2013年8月2日金曜日

TPP参加で国民生活は地獄

 日刊ゲンダイは31日付でTPP参加で国民生活は激変・・・地獄の選択』と題する記事を掲げました。
 郵貯問題、公的保険制度の形骸化に始まって、失業者の増大、日本の雇用を守ってきた労働三権の改廃の可能性まで、メキシコや韓国での実例に触れながら、TPP協定の危険性を述べています。
 そして「TPP交渉から即刻撤退すべき」と結んでいます。
 いつもながらのことですが、その語り口はいかにも明快です。

  以下に日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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TPP参加で国民生活は激変 「この道しかない」と地獄の選択
日刊ゲンダイ  2013731
政府や大新聞は何も伝えず「国益を守る」などとウソを並べているが、すべてはこの通り大変なことになる
今月26日の朝刊に「TPPで喜ぶのは、誰だろう?」という意見広告が載っていた。答えは明らかで、米政府と米国のグローバル企業だ。
TPPとは、「自由貿易」に名を借りた米国の覇権主義なのである。言い換えれば、米国の繁栄を維持するための装置だ。これを世界中に導入させる。それが狙いだ。反米感情が根強い南アメリカやロシア、中国などは別として、それ以外の国には米国の属国になるような仕組みをゴリ押しする。それがTPPなのである。  (中 略)

◆郵貯280兆円を手土産にする理不尽
「交渉能力がないのか、腰砕けなのか知りませんが、これでは話になりません。この調子では、自民党が昨年の衆院選で掲げたTPP6項目(重要5品目の関税維持・食の安全・ISD条項など)は、ひとつも勝ち取れず、“無条件降伏”になります」(ジャーナリスト・横田一氏)

政府もメディアもTPPを語る時に「聖域を死守」とか「国益を守る」とか言うが、大ウソだ。実際には、TPP参加で得られるものは何もない。日本の富を吸い上げられるだけの話だ。
立教大教授の郭洋春氏(経済学)が言う。
「象徴的なのが、26日に発表された日本郵政とアフラックの業務提携強化です。かんぽ生命はがん保険への参入を断念し、アフラックの“下請け”になる。米国とのTPP事前協議では、米自動車の関税を維持することと、日本郵政のがん保険を認可しないことが話し合われた。だから、日本は本格的な交渉のテーブルにつく前に、約280兆円といわれる郵貯マネーを米国に“差し出す”ことを決めたのです」
TPPに参加させてもらうための「お土産」というワケだ。なぜ、こんな理不尽がまかり通るのか。そこまでして、媚びへつらって、その結果、日本はどうなるのか。

◆命も健康もカネ次第になった韓国
米国とFTA(自由貿易協定)を結んだ韓国の現状を見れば、この国の行く末が分かる。米国とのFTAの拡大版がTPPだからだ。
「当初、米国は韓国の医療・保険制度にはノータッチと言っていたのに、除外や例外項目を次々と設けることで、実質的に公的保険制度は壊れてしまいました。まず、薬の特許期間が延長され、安価なジェネリック薬が作れなくなった。しかし、米国の高い新薬や医療は公的保険ではまかないきれません。民間の医療保険に入るしかなく、お金のない人は満足いく医療を受けられなくなったのです。韓国では、命も健康もカネ次第トクをしたのは米国の製薬会社と保険会社です。日本はこれから高齢者が増え、相対的に病気も増える。米国企業にとって、日本は格好の市場なのです」(横田一氏=前出)
韓国はFTA締結から1年間でアメ車の輸入が5割も増えた。その分、韓国の失業者が増え、アメリカでは雇用が増えた
韓国ではサムスンと現代自動車だけが儲かっていて、今や2社の純利益が上場企業100社の過半になっている。つまり、勝ち組はほんのひと握り。99%は敗者になる。それがTPPなのである。

◆「先進国の仲間入りをする」と言っていたメキシコの悲惨
米国とのFTAでは、メキシコも散々な目に遭っている。メキシコ国立自治大学の分析研究所のリポートによれば、「発効から18年を経た北米自由貿易協定(NAFTA)によって、メキシコの農民の72%が経営破綻に陥り」「メキシコは食料主権を喪失し、5億8100万ドルの食料黒字国から21億8100万ドルの超赤字国になった」という。
罪深いのは、94年のNAFTA発効当時、サリナス大統領(当時)ら推進派が「NAFTAでメキシコが進歩に向かい、先進国の仲間入りを果たす」と宣伝していたことだ。
輸出立国の幻想を振りまき、「TPPで経済成長」と煽る今の日本も、同じ道をたどることになる。農家は廃業に追い込まれ、スーパーの棚は米国の加工会社の商品に独占される。食の安全なんて「規制か!」とドーカツされてオシマイ。遺伝子組み換え食品があふれ返ることになる。

◆ISD条項で法律まで変えられる
「TPPは農業問題に矮小化されていますが、もっとずっと恐ろしいものです。特に危険なのがISD条項で、企業が自由に経済活動を行う上での『非関税障壁』とみなされると、相手国を訴えることができる。推進派は『日本も訴えればいい』と言いますが、裁くのは米国の影響力が強い世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターです。実際、米国が負けた例は聞いたことがない。国の法律や自治体の条例より、一企業のエゴ゙が優先されてしまうのです。日本の雇用を守ってきた労働三権も、非関税障壁だと訴えられれば、撤廃を余儀なくされてしまう。日本人は安い労働力に取って代わられ、失業者があふれることになる。これまでの日本の常識が通用しなくなり、米企業のルールによって、法律までが変えられてしまう。それはつまり、国のかたちが劇的に変わるということなのです」(ジャーナリスト・成澤宗男氏)
国家国民よりグローバル企業。全体の利益よりも効率。
そんな社会を誰が望んでいるのか。「この道しかない」と安倍が声を張り上げて先導するのは、地獄への道だ。

◆主権まで米国に渡してへつらうのか
経産官僚で元京大大学院准教授の中野剛志氏による編書「TPP 黒い条約」には、こんなことが書かれている。
〈オバマにとってTPPとは、日本で言われているような、新たな自由貿易のルール作りといったものではなく、単に他国の市場を収奪してアメリカの輸出と雇用を増やすための手段にすぎない〉
〈そのアメリカ依存から抜けられない日本は最大のターゲットで、徹底的に搾取される。日本の強みである厚い中間層は破壊され、格差は拡大。恩恵を被るのは1%のグローバル資本だけ〉
非合法な手続きによる憲法原理の変更をふつう、クーデターと呼ぶ。ISD条項は明らかに日本国の主権を深く侵害するクーデター以外の何ものでもない
TPP参加は米国の属州に成り下がることであり、国家の主権放棄に等しい。安倍がやろうとしているのは、国民への反逆だ。
米韓FTAが発効してから、韓国は65前後の法律を変えさせられました。もちろん、米国はひとつも変えていません。米国の政府高官は韓国紙に対し、『米韓FTAの最大の目的は、韓国の法律や制度、習慣を変えること』と明言している。TPPも同じです。米韓FTAで起きたことが、日本でも起こります」(郭洋春氏=前出)

安倍に人並みの愛国心があるならば、即刻TPP交渉から撤退すべきなのだ。
しかし、保身と政権維持のため、米国に従属し、主権までも渡そうとしている。右翼がなぜ黙っているのか、不思議なくらいだ。