2021年11月3日水曜日

03- 野党共闘競り負け こんな自民党政権が続く痛恨と絶望(上)(中)

 日刊ゲンダイに「野党共闘競り負け こんな自民党政権が続く痛恨と絶望(上)(中)(下)」という長編の記事が載りました。

 このうち(中)(下)は、有料記事につき非公開となっていましたが、記事集約サイト「阿修羅」に、(中)の文字起こし版が載りましたので、転載させていただきます。
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野党共闘競り負け こんな自民党政権が続く痛恨と絶望<上>
  首都圏は野党が一矢報いたが結局「絶対安定多数」のやりきれなさ
                     日刊ゲンダイ 2021 年 11 月 01
 31日に投開票が行われた衆院選は、何とも煮え切らない結果に終わった。自民党は議席を減らしたが、立憲民主党も公示前勢力を下回った。自民重鎮が選挙区で負けるなど小波乱はあったものの、結局は自民単独で「絶対安定多数」という結末をどう評価、分析するべきなのか。ハッキリしているのは、有権者が安倍・菅・岸田政権の継続を選んだことが、この国の未来に重くのしかかってくるという暗い現実だ。
 開票前は、「自民党単独過半数割れ」も囁かれていたのに、終わってみれば自民党は、単独で過半数(233議席)どころか、17の常任委員会すべてで委員長を出したうえで、過半数の委員を確保できる「絶対安定多数」の261議席に達した。
 今後も、国会運営はラクラクだ。野党の声は無視され、最後は強行採決で何でも決めてしまう。国会審議は形骸化。おなじみの光景が繰り返されることになる。
これでは選挙前と何も変わりません。政権交代が起きなくても、自民が単独過半数割れなら、これまでのような好き勝手はできなかった。与野党勢力が伯仲すれば議会に緊張感が生まれ、与党側もむちゃはできなくなります。せっかく悪辣自民の息の根を止めて、民主主義を取り戻すチャンスだったのに、国民はこれだけ悪政に虐げられても変化を望まないということでしょうか。安倍菅政権から続く独裁体制が維持される結果になり、やりきれません」(政治評論家・本澤二郎氏)
 野党は、首都圏など都市部では善戦して一矢報いたが、地方ではバタバタと競り負けた。接戦に持ち込んだ選挙区の多くであと一歩及ばず、与党候補に敗れてしまった。
投票率が低いと、組織票で自公が有利なのは分かり切ったことです。投票権を行使しない有権者も不甲斐ないし、大メディアの責任も大きい。自民党内のイベントである総裁選では連日、大騒ぎしていたテレビも、国民にとって、もっと大事な衆院選の扱いは小さかった。政治の私物化やコロナ対策など、この4年間の自公政治への審判だと明確に問うこともしませんでした。狡猾な自民はさっそく追加公認で“カサ増し”し、数の力を頼んだ独裁体制を強化しにかかっています」(本澤二郎氏=前出)
 投票率は55・33%前後とみられ、前回2017年の53・68%をわずかに上回ったが、戦後3番目の低水準だった。
 有権者の関心の低さが、岸田自民の高揚感なき勝利につながった。

いくら居直っても議席減で問われる岸田の求心力
「衆議院選挙は、いつの選挙も政権選択選挙。与党で過半数が目的だということは、従来からも申し上げてきた。信任をいただいたと受け止めたい」
 勝利宣言でも岸田首相に笑顔はなかった。それも当然で、自民にとっても狐につままれたような勝ち方だったからだ。
「当日まで『自民苦戦』と報じられていたし、50議席減もあり得ると思っていた。なぜこれほど勝てたか分からない」(閣僚経験者)
 不人気の菅前首相から表紙を代えて選挙に臨んだものの、期待したご祝儀相場もなく、風も吹かず、野党共闘で激戦区が一気に増えた。低投票率に助けられた勝利だった。
 コロナ禍で多くの国民が苦しみ、政府の対応に不満を抱いても投票率が上がらなかったのは、政治不信が根強いことの表れでもある。それに、勝ったとはいえ議席を減らしたことには変わりない。果たして岸田自民は踏みとどまったと言えるのか。
 そもそも岸田は「選挙の顔」として弱い。演説にも有権者を引き付ける力がない。党内には不安が残り、総裁選から続く抗争の火種もくすぶったままだ。
 選挙を経て多少なりとも顔ぶれが入れ替わり、党内の権力構造に変化が生じる。甘利幹事長の選挙区落選で「3A」の一角が崩れたが、安倍元首相、麻生副総裁の顔色をうかがいながらの政権運営になれば、国民の支持も得られないだろう。
 参院選前に「岸田では戦えない」という声が上がり、岸田降ろしが起きてもおかしくない。
「この衆院選は岸田首相の力で勝ったわけではないので、選挙を経て求心力が高まったとは言えません。しかし、自民単独で絶対安定多数を確保したため、与野党の関係も、自民党内の政局も膠着状態でしょう。岸田首相は基本的に内閣と党執行部の布陣は替えないと言っているので、辞意を表明した幹事長だけは交代しても、現状維持でズルズル続いていく可能性が高い」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
 4年ぶりの衆院選でも自民党は変わらない。政治も変わらない。あまりに不毛だ。

