2013年8月5日月曜日

防衛大臣が「集団的自衛権の行使を認めよ」 と

 4日のNHK「日曜討論」で、小野寺防衛大臣は集団的自衛権の行使を認めるための議論を加速させるべきだと主張しました。
 日本の防衛のために展開したアメリカの艦船が攻撃を受けても日本が反撃できないのであれば、日米同盟が決定的におかしくなるから、ということですが、アメリカは日本の憲法9条を十分に承知した上で日米安保条約を結んだのですから、日本が9条を遵守することにクレームを出せるような立場にはありません。
 対米従属の立場から、「日米関係が決定的におかしくなる」とか、「アメリカが怒り出す」とかの聞き古された言葉を口にするのは、もういい加減に止めて欲しいものです。

 歴代の内閣が「集団的自衛権の行使は憲法違反」とする見解を維持してきたなかで、現役の大臣が公然と憲法違反の発言をするのは不謹慎で異常なことですが、この発言は大臣個人の見解に留まるものではなく、安倍内閣全体の意向を代弁したものです。

 集団的自衛権の行使を認めれば、アメリカ(と他国と)の戦争に日本がいつでも参戦できることになり、平和憲法の根幹をなす9条は有名無実化します。集団的自衛権の行使容認することは「究極の解釈改憲」であるとされる所以です

 安倍首相が8日に行おうとしている内閣法制局長官の異例の交代人事が、その解釈改憲への布石であることは明らかです。
 衆院参院ともに過半数を占めたという奢りから、安倍政権は最大の禁じ手である「憲法9条の解釈改憲」に向けて暴走し始めました。

 以下にNHKニュースと「集団的自衛権の行使容認は究極の解釈改憲」とする東京新聞の「筆洗」を紹介します。
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「集団的自衛権の行使認める議論加速を」
NHK NEWS WEB 2013年8月4日
小野寺防衛大臣はNHKの「日曜討論」で、日本の防衛のために展開したアメリカの艦船が攻撃を受けても日本が反撃できない今の状態は問題があるとして、集団的自衛権の行使を認めるための議論を加速させるべきだという認識を示しました。

この中で、小野寺防衛大臣は北朝鮮のミサイル防衛に関連して「日本を守るために公海上に出ているアメリカのイージス艦が攻撃されても日本は守ることができない。こういうことがあれば、日米同盟は決定的におかしくなる」と述べ、集団的自衛権の行使を認めるための議論を加速させるべきだという認識を示しました。
また、政府の有識者懇談会の柳井俊二座長は「今までの政府見解は非常に狭すぎて、憲法が禁止していないことまで自制している。逆に言えば、集団的自衛権の行使は国際法上も認められるし、憲法上も許されている」と述べ、集団的自衛権の行使を認める内容の報告書を年内にまとめる考えを示しました。
これに関連し、小野寺大臣は、防衛力整備の指針となる防衛計画の大綱の見直しについて「年内にまとめることになるが、さまざまな政府の方針が、ある程度まとまり、初めて作っていける」と述べ、有識者懇談会の報告を大綱に反映させたいという考えを示しました。 

 
東京新聞 2013年8月4日
 歴史観や国際常識に加え、国語力の欠如をもさらけ出した麻生太郎副総理の発言は世界中から批判が集まったが、活発な国民的な議論を経ずに憲法を変えてしまえばよい、というのは本音だろう。

 憲法改正は国会の発議だけでなく、国民投票が必要だ。初めての体験である。賛成、反対の立場から激しい議論が起きるのは必然だ。侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を重ねることで国民はこの国が直面している課題への理解を深める。

 結果はどうあれ、その過程を経ることで民主主義は鍛えられるはずだが、「いつの間にか」変わっているのが理想らしい。その発想は、安倍政権の動きと重なる。

 内閣法制局長官に外務官僚を起用する異例の人事が決まった。集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しに前向きな人物をトップに据える狙いは明白だ。

 自衛隊の海外活動を縛ってきた法制局の解釈は、長年にわたる国会での議論を踏まえ歴代政権が引き継いできた重みがある。「内閣法制局長官が時の政権によって解釈を変更できるなら、企業のお抱え弁護士と変わらない」(阪田雅裕元長官)。

 集団的自衛権の行使容認は究極の「解釈改憲」である。国民が直接、意思を示す機会を与えないまま、過半数の国会議員の賛成だけで憲法は完全に形骸化する。憲法を変えられるのは主権者の多数意思だけだ。安倍首相は学び直した方がよい