2013年8月27日火曜日

「はだしのゲン」 閲覧制限を撤回

 漫画「はだしのゲン」が島根県松江市の小中学校で自由に読むことができなくなってい問題で、26日、松江市教育委員会は臨時の会議を開き、閲覧制限の撤回を決めました。
 これに関してはインターネットで制限の撤回を求める署名を呼びかけていた堺市学童保育指導員、26日、松江市教育委員の臨時会議が開かれ直前に、同市に約2万1000人分の署名を提出したということです

 また同様に一父兄のクレームを受けて「はだしのゲン」事務室に別置きしていた鳥取市立中央図書館も、22日、一般書コーナーにあるコミックコーナーに移しました。市民などから問い合わせが相次いだため、急きょ21日に職員会議を開いて決定したものです

 この問題が世論の力で、表現の自由・知る権利・閲覧の自由をおかさない方向で解決したのは喜ばしいことです。

 愛媛新聞8月24日の記事で、「図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく…国民の利用に供する」という、1954年に採択された「図書館の自由に関する宣言」を紹介しました。 
 また琉球新報も8月25日に、関西大の高作正博教授(憲法学)、「著作者には自らの著作物を伝える利益がある。それを妨げる図書館の行為は違法」という最高裁判決を引いて、「何の議論や基準もなく閲覧できなくなることは、著作者の表現の自由や子どもたちの知る権利を侵害している」、「教育委員会が一部の圧力に屈し、議論や基準もないままに閲覧制限の措置を取ってしまったことは大きな問題だ」と指摘したことを報じました
 私たちも、この問題を契機に図書館のあり方や、教育委員会のあるべき姿について学ぶことができました。

 24日の朝日新聞によれば、「はだしのゲン」アマゾン(インターネット書籍販売)でベスト10入りし、出版社では増刷に入り、の図書館での貸し出しも好調だということです。こうした問題を機に、逆にこの反戦文学が普及するのは喜ばしいことです。

 以下に、松江市の小中学校と鳥取市立中央図書館における「はだしのゲン」閲覧制限撤回に関する記事を紹介します。
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島根・松江市教委、「はだしのゲン」閲覧制限を撤回 
東京新聞 2013年8月26日
 漫画「はだしのゲン」が島根県松江市の小中学校で自由に読むことができなくなっている問題。26日、松江市教育委員会は臨時の会議を開き、閲覧制限の撤回を決めました。
 
 広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」。松江市教育委員会は「描写が過激だ」として、市内の小中学校に対し、児童や生徒への閲覧制限を求めていました。
 その後、松江市には全国からおよそ3000件の意見や苦情が寄せられたため、教育委員会は26日、臨時会議で「各学校の自主性を尊重する」とし、要請の撤回を決めました。
 「我々がコントロールすることは問題がある」(松江市教育委員会 委員)
 
 早ければ夏休み明けには松江市内の小中学校の本棚に、「はだしのゲン」が並ぶことになりそうです。

はだしのゲン:制限撤回求め署名2万人、市教委に提出へ
毎日新聞 2013年8月26日
 松江市教委が故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めている問題で、インターネットで制限の撤回を求める署名を呼びかけていた堺市北区の学童保育指導員、樋口徹さん(55)が26日、松江市役所を訪れ、撤回を求める陳情書を同市教委の古川康徳・副教育長に提出した。同日午後2時半からゲンの取り扱いを話し合う市教育委員の臨時会議が開かれるため、その直前に今回集まった約2万1000人分の署名を提出する。

 陳情書では「『はだしのゲン』を松江市内の小中学校図書館で子どもたちが自由に読めるように戻してください」と訴えた。樋口さんは今月16日から署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オルグ)」で署名を呼びかけ、25日夜までに2万1156人分の署名が集まった。

はだしのゲン:閲覧制限 鳥取市立中央図書館、開架に移動 /鳥取
毎日新聞 2013年08月23日 
 漫画「はだしのゲン」が図書館で閲覧制限されている問題で、事務室に別置きしていた鳥取市立中央図書館は22日、ゲンを一般書コーナーにあるコミックコーナーに移した。
 
 同図書館によると、市民などから問い合わせが相次いだため、29日に予定していた職員会議を21日に急きょ開催。「市民の自由な論議の基になる材料を提供するのが図書館の役目」(西尾肇館長)などの理由から、コミックコーナーに置くことに決めた。22日現在、同図書館が保管するゲン5セットは全て貸し出されており、予約も入っているという。
 
 同図書館は2011年夏、ゲンを読んだ児童の保護者から「小さな子が目にする場所に置くのはいかがなものか」とクレームがあり、貸し出しカウンター裏の事務室に別置きしていた。
 
 平井伸治知事は同日の記者会見で「戦後世代の自分は、できない体験をこの漫画を通して体験させてもらった。当然閲覧できることにするのが基本線。著作物の意図などに配慮しながら、関係者には冷静に判断していただきたい」と話した。【川瀬慎一朗】