2013年5月2日木曜日

TPPの実態が顕わに 米議会の公聴会で

 
 USTR米通商代表部)4月24日 日本のTPP参加を認める方針を米議会に通知しましたが、その際に「日本が農産物の関税についてセンシティビティ敏感さ)を持っている」点についての言及はなかったということです。
 今後は何の斟酌もなく関税の撤廃に向けて進むことになります。3月の日米首脳会談のあと政府やマスメディアが喧伝した「成果」には、結局何の実質もなかったということです。

 米国上院財政委員会で開かれたTPPに関する公聴会では、農産物を含めた米国産品の輸出拡大するため日本市場を一層開放させ、米企業が営業活動をしやすくするための「構造改革」を迫り、米多国籍企業が巨大な利益を得られるようにするなどの意見が述べられました。
 また日本に「食の安全性確保」のための措置を緩和させて米国農産品の輸出をしやすくしたり、日本の大型公共事業にアメリカ企業参入出来るようにするなどの要求も、早くから出されています。

 これらは別に新らしい要求事項ではなくて、TPPに参加すれば必然的にそうなると予想された事柄であり、これまで政府やマスメディアが明らかにしてこなかっただけの話です。

 日米の事前協議では日本側の完敗に終わりました。米国によればすべて日本が自発的に譲歩した結果だということです。そんな姿勢で日本はこの先どんな風にして、安倍首相があれだけ強調していた「国益」を守ろうというのでしょうか。

 以下にしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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TPPで日本を「構造改革」 米多国籍企業の利益に
 食品添加物 表記は負担だ/コメ関税 企業活動妨げ
/大型公共事業 参入させよ
しんぶん赤旗 2013年5月1日
 米通商代表部(USTR)は4月24日、日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を認める方針を米議会に通知しました。米多国籍企業の利益のために、日本国民の暮らしの安全・安心が売り払われようとしています。 (金子豊弘)

GE副社長「巨大な機会」
 米政府が議会に日本のTPP交渉参加の通知をしたその日、米上米上院財政委員会では、TPPに関する公聴会が開かれていました。
 公聴会の中でボーカス委員長は、「今、日本はわれわれの輸出にたいして、多くの障害を維持し続けている。しかし、この世界第3位の経済国がこれらの障害を取り除いたとき、大いなる機会がつくり出される」と発言。農産物を含めた米国産品の輸出拡大のため日本市場を一層こじ開ける姿勢を強調しました。
 米電機大手のゼネラル・エレクトリック(GE)のカラン・バティア副社長はTPPへの日本参加は、アメリカの貿易政策の主要な目標である日本の市場開放と「構造改革」を迫ることになるとの認識を示し、「アメリカとアメリカの企業に巨大な利益をもたらす機会となるだろう」と強調しました。

身勝手な開放要求
 USTRが4月1日に発表した2013年版外国貿易障壁報告書には、日本への身勝手な市場開放要求が並べたてられています。
 報告書は、「新開発食品と栄養機能食品について、成分と食品添加物の名称・割合・製造工程の表記を求めていることは、負担が大きい」として、「食の安全性確保」のための措置を緩するよう求めています。また、主要高速道路、主要公共建築物、鉄道と駅舎の調達、都市開発、再開発事業などの日本の大型公共事業にアメリカ企業の参入を求めています。
 貿易障壁報告書と同時に発表された「衛生植物検疫措置報告書」(13年版)でも、食品添加物の認可手続きの迅速化や防かび剤使用の規制緩和などを求めています。

業界団体主張反映
 米政府の対日要求は、アメリカの多国籍企業の要求を反映したものです。昨年1月から2月にかけてUSTRが募った意見には、業界団体や大企業の要望が寄せられました。小売業世界最大手のウォルマートは、コメなど主要品目の関税が日本での企業活動を妨げていると一方的に主張。また、米国産リンゴに対し、日本は防疫のための措置を義務付けており、輸出が抑制されていると不満を表明しました。カリフォルニア・チェリー協会は、ポストハーベスト(収穫後に使用する農薬)の防かび剤の登録手続きの緩和を求めました。カリフォルニア・ブドウ協会は、日本の残留農薬基準の緩和を要求しました。
 米国貿易緊急委員会は、外国企業が相手国の政府に訴訟を起こすことができる「ISDS(投資家対国家の紛争解決)条項」が必要だと強調しました。
 TPPが米国企業にもたらす恩恵について、USTRのマランティス次席代表(当時)はこう強調したことがあります。
 「オバマ政権のゴールは、米国の労働者や経営者がアジア太平洋地域での競争で勝者となるためのよい立場を確保する」(11年12月14日の米下院歳入委員会貿易小委員会)
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安倍首相「守る」保証なし 米政府の議会への通知でも
 米政府による議会への通知は、安倍晋三首相が、交渉で「守るべきものを守る」としていることに、なんの保証もないことが改めて示された形となりました。
 通知の中でマランティスUSTR代表代行は、「日本は農産品と工業製品を含む全ての物品を交渉対象とし、今年の交渉妥結を目指すと約束した」と説明しました。2月22日の日米首脳会談の共同声明では、「日本と米国は、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティが存在する」としていました。しかし、議会への通知には、このことへの言及が欠落。交渉の中で米政府には、日本の農産品に配慮する姿勢がないことを示しました。
 通知は、「米政府は、議会側と徹底的かつ広範に協議していく」ともしています。事前協議で日米両政府は、21分野にわたるTPP交渉と並行して9分野について2国間で協議することを約束しました。これらの問題で、今後も通商交渉の権限を有する議会からの圧力を受けた米政府による市場開放要求がさらに強まる可能性を含んでいます。

 並行交渉の9分野 
 日米2国間交渉で協議することを両国政府が合意しました。自動車分野のほか、九つの広範な分野にわたります。(1)保険 (2)透明性 (3)投資 (4)知的財産権 (5)基準 (6)政府調達 (7)競争政策 (8)急送便 (9)衛生植物検疫措置―です。これらの分野の交渉は、TPP交渉と並行して行われ、法的強制力をもつ措置も含めた対策を講じることが決められました。