2013年5月7日火曜日

尖閣諸島問題の現実を直視せよ と

 
 5日付のサーチナニュースに、「尖閣諸島を巡る対立、日中双方は現実を直視せよ」とする中国の発展研究センターの研究員による記事(要約版と思われます)が載りました。
 は日中双方は新しい現実を直視しなければならないとして4つの項目を挙げています。曰く
  1 日本が尖閣諸島を一方的に統治できる状態は終わった
  2 安倍政権に国有化の過ちを正させることはほぼ不可能である
  3 中国が尖閣諸島の対立で譲歩する可能性はない
  4 この1年間で両国の貿易は11%近く落ち込み、長期にわたる対立は両国の根本的利益に合致しない。
 そして以下の5つの現実と悪影響をはっきり認識しなければならないと結んでいます。
  「両国は永遠に隣り合う」
  「両国は付き合わないわけにはいかない重要な経済協力パートナーである」
  「尖閣諸島問題が日中関係のすべてではない」
  「長期にわたる全面的な対立はそれぞれの根本的利益に合致しない」
  「矛盾を激化させ戦争に向かえば、想像を絶する恐ろしい結末を迎えることになる」 
 
 これらの事柄はいずれも肯ける指摘です。
 では中国政府側の認識はどうなのでしょうか。
 小野寺防衛相ヘーゲル米国防長官4月29日共同記者会見した翌日、駐米中国大使のヘーゲル米国防長官による釣魚島(=尖閣諸島)問題に関する発表は事実に合致しないとして、「釣魚島問題において挑発的行為を起こしたり、情勢を緊迫させているのは日本であり、一方的で強制的な行為をとったのも日本だ。事実ははっきりとしている」と述べました。程永華駐日中国大使も全く同様の発言をしています。

 振り返ってみれば、確かに菅政権時代に突然に中国漁船を拿捕し、その際に前原国交相が日中間で尖閣諸島問題の棚上げに合意した事実はないと、それまで「合意」とされていたことを否定する発言を行いました。
※ 当時中国漁船が日本の巡視艇に衝突する動画が公開されましたが、中国漁船の航跡はまっすぐであり日本の巡視艇が左斜め後ろから漁船の前に回りこんだために衝突したのでした。巡視艇側から撮影した画面では漁船が数秒間で急旋回して衝突したように見えますが、漁船がそんな短時間で急旋回できる筈はありません。それは動くものに乗って撮影した画像によって引き起こされる錯覚です。
 そしてその後を継いだ野田首相は、東南アジアでの首脳会議の際に胡錦濤国家主席から「尖閣諸島の国有化をしないように」との申し入れがあった直後に、こともあろうに尖閣諸島の国有化を宣言しました。それは野田氏が「言葉の持つ重みと全く無縁の人間」だったからできた行為であって、相手(国)が激怒したのは当然のことでした。
 それらを指して中国が、「尖閣諸島問題において挑発的行為を取り情勢を緊迫させているのは日本である」と言うのは理解のできることです。

 従って政権が変わり中国とそれなりの信頼関係のある公明党の山口代表が訪中したときが両国の関係を修復する良い機会でした。中国は日本側から「尖閣諸島問題棚上げ」の提案をするのを待っていたといわれますが、安倍首相が日本側からそれを言い出すことを厳禁したために、結局修復が出来なくなって現在に至っています。

 総合的に見て尖閣諸島問題に関するボールはいま日本側にあります。
 それなのに「尖閣諸島問題は存在しない」というような無意味な外務省用語にいつまでも固執して、無為に過ごしていては事態は悪化する一方です。安倍氏はその方が持論である憲法9条の改定に有利だと踏んでいるのでしょうが、それは事態を一層紛糾させるだけのことであって一国のリーダーが取るべき態度ではありません。

 以下にサーチナニュースを紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
尖閣諸島を巡る対立、日中双方は現実を直視せよ=中国人識者
サーチナニュース 201355日
 中国国務院発展研究センターの董永裁研究員はこのほど、尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡る対立で、日中双方は新しい現実を直視すべきだと論じた。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。以下は同記事より。
**********
 日本政府は2012年9月に尖閣諸島の「国有化」を行い、日中関係は国交回復後最悪の状態に陥った。尖閣諸島の対立において、日中双方は新しい現実を直視する必要があると思う。直視すべき現実とは以下の4つだ。

1.尖閣諸島を日本が一方的に統治する状態から日中双方がそれぞれ統治する状態に変わった。中国政府は尖閣諸島での権益維持のための巡航・法執行活動を常態化させ、世界に中国は自身の領土で有効的な管理を行っているという事実を示した。
2.安倍政権に「国有化」の過ちを正すよう求めることはほぼ不可能である。近年、日本の政界は非常に乱れ、右傾化が目立ち、ナショナリズム勢力が強まっている。安倍政権は日本社会の右翼勢力の代表である。日本が領土紛争で中国に強硬姿勢を示すのは、米国のアジア太平洋回帰戦略に合わせるためでもある。米国は尖閣諸島問題において、これまでの曖昧な政策を変えて日本の右翼政府を後押ししている。米国は、日本の中国に対する強硬姿勢を支持、黙認する役目を担っている。
3.中国政府が尖閣諸島の対立で譲歩する可能性はない。半年以上にわたる駆け引きと力比べを経て、日本側は中国政府と民衆の領土主権維持における決意と実力を見たに違いない。中国国内の民意の基礎は固まり、指導者も民意に背いて尖閣諸島の対立で妥協し譲歩する気はない。中国は国防力を高め、領土主権を維持する物質的基盤を備えた。
4.長期にわたる深刻な対立は両国の根本的利益に合致しない。尖閣諸島を巡る対立の激化後、政治関係が冷え込むなかで経済関係も大きな影響を受けた。毎日新聞の報道によると、第1四半期の中国の対日輸出は前年比3.6%減、対日輸入は16.6%減、日中間の貿易額は10.7%減だった。ここからみて、日中関係の持続的な悪化は双方の根本的利益に大きく影響する。

 そのため、日中双方の政治家は「両国は永遠に隣り合う」、「両国は付き合わないわけにはいかない重要な経済協力パートナーである」、「尖閣諸島問題が日中関係のすべてではない」、「長期にわたる全面的な対立はそれぞれの根本的利益に合致しない」、「矛盾を激化させ戦争に向かえば、想像を絶する恐ろしい結末を迎えることになる」という5つの現実と悪影響をはっきり認識しなければならない。(編集担当:米原裕子)