LITERAが「自民党・維新がコロナを口実に『改憲=緊急事態条項の創設』に動き始めた! ~ 」とする記事を出しました。
憲法に謳う緊急事態条項は 国家緊急権とも非常時大権とも呼ばれ、いうまでもなく新型コロナ禍における緊急事態宣言とは根本的に異なります。コロナ禍での緊急事態宣言は法律に基づくものなので憲法がその歯止めになり、私権制限を強める場合には法改正が必要で国会のチェック機能が働きます。
それに対して緊急事態条項を憲法の条文にすれば、内閣に「法律と同等の効果を有する政令を制定できる」権限が与えられる(⇒内閣が立法権を持つ)ので、緊急事態宣言下では内閣は「万能の権限」を持つことになります。
しかもそれを「発動できる条件」は抽象的なので(宣言の終了時期についても同様)結局は政府の判断に拠ることになり政府の恣意に委ねられます。その継続期間は、外国では通常数年に及んでいます。「万能の権限を行使できる」立場が居心地がいいのでしょうが。
緊急事態条項の憲法への創設は「9条改憲よりも重大」と言われる所以です。
歴史的に緊急事態条項の害悪が最大限に発揮されたのがナチスドイツによる独裁政治でした。当時ドイツでは最も民主的なワイマール憲法が制定されていたのですが、それにもかかわらず「緊急事態条項」によってヒトラーが全権委任法を成立させ、あの惨劇が引き起こされました。
⇒(13.8.3)ワイマール憲法下でなぜナチス独裁が実現したのか
当時世界の最先端といわれたドイツのワイマール新憲法が制定されたのは1919年でした。
第二次大戦後、ドイツには米英仏の軍隊が駐留し治外法権を主張していたので、自国の主権を回復するため、ドイツはやむを得ず(米英仏との条約上)憲法に緊急事態条項を盛り込みました(1968年)が、ワイマール憲法時代の反省に立って、緊急命令の乱用によって政府の独裁を許さないよう、緊急事態においても政府に緊急命令制定権を与えず、連邦政府の措置をできる限り議会及び連邦憲法裁判所の統制の下に置くようにしました。
それに対して自民と維新は100年以上も前の姿のままで緊急事態条項を憲法盛り込もうとしているわけで、自民党が野に下った時期に安倍晋三氏が作らせたものをそのまま使おうとしています。それこそは世界に恥ずべきことで、「1世紀前の感覚! 」には絶句するばかりです。
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自民党・維新がコロナを口実に「改憲=緊急事態条項の創設」に動き始めた!自分たちの失政を憲法にスリカエ、火事場泥棒を許すな
LITERA 2021.11.21
自民党がいよいよ火事場泥棒に乗り出そうとしている。そのことがよくあらわれているのが、岸田文雄首相が安倍晋三・元首相への忖度で甘利明氏の後任に据えたとされる自民党の茂木敏充幹事長の読売新聞のインタビューだった。
茂木幹事長は「新型コロナウイルス禍を考えると、緊急事態に対する切迫感は高まっている。様々な政党と国会の場で議論を重ね、具体的な選択肢やスケジュール感につなげていきたい」と発言。自民党が提示している改憲4項目のなかでも「緊急事態条項の創設」を優先的に目指す方針を示した。
安倍・菅政権で重要閣僚として政権中枢に鎮座していた人間がよくもまあ「コロナ禍で緊急事態に対する切迫感が高まっている」などと言えたものだ。この間、「Go Toキャンペーン」や東京五輪の強行開催によって感染拡大を引き起こし、一方、病床確保も検査体制の拡充もおろそかにして医療崩壊を繰り返させてきたのは、憲法ではなく、お前たちの失策だろう。
無論、自民党がこのような厚顔無恥を晒すのは、今回にはじまった話ではない。実際、コロナが流行し始めた2020年1月末の段階から当時の安倍自民党は「改憲議論が必要だ」「憲法改正の大きな一つの実験台」などと言い出し、同年の憲法記念日には安倍晋三・元首相が、日本会議が主体となった団体が開催した改憲集会に送ったビデオメッセージで「今回のような未曾有の危機を経験した今、緊急事態において国民の命や安全を何としても守るため、緊急事態に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか。そのことを憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と主張。
これは菅義偉・前首相も同様で、今年の憲法記念日にも同じ憲法集会でのビデオメッセージのなかで「新型コロナへの対応を受けて、緊急事態への備えに対する関心が高まっている」と述べ、安倍元首相と同じ主張を繰り返した。
