2013年5月31日金曜日

自民党は徴兵制も明記すべきと

 
 信濃毎日新聞が「国防軍 徴兵制を導入するのか」と題する社説を掲げました。
 「自民党3年前に憲法改正の論点として徴兵制導入の検討を示唆したが、参院選を控えていたため改憲案に含めなかった。昨年12月の衆院選でも、自民党は国防軍保持を掲げながら徴兵制には触れず大勝した。このように徴兵制問題が表に出るのを避けいるが、少子化が進世界展開する国防軍を維持するには徴兵制が必要といわれるなか、それを隠して参院選を戦うのは不誠実」とする主旨のもので、もっともな主張です。

 名古屋大名誉教授の森英樹氏は、自民党の改憲草案に「徴兵制」を実現するための仕掛けが盛り込まれていることについて、「(要旨)改憲草案の9条3の『国は国民と協力して領土領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない』という義務規定は国民に国への協力を義務付けるもの、前文にも『日本国民は国を自ら守り』とある。現行憲法は18条で“何人も奴隷的拘束を受けない”と徴兵制に歯止めをかけているが自民党の改憲草案ではその文言も削除されている」と述べています
       2013年4月13日「自民改憲草案には海外派兵も徴兵制も組込み済み」 

 自民党の改憲草案が徴兵制を意図したものであることは明らかです。将来万一国防軍を持つような事態になれば、アメリカの世界戦略に組み込まれて海外展開を強制され、結果として兵員が不足するので徴兵制が敷かれ、軍事予算が膨大化して財政は破綻へと、破滅へのコースを一直線に進むことになります。
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【社説】 国防軍 徴兵制を導入するのか 
信濃毎日新聞 2013年5月30日
 国防軍ができると徴兵制になるのか―。世間でもインターネット上でも飛び交っている問いだ。この答えはない。「国防軍」構想を掲げる自民党が軍の中身を説明していないからだ。
 肝心な部分の説明を避けて夏の参院選を戦い、憲法改正に道を開く狙いとすれば、国民に対し不誠実と言われても仕方がない。
 自民党は昨年4月に憲法改正草案を発表した。現行憲法9条の2項「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除。代わって「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」を新設した。
 国防軍とはどんな組織なのか。
 集団的自衛権行使に関する憲法上の制約をなくしたり、国際平和活動での武力行使を可能にしたりするなどの点からみると、単に自衛隊の名称変更でないことは明らかだ。ただ、草案では「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」とある。つまり、軍の中身は改正憲法が成立してから別に決めると言っているのだ。
 3年前にこんなことがあった。
 自民党憲法改正推進本部が草案をつくる上での論点を公表した。その中で「民主主義国家における兵役義務の意味や軍隊と国民との関係について、さらに詰めた検討を行う必要がある」と記述。徴兵制導入の検討を示唆した。参院選が4カ月後に迫っていた。当時の谷垣禎一総裁は「徴兵制の議論をしているとは理解していない」と改憲案に含めない方針を示した。
 昨年12月の衆院選でも、自民党は国防軍保持を掲げながら徴兵制には触れず、大勝した。
 党が作成した草案Q&Aにはこう書かれている。党内論議で多く出た「国を守る義務」について「徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました」。
 自民党は、徴兵制問題が表に出るのを避けようとしているように見える。
 少子化が進む中で徴兵制なしに世界展開する国防軍を維持するのは難しいという見方がある。一方でコストがかかり過ぎ、徴兵制導入は非現実的という意見もある。
 国防軍をどうつくるつもりなのか。あいまいなまま国民の信を問うことは許されない。今度の選挙では説明を避けないでほしい。