2013年8月23日金曜日

都教委が実教出版の歴史教科書を排除

 東京都教育委員会は22日、2014年度に都立高校で使う日本史教科書に、実教出版の「高校日本史A」と「高校日本史B」を採択しないことを決めました。
 文科省と一体となった教育の右傾化が進んでいます。

 都教委は6月に、同社の教科書が国旗掲揚や国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述していることを問題として、都立高校で使用することは適切でないという通達を各校に出していました。
 「入学式、卒業式等において、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導すること学習指導要領に示されており、それを適正に実施するのが教員の責務であり、強制ではない、しかも最高裁判決で、国歌斉唱時の起立斉唱等を教員に求めた校長の職務命令が合憲であると認められた、というのが都教委の言い分です。

 都教委は2003年に学校行事で日の丸に向かい君が代を斉唱することを義務付けて、以後それに従わない職員は懲戒処分にするという厳しい対応を取ってきました。それに対して最高裁は11年に起立斉唱の職務命令を合憲と判断しましたが、12年の判決では「減給や停職には慎重な考慮が必要」との判断も示しています。

 都教委の2003年の通達は強制に他ならないというのがごく普通の感覚です。それに実教出版の表現は、これまで文科省と折衝した結果で生まれた妥協的な記述でした。都教委はそれさえも認めないというわけで、その高圧的で硬直した態度には驚く他はありません。
 他にも大阪府教委と神奈川県教委が、実教出版の教科書に対して、都教委と同様な処置を取っています。

 教育の右傾化はいまに始まったことではありません。家永教科書裁判以降、既に数十年を経るなかで、文科省を先頭にして教科書への干渉は一層強まっています。

 以下に東京新聞の記事を紹介します。
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都教委、実教の教科書は対象外 高校日本史、国歌の記述不適切
東京新聞 2013年8月22日
 東京都教育委員会は22日、2014年度に都立高校で使う日本史教科書を採択した。国旗国歌法に関する記述をめぐり、都教委が6月に「使用は不適切」とする見解を議決し、各校に通知した実教出版(東京)の教科書は、採択の対象にならなかった。
 都立高校の教科書は各校が選び、都教委が審査の上で採択する。
 問題となった教科書は実教出版の「高校日本史A」と「高校日本史B」。国旗掲揚や国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。これに対し都教委は「(国歌斉唱などの指導は)教職員の責務で、強制していない」としている。(共同)

実教出版の高校教科書 埼玉県教委 8校採用
東京新聞 2013年8月22日 
 国旗国歌をめぐる実教出版(東京)の高校日本史教科書の記述を東京都などの教育委員会が問題視している問題で、東京都教委は二十二日、来年度に実教版を使用する学校がゼロ校であるとの採択結果を議決した。都教委の方針が影響したとみられる。これに対し、埼玉県教育委員会は同日、八校が希望通り実教版を使用するという内容で採択。対応は大きく分かれた。
 実教版教科書は、国旗掲揚と国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。これに対し都教委は六月、「都教委の見解と異なる」と使用の適否に踏み込む異例の見解を議決。教育現場から反発の声が出ていた。
 問題視された教科書は実教出版の「高校日本史A」と「高校日本史B」。今年は都立高校のうち、一、二年生で使う延べ二百一校が採択の対象としたが、結果的に選んだ学校はなかった。
 都教委高校教育指導課は「採択権は都教委にあり、不当介入には当たらない。各校が都教委の通知を踏まえ、現場の判断で他の教科書を選んだということ」としている。
 都教委は本年度の使用教科書についても選定中の昨年七月、一年生で日本史Aを教える十七校に「都教委の考えと合わない」とする電話を入れ、結果的に実教出版の教科書を選んだ高校はなかった。
 一方、埼玉県教委の定例会では、実教出版の日本史教科書について「不適切で遺憾」などと懸念を示す意見も複数出た。だが、国旗掲揚や国歌斉唱について、他の教科書の記述例などを比較する「指導資料集」(仮称)を新たに作成し、授業に活用することなどを条件に採択された。
 実教版教科書をめぐっては、大阪府教委が「記述が一面的」との見解を表明。神奈川県では県立高校二十八校が県教委の要請を受けて実教版から別の教科書に使用希望を変更し、そのまま二十日に採択された。