2013年5月13日月曜日

改憲勢力の揺らぎと食い違い

 
 安倍首相は当初、憲法96条改定を参院選の自民党公約にすると宣言していましたが、国民からの支持は得られていません。
 憲法記念日を期して発表された各メディアによる世論調査の結果でも、96条の改定に対して、朝日新聞は賛成38%・反対54%、毎日新聞が賛成42%・反対46%、JNN(TBS)が賛成30%・反対46%などでした。

 9日の衆院憲法審査会では、みんなの党から「96条の先行改定にはおいそれとは賛成できない」との発言があって、改憲勢力が1枚岩でないことが明らかにされました。
 また12日には維新の会の橋下氏が「自民党の憲法改正案は公権力の行使を強く出しすぎていて危険だ」と指摘し自民党との憲法観の違いを明確にするため今後党内での議論を急ぐとしました。
 自民党の改憲案が極めて反動的であることくらいは、昨年4月に発表された直後から多くの人たちから指摘されてきたことで今さら何を言うのかという思いがありますが、このまま自民党の補完勢力であり続けては維新の会が埋没してしまうという彼なりの打算があるのでしょう。これまでかなり極端な改憲発言を繰り返してきた彼らが、一体どのように改憲論をまとめるのでしょうか。

 安倍首相は5月はじめに明らかにされた世論の動向を見て、「96条の改定には熟議が必要」と早々にニュアンスを修正しました。
 自民党内では一時「96条の改定」と「加憲」をセットにしたらどうかという案も浮上したようですがさすがに否定され、「96条の先行改正にはこだわらない」(11日:石破幹事長)の方向で収束する感じです。
 安倍・自民党が異様な高ぶりの中で96条改定を策謀することは一刻も早く止めにして欲しいものです。

 13日のJNN(TBS)記事によると、11日・12日の調査では96条の改定に対して 賛成25%・反対51%となり、反対する人たちがさらに増加しました。
 以下にその世論調査の結果と橋下氏の発言、そして自民党の96条先行改定方針の揺らぎに関する記事などを紹介します。
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憲法96条改正、賛成25%・反対51% 
JNN(TBS)ニュース 2013年5月13日 
 安倍総理が意欲を示す憲法96条の改正について、憲法改正の発議要件を衆参両院の3分の2以上から2分の1以上に緩和することに賛成する人は25%にとどまることがJNNの世論調査でわかりました。
 調査は11、12日に行いました。
 安倍内閣を「支持できる」とした人は先月より2.3ポイント減り74.0%、「支持できない」とした人は25.0%で、依然、高い支持率を維持しています。
 夏の参議院選挙まで2か月余りとなりましたが、比例代表の投票先を聞いたところ、自民党が42%で最も多く、次いで民主党の10%、日本維新の会の5%などとなっています。投票する際に重視するテーマを3つまで挙げてもらったところ、「年金や医療など社会保障」が53%、「景気や雇用」が51%などとなっており、「憲法改正」は13%にとどまりました。
 一方、安倍総理が強い意欲を示す憲法96条の改正ですが、憲法改正の発議要件を衆参両院の3分の2以上の賛成から2分の1以上の賛成に緩和することに賛成の人は25%にとどまり、緩和に反対の人が51%に上りました。ただ、憲法を改正すべきかどうかという質問に対しては、「改正すべき」が46%で、「改正すべきでない」の37%を上回りました。
 安倍政権のこれまでの中国・韓国への外交姿勢について訪ねたところ、51%が「評価する」と答え、「評価しない」の37%を上回りました。また、安倍政権の閣僚が靖国神社を参拝したことについても53%の人が「支持する」と答えました。一方、安倍総理が第二次世界大戦時の歴史認識をめぐり、「『侵略』という定義については学界的にも国際的にも定まっていない」などと発言したことについて、「支持する」と答えた人は46%、「支持しない」が38%でした。
 各政党の支持率ですが、日本維新の会が去年10月の調査開始以来最も低い2.2%となっています。(13日02:59)

