それをTPP協定が発効する時点で実施することも確認していることである。
アメリカ側はこの2国間協議を「積年の関心事」を解決する場と位置づけ、その内容をより詳細かつ具体的に記述しており、この協議を通じて食の安全や医療、公共事業、雇用など広範な分野で、一方的にアメリカの要求が突き付られ、日本社会全体に弱肉強食の「アメリカ型ルール」が押しつけられるのは必至である。
この屈辱的な2国間協議を受け入れるにあたり安倍政権が公表した「合意」文書では、検討項目を列記しているだけであるが、アメリカ側の文書には個別に詳細で重大な内容が書かれている。このように国民に事実を知らせないままアメリカの要求を丸のみしようとする安倍政権に、「国益」など守れる筈はない。
TPP交渉=多国籍企業に都合のいいアメリカ主導のルールづくり
政府が当初言っていた「アジア太平洋地域の活力を取り込む」とか「この地域の貿易や投資のルールづくりに参加する」などは、現実から遊離した国民をあざむく言い分である。
アメリカの戦略に一方的に取り込まれるだけ
TPP交渉には、アジアの主要国の中国、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、インドなどは参加していない。日・米だけでTPP交渉国全体のGDPの80%を占め、実質的には日本がアメリカとEPA(経済連携協定)を結ぶことと同じで、その結果は事前協議の経過から見ても「日本がアメリカに一方的に押え込まれる」のは明らかである。
オバマ政権のねらいは対日輸出や投資の拡大
TPP交渉の実態は、経済力で群を抜くアメリカが主導しアメリカの多国籍企業や業界の利潤追求に都合のいいルールを参加国に持ち込む場である。オバマ政権がTPP交渉に力を入れるのは、輸出を拡大することで経済危機からの脱出し、成長するアジア市場に足場を築くためである。そのために参加各国の経済主権を奪いアメリカの経済覇権主義を押しつけようとしている。その戦略に欠かせないのがGDP世界3位の日本の参加で、オバマ政権の米大企業の輸出・投資の拡大戦略に日本が全面的に応じることである。
多国籍企業に特権を与え、国の主権を脅かす
TPPの狙いは国境を越えた貿易や投資、経済活動の拡大を最大の基準にして、その障害となる関税や「非関税障壁」を撤廃・削減することであり、アメリカなどの多国籍企業に特権を与え、横暴に振舞えるようにすることである。そうなれば貧困の解消、環境の保全、社会の持続可能性などの各国の切実な課題は進まなくなる。
ISD(投資家対国家紛争処理)条項はその最大の武器で、進出企業が相手国政府の政策によって損害を被ったと判断すれば、国際機関に訴えて損害賠償を請求できてその国の法律や制度の効力を失わせることを可能にする。
これまでの実績から見ても、TPPに参加すればわが国の法律や行政、司法判断までが外国企業から「損害を被った」と訴えられ、その執行中止に追い込まれるなど、国の主権の著しく侵害される事態が頻繁に起きかねない。
国民や国会議員にも情報を秘匿する
アメリカの名だたる大企業や業界団体は「利害関係者」として交渉に公然と参加し、各国政府の交渉官と情報を共有し交渉に口をはさんでいる。これはTPP交渉が誰のためのものかを雄弁に物語っている。しかも交渉内容は4年間、参加国の国民や国会議員にも秘匿するという取り決めさえある。一握りの多国籍企業がTPP交渉を牛耳って大多数の国民は蚊帳の外という「異常な秘密交渉」に日本の命運を託すことになる。
国民にとって「メリットはなく、失うものはあまりに大きい」
財界などは海外での投資や経済活動がしやすくなり、参加国での公共事業の受注機会も増えるなどと主張するが、それで利益を得られるのは一部の多国籍化した大企業だけであって、農林漁業や地場産業、大多数の中小業者や国民は、安い製品の流入で営業が脅かされ、工場の海外移転なども進むので、地域経済はいっそうの衰退する。
また財界がTPP参加を声高に叫ぶのは、医療分野での混合診療の解禁などのTPPがもたらす各分野の規制緩和・構造改革が、アメリカだけでなく、日本の大企業にとってもビジネスチャンスが拡大するからであって、身勝手な主張である。
「日米同盟の強化」を最優先
安倍首相があれこれの詭弁を重ねながらTPPに暴走するのは、国民の利益よりも「日米同盟の強化」を最優先しているからで、TPP交渉への参加=首相の暴走の行き着く先はアメリカの「属国」化である。
際限のない「譲歩」に引きずり込まれる危険性が
「事前協議」の段階ですでに明らかなように交渉に参加すれば、さまざまな段階で次々に新たな譲歩が迫られ、国民の利益と相いれない事態がさらに広がることになる。米自動車業界は「入場料」がまだ足りないとしているし、米国の農業や畜産業界も日本に「関税ゼロ」を迫っている。
本交渉に参加する際にも、先行する交渉国がに合意した内容は無条件に受け入れ、議論を蒸し返さない、現交渉国による交渉打ち切りも拒否できない、といった極めて不利な条件を丸のみさせられ、しかも交渉内容はそれまで一切知ることができない。要するにできあがった文書にサインさせられるだけである。
さらに本交渉への参加が決まれば、日米「合意」で確認された「非関税障壁」分野の2国間協議がスタートするので、ここでも「国益」を損なう数々の譲歩が迫られる。
国民の圧倒的な世論でTPP参加を撤回させよう
昨年の総選挙では、自民党は、関税撤廃など6つの懸念事項が解消しない限りTPPには参加しないと公約した。しかし安倍首相はその舌の根も乾かぬうちに、国民をあざむいて参加に踏み切った。公約違反は明白で、国民主権の原則からいって自民党・安倍内閣にはTPP交渉をすすめる資格などない。
この2年半、9割の都道府県、8割の市町村議会で「反対」「慎重」の意見書・決議が採択された。そしていま、安倍首相の暴走に新たな怒り、たたかいが全国で急速に広がっている。
TPP参加を撤回させることは、一握りの多国籍企業を除く圧倒的多数の国民の利益と合致し、国の食料主権、経済主権を守る大義あるたたかいである。
「TPP反対一点での共同を地域でも全国でもさらに発展させるようではありませんか」。