どのツラ下げてTV出演? 甘利幹事長の赤っ恥
 総選挙の責任者がマサカの落選。
 口利きワイロ疑惑を抱えながらデカい顔でのさばってきた自民の甘利(神奈川13区)は「現職幹事長の落選」という結党以来の赤っ恥だ。さすがに岸田に辞意を伝えている。
 ロートル軍団「3A」の一角を占め、岸田政権誕生の立役者として厚かましく復権した甘利は、選挙戦序盤こそ、〈選挙期間中地元に入れるのは今日の2時間だけ。よってタスキをかけるのもこの2時間だけ。コスパの悪い選挙備品だね。でもその分、同志の応援に全国を走り抜けます〉と余裕のツイート。
 ところが、ラスト3日間は選挙区にベタ張り。ビールケースに乗って「私は未来を見通せる」「私がいなくなれば大変なことになる」と錯乱状態で叫び散らしていたのだから、情けない。
 投開票日も見苦しさを全開。テレビ各局をハシゴし、「国会議員って大きなビジョンで日本の未来を語るんですけど、私が個々に話す人には好感をもって受け止めていただくんですけど、それがみんなに伝わっていかない」などと持論を展開。
 大臣室で50万円の現ナマを受け取ったことが発覚後、睡眠障害を理由に国会を長期欠席したくせに、「不整脈を抱えていましたから。ストレスで不整脈が出るということで、医者からもですね、少し休んだ方がいいとアドバイスを受けておりました」と言いだす始末。錯乱状態から抜け出せないのか。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「政治とカネの問題を象徴するひとりである甘利幹事長の選挙区落選はインパクトが非常に大きい。安倍・菅政権の負の遺産をリセットできない岸田政権、独り善がりのオッサン政治に有権者もいい加減うんざりしたのでしょう」
 甘利はしぶとく比例復活したものの、国会にどのツラ下げて出てくるつもりか。


野党共闘競り負け こんな自民党政権が続く痛恨と絶望<
いろいろ大メディアは書き立てるだろうが、野党共闘の成果はあった
                          日刊ゲンダイ 2021/11/01
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 全289小選挙区の7割強にあたる217選挙区で野党候補が一本化した結果は、野党の62勝だった。立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党が政策協定を結んだことに対し、自民党は「立憲・共産主義」などとイチャモン批判を展開。
 それに乗っかった大メディアは立憲の敗北について、いろいろ書き立てるだろうが、野党共闘に一定の成果があったのは間違いない。
 代表例は東京8区だ。野党統一候補の立憲・吉田晴美が、自民党で幹事長まで務めた派閥領袖の大物・石原伸晃を、比例復活を許さないほどにノックアウト。それも、投票箱が閉まった直後のいわゆる「ゼロ打ち」で当選確実が出る快挙だった。
 れいわの山本太郎代表がいったん、同区からの出馬を決めたものの、野党共闘を優先して吉田に譲った。これを受け、共産も候補者を取り下げ、吉田が統一候補となったことで全国的な注目区となり、一気に石原を追い詰めたのだった。
 他にも、都市部の東京5区、千葉1区、地方でも宮城2区、福島4区、茨城1区などで、前回は小選挙区で敗れた野党候補が、一本化によって競り勝った
「4年前もそうですが、安倍政権時の選挙で自民党の圧勝を許してきたのは野党候補の乱立が原因でした。今回、自民は15議席減らした。与党の独走を許さないという意味で野党一本化の効果はあった。自民党が時代錯誤の共産主義批判に走ったのも、野党共闘を恐れてのこと。そう考えると、次につながる共闘であり、今後も進化させていくべきでしょう」(政治評論家・野上忠興氏)
 野党の救いは、比例東京ブロックでれいわが議席を獲得し、身を捨てて野党共闘を優先した山本太郎が国会に戻って来ることだ。与野党双方にとって、台風の目になるかもしれない。