ふざけるのもいい加減にしろ、と言うほかない。当然ながら、緊急事態条項がなくても医療や検査の強化・拡充はできるし、人流を抑えたいのならば十分な補償や給付金の支給によって国民の生活を支えればいい。つまり、この国がコロナ対応で失敗してきたのは、そうしたやるべきことをやらなかった政治の責任にほかならないのだ。それを「緊急事態条項がないからだ」などと憲法改正に話をすり替えるのは、はっきり言って犯罪的な悪質さだ。
だが、事あるごとに自民党政権は、コロナ対策をやらないことの言い訳として憲法の問題を持ち出してきた。たとえば、デルタ株の水際対策の重要性が明らかになっていた局面でも、変異株の流行地域からの入国者に対する宿泊施設などでの待機期間の延長を国会で野党から要求されても、菅政権は「憲法の制約がある」「私権制限の法律がない」などと言い張って拒否。しかしその後、遅れに遅れるかたちで菅政権は待機期間の延長を決定。「憲法の制約」という主張が真っ赤な嘘だったことを自ら証明した。
自民党の火事場泥棒的改憲に、日本維新の会と「改憲勢力」が結託の動き
このように、コロナによって改憲、緊急事態条項の必要性が高まっているなどというのは完全なデタラメでしかないのだが、しかし、この茂木発言に代表される「緊急事態条項の創設を突破口にした改憲」の動きはかつてないほど、リアリティを帯び始めている。
それは言うまでもなく、先の衆院選で躍進した日本維新の会という「改憲勢力」が結託の動きを見せているからだ。
実際、維新の松井一郎代表は、衆院選が終わるや否や「来年の参院(選挙)までに改正案を固め、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」と主張。また、国民民主党の玉木雄一郎代表も「憲法の議論をするだけで袋叩きにするようなスタイルが忌避されていることに気づかないと、野党が多くの国民、特に若い世代に支持されることはないでしょう」などと発言している。
もちろん、こうして秋波を送られた自民党も俄然前のめりとなっており、茂木氏は幹事長就任会見でも、先の衆院選で日本維新の会が議席を増やしたことに絡んで、改憲について「維新も含めてさまざまな政党とも議論を重ねて進めていきたい」と明言。今回の「緊急事態条項の創設を優先的に目指す」という方針を示したのも、維新と国民民主党の議席増を踏まえての発言だった。
つまり、岸田自民党は、維新と国民民主党という改憲勢力と手を結ぶことにより、「いよいよ改憲をゴリ押しできるチャンスがやってきた」と睨み、一気に改憲を押し切ろうとギアを入れているのだ。
言っておくが、安倍・菅政権とまったく同じで、維新の吉村洋文・大阪府知事も自身の失策をごまかすために私権制限を叫んできたような下衆野郎だ。大阪府といえば第4波で人口が2倍近い東京都よりも多いコロナによる死者を出すなど東京の2倍近い致死率でし、ヨーロッパ並の致死率であることが報じられているが、第4波の最中だった今年4月に吉村知事は「社会危機が生じたときに個人の自由を大きく制限する場合があると国会で決めていくことが重要だ」などと発言。こうした私権制限の拡大の先にあるのが、憲法が保障保証する個人の権利を制限することを可能にする「緊急事態条項」の創設であることは明々白々だ。
野党共闘批判の空気を使って火事場泥棒の改憲を推し進めようとする自民・維新
ようするに、現在の権限のなかでやろうと思えばできることをやらず、責任転嫁のために「私権制限ができないせい」などと改憲に問題をすり替えてきた連中が、「改革政党」を印象づけるために改憲を利用し、その旗振り役となることで存在感を高めようとしているのだ。そしていま、たんなる党勢拡大、党利党略のために、維新と国民民主党は自民党と野合しようとしているのである。
自民はもちろん維新も国民民主党も、立憲民主党や日本共産党の野党共闘批判に躍起になっているが、その際に「立憲と共産が憲法審査会をボイコットするために議論が進まない」などと攻撃を繰り広げている。だが、コロナ禍を理由に「改憲議論を進めるべき」だの「感染症対策のためには緊急事態条項が必要だ」などと嘘八百を並べ立てる連中に、そんなことを言う資格はまったくない。
しかし、維新の勢いを考えれば、こうした道理なき改憲勢力に対して世論の追い風が吹く可能性は高い。この危険な改憲キャンペーンを、市民の力でなんとしても押し返すしかない。 (編集部)