2014年2月11日火曜日

都知事選の結果はキチンと総括を

 脱原発を望む都民たちから熱心な統一の働きかけがあったにもかかわらず、脱原発2候補分裂したままで行われた都知事選は、投票日に東京地方を襲った大暴風雪投票率大幅に下がったことも作用して、自公の推薦する舛添氏が当選しました。
 安倍首相は「原発即時ゼロを主張する候補は大差で敗れた」という言い方をしました。
 この都知事選勝利を受けて、安倍政権沖縄県名護市長選での敗北の影響を修復し、「数の論理」による横暴な政治運営を加速させる可能性が高まりました。 
 
 こうした波及効果を考えるにつけても、反政権側が候補者を統一するという問題は、今後の為に深く総括される必要があります。勝たなくても政党勢力の「地歩が固まればそれでよし」とするのは違っている筈です。
 
 海外メディアは「原発問題が今回の都知事選のメインイシュー」と報道しましたが、日本のマスメディアはそうではありませんでした。
 都庁記者クラブで行われた出馬の記者会見は、舛添候補には厳しい質問をしませんでしたが、細川候補に対しては徹底してネチネチ追及しました宇都宮候補は警戒するには当たらないと見たのでしょう。マスメディアの都知事選報道の姿勢を端的に示したものでした。
 そして衆院選、参院選に続いて都知事選でも、マスメディアの誘導する通りの結果になりました。 
 
 9日、舛添氏の当確が発表された直ぐ後会場に現れた細川候補は、開口一番マスメディアと原子力村を批判し、「原発が争点に取り上げられなかった。原発を争点にさせまいとする力が働いていた」、と無念さをにじませました。
 実際ユーチューブを見ると細川氏の街頭演説はどこでも大盛況でしたが、「街頭の熱気と結果」には大がありました。熱気が票に結びつかなかったのは、メディアによる争点そらしのためでした。政府・与党とそれに追随するメディアが、都知事選で原発問題が争点になるのを避け、無視した結果でした。
 
 共同インタビューに臨んだ宇都宮氏も細川氏同様マスコミを強く批判しました。「1080万人の都民がいる。メディアはこれからの選挙戦の扱いを考えて欲しい。民主主義の危機を感じる。都民にきちっとした情報を届けるのがメディアの役割だ」
 
 東海村村長村上達也氏は、都知事選脱原発を訴えた細川宇都宮両氏が敗れたのを受けて、「極めて残念。東京都民は目先の経済だけを追い、歴史的な大きな間違いを犯した都民は東京電力福島第一原発事故を忘れ、平和憲法の精神を壊そうとする安倍政権を支持した」と、強く批判しました
 
 東京新聞と田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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都知事選 「目先の経済追う 歴史的過ち」 東海村前村長が批判
東京新聞 2014年2月11日
 首都圏唯一の原発の日本原子力発電東海第二原発が立地する茨城県東海村の前村長村上達也氏(70)は、九日投開票された東京都知事選で脱原発を訴えた細川護熙(もりひろ)、宇都宮健児両氏が敗れたのを受けて、本紙の取材に「極めて残念。東京都民は目先の経済だけを追い、歴史的な大きな間違いを犯した」と強い口調で批判した。「都民は東京電力福島第一原発事故を忘れ、平和憲法の精神を壊そうとする安倍政権を支持した。東京が日本を駄目にしていく」とも述べた。
 
 村上氏は「脱原発をめざす首長会議」の世話人を務める。都知事選では、同じく脱原発を訴えた宇都宮氏を「脱原発の正統派」としながらも、「好き勝手しようとする安倍政権の暴走にブレーキをかけるには、勝てなければ意味がない」と細川、小泉純一郎両氏の元首相連合を支援した。
 
 宇都宮氏に「脱原発票が分裂した二〇一二年の衆院選のように悲しませないでほしい」と訴えるメッセージを送り、「歴史的な決断」を求めて、細川氏への一本化を要請したことを明かした。
 
 今後の国のエネルギー政策について、「師匠(である小泉氏)を倒した安倍首相は、もう怖いものなしだろう」と、なし崩し的な原発の再稼働を憂慮する。
 村上氏は東海村の村長を四期務め、昨年引退した。在任中の福島第一原発事故で、脱原発の姿勢を明確に。二〇一二年四月、「脱原発をめざす首長会議」の設立に加わり、地元首長としては異例とも言える廃炉の主張を通した。 (林容史)
 
【都知事選】「舛添に入れて子供が徴兵されても泣くんじゃないぞ」
田中龍作ジャーナル 2014年2月10日
 「けんか腰の外交」「戦争に道を開く集団的自衛権の行使」…細川候補は街頭演説で安倍政権のタカ派姿勢を批判した。昨夜(9日)、敗戦を語った際も「戦前に戻そうとする勢力との闘いだった」と強調している。
 細川氏の祖父、近衛文麿はA級戦犯とされ服毒死した。叔父の文隆氏はシベリアに抑留されたまま帰らぬ人に。細川氏は生い立ちからして「戦争をしてはいけない」という意識が人一倍強い。
 細川氏の街頭演説では髪に白いものが混じった聴衆が目立った。彼らは「いつか来た道」を憂えた。舛添候補が漁夫の利を得て当選すれば、都民が安倍政権の右傾化に信任を与えたことにつながるからだ。
 
 「怖い時代に入っている。有権者にはそれが分かっていない。情報統制はすでに始まっているではないか。舛添に入れた人は自分の子供が徴兵されても泣くんじゃないぞ」。選挙戦の最終日、数寄屋橋で行われた細川候補の街頭演説会に訪れていた男性(60代後半)の言葉だ。
 
 「こんな都知事選は初めて」と多くの声がツイッター上に流れた。確かにこの数十年というもの、都知事選は国政に真っ向から挑むような選挙ではなかった。ただの有名人の顔見世興行だった。だが今回は違った。
 選挙の結果しだいでは安倍政権を立往生させることも可能だった。原発再稼働だけではなく右傾化にも待ったをかけることができた。
 
 だがマスコミが争点にしたのは、オリンピック、福祉、防災、景気対策などだ。原発は少し触れたが右傾化については全く触れなかった。国政の問題という理由からだろうが。
 ネット上では「もうマスコミはいらない」という声が飛び交った。主要候補はツイキャスで街宣風景を全編中継し、聴衆は自宅から声援を送った。視聴者は数千人、多い時は万を超えた。マスコミのフィルターを通さず、街頭の聴衆と一体感を共有することができた。
 
 リアルとネットが融合し、世論が形成されていく新たな過程の予兆がした。だが、遅すぎたのではないか。これが都民にとって自由な選挙ができる最後の機会ではないのかという不安が頭にこびりついて離れない。秘密保護法が成立したのはわずか2ヵ月前のことなのだ。
 多くの高齢者や知識人たちは今、安倍政権にとにかくNOを言うことを優先させたいと願った。その願いを細川氏に乗せて賭けた。彼らには間もなく国会に上程されるであろう改憲と徴兵制の道筋が見えているのだ。
 
 「2・26事件(昭和11年=1936年)」の日も東京地方は記録的な大雪だった。この事件を境に自由な言論は封殺され軍部が政治の主導権を握る。日本は無謀な戦争へまっしぐらに突き進んだ。