8日に開かれた共産党の中央委員会総会で行われた報告の中で、志位委員長は「改憲勢力は自ら三つの矛盾を作り出した」と指摘しました。その矛盾とは以下のとおりです。
一つ目は、いきなり9条の改憲を出すよりも国民に受け入れられやすいからとの思惑で決めた(まず)「96条改定」の方針が、逆に “そんなやり方は邪道”という国民の立場の違いをこえた反撃にあっていること(これは世論調査の結果でも明らか)。
二つ目は、自民党の「改憲案」が、あれこれの「人権」を掲げながらそれを「法律の範囲内」に押しとどめて国民を無権利状態においやった大日本帝国憲法とそっくりになっているので、とても国民に受け入れられるものでないこと。
三つ目は、もともと憲法9条問題はたんなる国内問題でなく侵略戦争の反省を踏まえて、二度と再び誤りを繰り返さないという国際誓約でもあったのに、閣僚がおおっぴらに靖国神社に参拝するなどしたことで、日本国民は勿論、世界とアジア諸国の強い批判と怒りを呼び起こしたこと。
そして「安倍内閣の改憲への暴走は、みずから矛盾と「破たん」を作りだしているので、その弱点を徹底的に突きこの暴走を広範な国民世論と運動で孤立させるために、全力をつくす必要がある」、とこの項を結んでいます。
以下に、「第7回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告」(しんぶん赤旗 2013年5月9日)から「改憲勢力の三つの矛盾」に関する部分を抜粋・要約して紹介します。
(原文URL:
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-09/2013050917_01_0.html )
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-09/2013050917_01_0.html )
なお、末尾に「大日本帝国憲法」の権利規定の抜粋を載せました。
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憲法 改憲派の三つの矛盾をつき、憲法9条の生命力に確信をもって
(要旨)
憲法問題は、参議院選挙の一大争点となっている。昨年の総選挙では改憲派が多数を占めた。彼らの一番の狙いは、解釈改憲で集団的自衛権を可能にするとともに、明文上も憲法9条を改定し日本をアメリカとともに海外で戦争をする国にすることに置かれている。しかし同時に、改憲派はつぎの三つの矛盾を自らつくりだしている。
憲法96条改定を突破口として押し出したことが、多くの人々の批判を広げる
(要旨)
一つは、改憲派が、憲法96条改定―憲法改定手続きの緩和―を憲法改定の「突破口」と押し出したことで、これが逆に9条改定の是非をこえて、多くの人々の批判を広げ、孤立を深める結果となっている。
96条は単なる「手続き論」ではなく近代の立憲主義に基づくもので、時の権力者の都合のよいように憲法を改変することが難しいようにするのは、世界の主要国でも当たり前の原則となっている。96条の改定は立憲主義そのものの否定であり、憲法が憲法でなくなる大改悪である。
自民党や維新の会などは、“九条改定ではなくて96条改定ならばハードルが低い”という思惑で採用した方針であるが、逆に “こんなやり方は邪道”という声が立場の違いをこえて広くわき起こり大きな誤算となった。
自民党「改憲案」のあまりの時代逆行ぶりに、不安と批判が広がる
(全文 後半一部省略)
二つは、自民党が昨年4月に発表した「改憲案」そのものが、そのあまりの時代逆行の反動的内容のために、多くの人々の不安と批判を広げていることです。
自民党「改憲案」の問題点は、憲法9条2項を削除し、「国防軍」を書き込むというだけではありません。基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」とした憲法第97条を全面削除し、基本的人権を根底から否定するなど、憲法の平和的民主的条項の全面破壊をもくろむものとなっていることは、きわめて重大であります。
とりわけ表現・結社の自由をふくむ基本的人権について、「公益及び公の秩序」に反しない範囲のものしか認めないとしたことは、重大であります。それは、あれこれの「人権」を掲げながらそれを「法律の範囲内」に押しとどめ、国民を無権利状態においやった大日本帝国憲法への逆行にほかなりません。自民党「改憲案」は、憲法を、権力を縛るものから、国民を縛るものへと根本的に変質させるものとなっているのであります。
この古色蒼然(そうぜん)とした時代逆行、時代錯誤の自民党「改憲案」にたいしては、9条改憲派の憲法学者からも厳しい批判の声が広がっています。アメリカの有力メディアからも、「世界中の人権擁護グループは、自民党による憲法に関する革命に反対する世論を喚起すべきである」とするきびしい批判がおこっています。
この自民党「改憲案」を読めば、それに全面的に賛成する国民は、ほとんどいないでしょう。背筋がぞっとする人がほとんどでしょう。これはきわめて危険な内容ですが、それだけに彼らの致命的弱点にもなりうるものであります。(以下省略)
9条改憲をめざす安倍内閣が「靖国」派内閣の本性をむきだしにした
(要旨)
三つは、9条改憲をめざす安倍内閣が、「靖国」派内閣としての本性をあらわにしてきたことが、日本国民と世界とアジア諸国の強い批判と怒りを呼び起こしたことで、もともと憲法9条問題は、たんなる国内問題でなく侵略戦争の反省を踏まえて、二度と再び誤りを繰り返さないという国際誓約でもある。侵略戦争を肯定する勢力―戦争の善悪の区別もつかない勢力が、憲法を変えて海外に武力でのりだすことほど、アジアと世界の人々にとって危険なことはない。
安倍内閣の改憲への暴走は、みずから矛盾と「破たん」をつくりだしている。その弱点を徹底的に突き、この暴走を広範な国民世論と運動で孤立させるために、全力をつくす必要がある。
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以下は事務局による参考添付です
2013年1月31日「自民改憲案「集会結社・表現」の不自由度は治安維持法以上」 より
大日本帝国憲法
第2章 臣民権利義務(抜粋)
第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第27条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
(印行 : 出版 事務局)