今後気を付けなければならないのは「ゆ党」維新の怪しい動き
 勝者なき総選挙で唯一、躍進したのが日本維新の会だ。大阪府内の19選挙区のうち、自民と対決した15選挙区で全勝。立憲民主ベテランの辻元清美副代表も吹き飛ばし、公示前の4倍近い41議席を獲得。単独で法案提出が可能な21議席を大きく上回り、自民、立憲に次ぐ衆院第3党に躍り出た。
 副代表を務める大阪の吉村府知事のちょっと不気味なアイドル的人気もさることながら、議席大幅増を後押ししたのは、岸田政権の中途半端さ、どっちつかずのスタンスだ。
 維新関係者は言う。
「岸田総理は〈『改革』には弱肉強食の冷たいイメージがついている〉と言って、選挙戦では大阪以外で『改革』を口にしなかった。『身を切る改革』を訴えるウチには、総理の煮え切らない姿勢は好都合。自民とも違い、野党共闘にもくみしない維新カラーを前面に押し出せ、閉塞感を抱く有権者の支持を集められた。公明を上回る目標も達成できた」(維新関係者)
 共同通信の出口調査では全体の10%を占める無党派層のうち、比例代表の投票先は維新20%。自民17%を上回り、トップの立憲24%に迫る勢いだった。安倍政権時代は自民の補完勢力という立ち位置だったことを考えれば、隔世の感だ。
 安倍・菅政権で築いた自民中枢との蜜月は岸田政権でご破算となったが、この先は分からなくなってきた。
 代表の松井大阪市長は岸田政権との関係について「いいことはいい、ダメなものはダメのスタンスで臨みたい」とし、いつもの「是々非々」を強調したが、タイミングを計って政権に絡みついていくこと必至だ。
「選挙区で落選した自民の甘利幹事長の辞任に伴い、近く党役員と閣僚人事が行われる。その玉突きを利用し、維新の“生みの親”でもある橋下徹元大阪市長が民間大臣として入閣するのではないか。そうした見立てが急浮上しています。実現すれば事実上、維新も連立政権入りを果たしたことになる」(与党関係者)
 いよいよ「ゆ党」の本領を発揮し、永田町でも存在感を強めていくのは間違いない。

こんな自民を下野させられない野党の責任
 立憲の枝野代表(埼玉5区)が当選確実となったのは、日付が変わった1日未明のことだった。そこまでずれ込んだのは、自民候補とわずか6083票差の大接戦になったからだ。
 本来なら“横綱相撲”のはずの野党第1党の党首が苦戦を強いられたことこそ、立憲の敗北を象徴している。
 下馬評では、立憲は140議席まで伸ばすという予想もあったが、自公政権への批判票は日本維新の会へ行ってしまい、立憲は結局、公示前の109から13減の96議席にとどまった。
 野党共闘による候補者の一本化には一定の成果があったものの、与党に絶対安定多数(261議席)を許した。与党は、衆院の常任委員会すべてで委員長を出し、過半数の委員を確保できる。自公政権が公文書を改ざんしても、国会答弁で嘘をついても、多数で守られるわけで、これまでと変わらぬペテン政治が横行することになる。
 世論の7割は「安倍菅政権からの転換」を求めていたのに、なぜ自公を下野させられなかったのか。
「やっぱり、枝野代表と福山幹事長という『党の顔』が代わらなきゃダメなんじゃないでしょうか。立憲民主党に風が吹いた4年前の総選挙をそのまま引きずり、栄光にすがっていては、有権者に呆れられるだけです。硬直化した党執行部の体制を表紙を含めて刷新し、政策的にも、もっと有権者にアピールできるものにする必要がある」(野上忠興氏=前出)
 野党第1党が、政権批判票の受け皿になれなかった責任は大きい。多くの国民が、安倍菅政権への怒りや新型コロナ対策への不満を抱いていたのに、立憲の支持率はずっと1ケタにとどまったまま。「自公は嫌だけど立憲も嫌」と有権者にソッポを向かれ、“ゆ党”の維新を躍進させてしまった。
 枝野は引責の代表辞任が必至である。