アメリカの無人機攻撃の運用実態が不透明で民間人被害が大きいと批判が強まるなか、オバマ大統領は運用をCIAから米軍に移し、厳格化して透明性を高めると約束しましたが、とてもそんなことで解決できる問題ではありません。
毎日新聞大治朋子記者の「無人機戦争の課題」とNHKニュースを紹介します。
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発信箱 : 無人機戦争の課題
大治朋子(エルサレム支局)毎日新聞 2013年05月28日
オバマ米大統領が先日、「テロとの戦い」について演説した。米兵を戦地に送るような大規模な戦闘から、無人機を使って「テロリスト」を殺害するピンポイント型に、より軸足を移すという。
米国本土から衛星通信を使って無人機を遠隔操作し、海外にいる「テロリスト」を殺害する。そんな無人機戦争は、「米兵が死なず」「兵士派遣より安上がり」だとして、米国民の3人に2人が支持してきた。米議会は最近、運用実態が不透明で、民間人被害が大きいと批判を強めているが、長らく黙認してきた。痛みが伴わず、戦争という意識で受け止められにくいこともあるだろう。オバマ大統領は今回の演説で、無人機の運用を中央情報局(CIA)から米軍に移し、厳格化して透明性を高め、殺害対象をより限定的にすると約束した。
だが運用がCIAから米軍に移っても、情報共有は軍内部や軍関係者が運営する機関などに限定され、議会が知りうる範囲は限られる。しかも国民の多くが支持する無人機について、本気で情報開示を求める議員がどれほどいるだろうか。
最大の課題といわれる「民間人への誤爆」はどうか。元操縦士に取材したことがあるが、誤爆の大半は民間人をテロリストと認定する情報ミスによるのだという。標的の精査はCIAの仕事だが、冷戦終結後、その規模は縮小され、さらに無人偵察機の導入で「足で稼ぐ情報」は劣化が目立つそうだ。
オバマ大統領は演説で、CIAという秘密の箱から「無人機戦争」を取り出し、白日の下にさらしたかのような印象で受け止められていないか。本質的な課題はまだ残されたままであることを、改めて認識しておきたい。
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国連人権高等弁務官 無人機攻撃に懸念
NHK NEWS web 2013年5月28日
アメリカなどが対テロ作戦として行っている無人機による攻撃について、国連の人権高等弁務官は、法的根拠と透明性が欠如したまま、より多くの国が無人機攻撃の技術獲得に向けて動いているとして、強い懸念を示しました。
国連のピレイ人権高等弁務官は27日、スイスのジュネーブで世界の人権状況を報告し、この中でアメリカなどが対テロ作戦としてパキスタンやイエメンなどで行っている無人機による攻撃について、「攻撃の透明性や法的根拠が欠如している」と指摘しました。
そのうえで、「より多くの国が無人攻撃機の技術獲得に向けて動いていて、人権への影響に強く懸念している」と述べました。
さらに、アメリカのオバマ大統領が先の演説で、今後、より厳格に無人機を運用すると表明したことについて、「透明性を高める方針が示されたものの、完全な透明性の確保と全ての国際法の順守を各国に求めたい」と強調し、十分な情報公開を求めました。
アメリカは、無人機の攻撃について、「極秘の作戦」と位置づけ、これまで攻撃の有無を含めて情報を公開しておらず、パキスタンでは多くの民間人が巻き添えになっているとして、国民の間で反米感情が高まる要因となっています。
このため、オバマ大統領の先の演説を受けて、無人機の運用の透明性が今後確保されるのか注目されています。