2013年8月30日金曜日

集団的自衛権の行使は歴代長官認めず

 安倍首相によって異例の起用をされた小松内閣法制局長官は、記者会見で以下のような一問一答を行っています。(23日 産経新聞より)

Q:集団的自衛権の行使容認に向けた解釈見直しにどう取り組むか
A:「内閣法制局設置法では法律問題について内閣、首相、各省大臣に意見を述べると書いてある。内閣法制局は内閣の重要な機関として、その議論に参加するのは当然。内閣法制局の役割・任務だ」

Q:解釈見直しには慎重論もある
A:「積み重ねた政府の見解を無視して好き勝手に(見直し)できることではない。法治国家において法的安定性、継続性、整合性は非常に重要なことで、そういうことも十分勘案してやっていく必要がある。その上で、首相、官房長官が発言しているように最終的には総合的に判断し、内閣が全体として結論を出すべきものだろう」

 法治国家において法的安定性、継続性、整合性は非常に重要なので、好き勝手な見直しは許されないとする一方で、「最終的には内閣が全体として結論を出すべきもの」とも述べています。
 この最後のところは他紙でも見出しに使われているほど意味深な表現です。素直に解釈すれば内閣の決定には容喙しないということであり、それこそが安部首相が望んでいることです。
 しかしそれでは内閣法制局の存在意義はなくなります。いくら長官とはいえ過去半世紀以上に亘って積み重ねられてきたシステムを、そんな風に一挙に放擲できるものでしょうか。
 そんな無法を行ってまでも「集団的自衛権の行使」を実行しようというのであれば、安倍氏も小松氏も恐るべき確信犯です。

 しんぶん赤旗の記事、「集団的自衛権行使の容認 歴代長官異議あり 憲法解釈の信頼損なう」を紹介します。
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集団的自衛権行使の容認 歴代長官異議あり 憲法解釈の信頼損なう
しんぶん赤旗 2013年8月30日
 安倍内閣が解釈改憲で強行しようとしている「集団的自衛権」行使の容認について、政府の憲法解釈を国会で答弁してきた内閣法制局長官経験者から批判や異論が相次いでいます。世論調査で国民の多数が「集団的自衛権」行使容認に反対しているのに加え、与党内からの異論にも直面し、安倍内閣は深刻な矛盾に直面しています。

 「集団的自衛権」は、「自衛」とは無関係の概念で海外での武力行使を可能とするもの。大国が侵略や軍事介入する際の口実に使われてきました。歴代政府もその行使は「憲法上許されない」としてきました。

 安倍内閣はこれを可能にするため、憲法解釈を変更したうえ、安全保障基本法で裏付けようとしています。憲法研究者の小沢隆一さんは「解釈改憲は裏口入学のようなもの。そのうえ安全保障基本法をつくって集団的自衛権を行使できるようにしようというのは、いわば立法クーデターです」と指摘します。

 この解釈改憲に異論を表明したのが、阪田雅裕(まさひろ)、山本庸幸(つねゆき)、宮崎礼壱(れいいち)の法制局長官経験者の3氏。この間の記者会見や新聞社のインタビューなどで解釈変更は「難しい」「できない」などと明言しています。

 阪田氏は第2次・第3次小泉内閣時の長官。「朝日」(9日付)で「集団的自衛権の行使とは海外で戦闘に加わるということだ」と指摘。「集団的自衛権の問題は日本国憲法の三大原理の一つ、平和主義に関わる。…(国会の憲法論議の)蓄積を無視し、今までのは全部間違っていたということがあっていいのか」と語っています。

 今年8月まで長官だった山本氏(最高裁判事)も20日の会見で「今の憲法の下で半世紀以上議論され、維持されてきた憲法解釈であり、私自身は難しいと思っている」と発言。第1次安倍内閣時の長官だった宮崎氏は時事通信のインタビュー(27日)で「(解釈変更は法律上)ものすごく、根本的な不安定さ、脆弱(ぜいじゃく)性が残る。やめたほうがいいというか、できない」と語っています。

 海外の法制機関に詳しい鹿児島大の横大道聡(よこだいどうさとし)准教授は「仮に法制局が安倍首相のいいなりに憲法解釈の変更を認めてしまえば、憲法解釈の信頼性が根本から失われてしまうので、容易にのめる話ではありません」と指摘します。

 内閣法制局 内閣に置かれ、閣議にはかる法律案や政令案、条約案などの審査や法令の解釈を行います。また、法律問題について首相らに意見を述べることを任務としています。その長が内閣法制局長官です。