23日、衆院憲法審査会が開かれ、大規模な自然災害やテロなど突発的事態に対処するため、一時的に首相の権限を強化する「緊急事態条項」を新たに憲法に設けるべきかどうかをめぐり討議しました。
自民は自党の改憲草案で設置するとし、民主、維新、みんな、生活の4党は同条項の創設には概ね賛成しましたが、自民党以外の党はその際に基本的人権を制限することには反対しました。
公明党は「党の中に両論がある。より踏み込んだ議論が必要だ」と述べるに留まりました。
反対したのは共産党のみで、「大規模災害にあたっても今の憲法を文字どおり生かすべきで、憲法に緊急事態の規定を設ければ大規模災害に対処できるというのは問題のすり替えだ」と述べました。
なお護憲を掲げる社民党は委員を出していません。
以下にNHKニュースを紹介します。
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憲法審査会 「緊急事態」で7党が意見表明
NHK NEWS web 2013年5月23日
衆議院の憲法審査会で、今の憲法で規定されていない「緊急事態」を巡って、与野党7党が意見を表明し、自民党や民主党、日本維新の会などが大規模災害などに備えるために憲法で規定すべきだと主張したのに対し、公明党は慎重な検討を求め、共産党は反対しました。
衆議院の憲法審査会は23日、今の憲法に外国からの武力攻撃や大規模災害などを想定した「緊急事態」についての規定がないことを巡って、審査会に委員がいる与野党7党が意見を表明しました。
このうち、自民党は「わが党の憲法改正草案では、東日本大震災の反省を踏まえて、緊急事態に対処する仕組みを独立の章として規定した。いざというときに、超法規で対応するのではなく、平素から権限と義務を整備しておくべきで、国民の生命・身体・財産という大きな人権を守るために、やむなく他の人権が制限されることもありうる」と述べました。
民主党は「党としては、通常の体制では機動的に対処できない場合に備え、緊急事態に関する規定を置く方向だが、国民主権や基本的人権の尊重といった憲法の原理は維持すべきだ。非常事態であっても、基本的人権の制限に歯止めをかけて立憲主義を貫くべきだ」と述べました。
日本維新の会は「政府には緊急事態の対応を平素から検討する組織がなく、緊急事態のたびに各省庁の寄り合いの対策本部が設置されている。その背景には、緊急事態に関する規定が欠落しているという憲法上の欠陥があるので、規定をしっかりと憲法に明記すべきだ」と述べました。
公明党は「党内には両論がある。ミサイルやテロなどに対処するための規定を新たに盛り込むべきだという意見がある一方で、憲法に緊急事態の規定を入れてしまうと、ギリギリの段階まで通常の法律にのっとって対応する努力を放棄してしまうのではないかと危惧する意見もある」と述べました。
みんなの党は「憲法は自由と人権を守る最後のとりでとして機能しなければならず、緊急事態の規定を追加するのはそれを機能させるためだ。人権を制限する規定の追加は本来は望ましくないので、いかに抑制的なものにするかを第一に考えるべきだ」と述べました。
共産党は「外部からの武力攻撃に対処するために緊急事態の規定が必要だという主張もあるが、そうした事態を起こさせないために憲法があるのであり、憲法を生かす政治こそ求められている。大規模災害にあたっても緊急事態の規定ではなく、今の憲法を文字どおり生かすべきだ」と述べました。
生活の党は「時代の要請を踏まえ、国連の平和活動や緊急事態に関する条文を『加憲』することが基本的な考えだ。従来の法制度では、大規模テロなどで総理大臣を含む全ての大臣が欠けた場合も想定しておらず、そうした場合の臨時代理について憲法上の根拠規定を置くべきだ」と述べました。