公明党の漆原良夫国対委員長は25日付の自身のメールマガジンで、安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を、国会審議の前に閣議決定する方針を示したことに対し、「『国民の声を聴く』という一番大切な部分が欠落しており、到底賛成できない」と厳しく批判しました。
公明党は政権の「歯止め役」を自任していますが、首相が集団的自衛権で前のめりの発言を繰り返すのに対し、これまで反対を明確には表明して来ませんでした。
首相が25日に公明党の山口代表に与党協議を申し入れた直後に、公明党幹部からこうした強い批判が出たのは異例で、今後の議論の進み方にも影響すると思われます。
漆原氏は「歴代首相が戦後50年にわたって国民に説明してきたことが、ある日突然、首相から『閣議決定で憲法解釈を変えました』と発表されても国民は到底納得しない」し、「たった19人の閣僚だけで決定してしまうのは、いかにも乱暴に過ぎる」、とも述べました。
集団的自衛権の行使容認に向けて三権分立を無視して閣議決定を先行させることに対しては、自民党の総務会からも強い批判が出ており、河野洋平氏も「閣議決定と言っても、首相が選んだ閣僚による合意に過ぎない」とも述べています。
与党である公明党にも、そろそろ「歯止め役」らしい役割を期待したいものです。
東京新聞、NHK NEWS WEBの記事と併せて、産経新聞FNNの世論調査の記事を紹介します。
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解釈改憲「閣議決定」 「到底賛成できない」与党公明幹部が批判
東京新聞 2014年2月26日
公明党の漆原良夫国対委員長は二十五日付のメールマガジンで、安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を容認するため、憲法解釈を変更する閣議決定を目指していることについて「『国民の声を聴く』という一番大切な部分が欠落しており、到底賛成できない」と批判した。公明党は政権の「歯止め役」を自任している。しかし、首相が集団的自衛権で前のめりの発言を繰り返すのに対し、歯切れが悪いとの指摘も出ている。漆原氏には、幹部が党の基本的な姿勢を明確に発信する狙いがあるとみられる。
漆原氏は歴代の首相が一貫して憲法九条の解釈として集団的自衛権の行使はできないと説明してきたことを紹介。「ある日突然、首相から『閣議決定で憲法解釈を変えました。日本も今日から集団的自衛権を行使できる国に変わりました』などと発表されても国民は到底納得しない」と疑問を呈した。
首相が閣議決定を先行させる段取りを想定していることにも「このような重大な事柄を、たった十九人の(首相と)閣僚だけで決定してしまうのは、いかにも乱暴にすぎる」と指摘。政府が憲法解釈変更の案をまとめたら、閣議で決定する前に国会で議論するべきだという考えを示した。
漆原氏は衆院比例代表北信越ブロックで当選六回。六十九歳。弁護士を経て、一九九六年の衆院選で新進党から初当選。二〇〇六年九月、公明党の太田昭宏代表(当時)の下で国対委員長に就任。代表が山口那津男氏に交代後も続投した。
国対委員長は法案の扱いや議事日程など国会運営に関する調整を取り仕切る。幹事長や政策調査会長に次ぐ重要ポストとされる。
自衛権行使憲法解釈見直し 与党で議論
NHK NEWS WEB 2014年2月25日
安倍総理大臣は、公明党の山口代表と会談し、集団的自衛権の行使容認を巡る憲法解釈の見直しについて、政府の有識者懇談会の報告書が早ければ4月にも提出されたあとに、与党内で議論する場を設けることで一致しました。
集団的自衛権の行使を巡って、政府の有識者懇談会は、早ければ4月にも、憲法解釈の変更によって、行使を容認する報告書を安倍総理大臣に提出する見通しです。
これに関連して、安倍総理大臣は、25日総理大臣官邸で行われた、公明党の山口代表との会談で、「政府の有識者懇談会の報告書が、まとまったあとに、与党で議論する場を設けたい」と述べました。
これに対し、山口氏は、「今は有識者懇談会の議論を見守り、与党で議論する場が設けられた時点で協議に臨みたい」と述べ、応じる意向を伝えました。
また、安倍総理大臣は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉について、「国益を確保しながら合意形成を目指すのが政府の基本方針だ」と説明しました。
さらに、安倍総理大臣は、核軍縮の進展や核兵器の拡散防止に向けて、来月下旬にオランダで開かれる「核セキュリティーサミット」について、「アメリカのオバマ大統領から出席を要請されているので、状況が許せば出席したい」と伝えました。
集団的自衛権 丁寧に与党内の議論
NHK NEWS WEB 2014年2月26日
集団的自衛権の行使容認を巡って、安倍総理大臣が憲法解釈を変更する際は与党との協議も踏まえて閣議決定する考えを示していることに対し、公明党の幹部からの批判も表面化していることから、自民党は丁寧に与党内の議論を進める方針です。
集団的自衛権の行使を巡って、政府の有識者懇談会は早ければ4月にも憲法解釈の見直しによって行使を容認する報告書を提出する見通しで、安倍総理大臣は25日、公明党の山口代表と会談し、報告書が提出されたあとに与党内で議論の場を設けることで一致しました。
ただ、公明党は集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩していません。
漆原国会対策委員長は、安倍総理大臣が憲法解釈を見直す際は与党との協議も踏まえて閣議決定する考えを示していることに対し、みずからのメールマガジンで「国民の声を聴くという一番大切な部分が欠落しており、到底、賛成できない。なぜ変更する必要があるのかなどで国民的合意を得る必要がある」と主張しました。
これに対し自民党は、石破幹事長が「公明党と少しズレはあるが、公明党の主張に十分配慮することと、国民の理解を得ることは限りなく近いものであり、政府・与党一体となって調整していきたい」と述べるなど、丁寧に与党内の議論を進める方針です。
集団的自衛権、憲法改正…自公支持層も温度差
産経・FNN合同世論調査
産経新聞 2014年2月25日
安倍晋三首相が意欲をみせる集団的自衛権の行使容認や憲法改正などの政策課題で、とかく“すきま風”が吹く自民党と公明党。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、両党の支持層の間にも温度差があることが浮き彫りになった。
集団的自衛権の行使容認問題をめぐり、政府は4月にも有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書を受け取り、ただちに自公両党との協議に入りたい考えだ。ただ、安倍政権のブレーキ役を自任する公明党は慎重姿勢を崩していない。
世論調査でも、自民党支持層の61・5%が行使容認に賛成なのに対し、公明党支持層は42・2%。反対(44・4%)が上回っていた。首相にとって公明党の説得がカギとなるが、支持基盤の意識の差を埋めるのは容易ではない。みんなの党支持層の80・0%、日本維新の会支持層の55・6%が賛成しており、安倍政権に近い両党の存在も公明党を刺激しそうだ。
自公支持層の温度差は憲法改正の是非でも同じ。自民党支持層は64・1%が賛成だったが、公明党支持層は37・8%。反対は42・2%で賛成を上回っていた。
自公支持層の意見対立が最も大きかったのが原発再稼働問題。安全性が確認された原発の運転を再開することへの賛否を尋ねたところ、自民党支持層の53・0%が賛成し、公明党支持層の60・0%が反対した。もっとも、再稼働問題では、自民党以外の各党支持層で反対が賛成を上回った。