橋下氏 自民の憲法観は危険
NHK NEWS web 2013年5月12日
日本維新の会の橋下共同代表は記者団に対し、自民党内の憲法改正論議について、「公権力の行使を強く出しすぎており、危険だ」と指摘したうえで、自民党との憲法観の違いを明確にするため、今後党内での議論を急ぐ考えを示しました。
この中で橋下共同代表は、自民党内の憲法改正論議について、「自民党の憲法観は、国家と公権力という区分けがあまりされていないなかで、公権力の行使を強く出しすぎており、危険で怖い。『自分たちに公権力を与えてくれれば、ちゃんとやる』という思いがあるのかもしれないが、自民党の憲法改正草案は、僕らの世代以降からは好感を得られないのではないか」と指摘しました。
そのうえで橋下氏は「自民党との憲法観の違いはしっかり出さないといけない。自民党は政治家の立場で憲法を論じているが、僕自身は、今の立場を辞めて一市民になったときに、公権力はどうあるべきかという視点で考えていきたい。党全体のコンセンサスになるかどうかわからないが、しっかり議論して最後はまとめたい」と述べ、自民党との憲法観の違いを明確にするため、今後党内での議論を急ぐ考えを示しました。

自民 96条先行改正にこだわらずの意見
NHK NEWS web 2013年5月12日
国会が憲法改正を発議しやすくするための憲法96条の改正を巡って、自民党内では執行部から慎重な立場の公明党への配慮などから、ほかの条文より先行して改正することにこだわるべきではないという意見が相次いでいます。

憲法96条の改正を巡っては、連立与党の公明党が「憲法のほかの条文に先行して改正することには慎重であるべきだ」と主張しており、安倍総理大臣は改正に意欲を示す一方で、「十分に国民的議論が深まっているとは言えず熟議が必要だ」として、丁寧に議論を進める姿勢を示しています。
こうしたなか、自民党内では石破幹事長が11日、「憲法のどの条文の改正を急ぐのかはいろいろな意見を聞かなければならず、公明党の理解も得るよう努力したい」と述べたほか、「夏の参議院選挙に向けては96条の改正よりも、成長戦略の策定などの経済対策に力を入れるべきだ」などとして、96条の先行改正にこだわるべきではないという意見が相次いでいます。
これについて、公明党からは「公明党への配慮がうかがえる」と評価する声が出ており、今後、自民党に対し、参議院選挙に向けて憲法改正よりも経済の再生に取り組む姿勢をアピールするよう働きかけていくことにしています。
ただ、自民党内では「国会が憲法改正を発議しやすくするための96条の改正は、憲法に対する国民の意見表明の機会を担保するものだ」などとして、先行改正を求める声も強く、参議院選挙に向けて96条の改正をどのように主張していくのか、今後、調整が行われる見通しです。

橋下氏「党の消滅あり得る」
NHK NEWS web 2013年5月11日
日本維新の会の橋下共同代表は大阪の党本部で開かれた会合であいさつし、党の現状について「国民から支持を得る力はなくなっており、このままでは年内の消滅もあり得る」と述べ、夏の参議院選挙に向けて党が結束して態勢を立て直す必要があるという考えを強調しました。
この中で橋下共同代表は、党の現状について「国民から支持を得る力がなくなっていることは確かだ。去年の衆議院選挙で54人が当選して、次の参議院議員でもそこそこ当選すればいいという気持ちがあれば有権者に見透かされ、このままでは年内の消滅もあり得る」と述べました。
そのうえで、橋下氏は「政策を実行していく過程に参議院選挙がある。統治機構改革を実現して国の形を変えるという目標を見失わないように、一致団結して参議院選挙をしっかり戦っていきたい」と述べ、参議院選挙に向けて党が結束して態勢を立て直す必要があるという考えを強調しました。

石破氏「96条の先行改正にはこだわらず」
NHK NEWS web 2013年5月11日
自民党の石破幹事長は甲府市で記者団に対し、国会が憲法改正を発議しやすくする憲法96条の改正について、慎重な立場の公明党に配慮して、ほかの条文より先行して改正することには必ずしもこだわらずに議論を進める考えを示しました。
この中で自民党の石破幹事長は憲法96条の改正について、「自民党は改正すべきだという立場だが、党として憲法全般の改正草案をパッケージで示しており、どの条文の改正を急ぐのかはいろいろな人の意見を聞かなければならず、公明党の理解も得るよう努力したい」と述べ、慎重な立場の公明党に配慮して、ほかの条文より先行して改正することには必ずしもこだわらずに議論を進める考えを示しました。
また石破氏は、政府や自民党内から、96条の改正とともに、「環境権」などを明記する憲法改正も同時に行うべきだという意見が出ていることについて、「国民に比較的理解されやすいものとセットにするやり方がどうなのかは議論が必要だ」と述べました。