2021年11月10日水曜日

“天敵” 林芳正氏の外相起用で 安倍元首相が怒り心頭!

 安倍元首相が自民党の最大派閥細田派に復帰し、会長に就任する見通しであることが分かりました。細田9日幹部会合で、11日に総会を開き細田氏の後任として安倍氏の会長への就任を正式決定する見通しです。

 安倍元首相は今度の衆院選では、12年ぶりに公示日の10月19日、選挙区の山口4区で第一声を上げただけでなく、最終盤の29日からも地元に貼りつきました。それまで本人不在でも過去3回の衆院選は常に10万票以上を獲得し、70%を超える得票率で圧勝してきました。今回地元入りしたのは、さら得票を増やして全国一の得票率を目指した筈ですが、肝心の得票数は8万448票と17年衆院選から2万4000票も減らし得票率も70%を下回りました。山口県の投票率は49.67%で全国最下位中でも安倍元首相の山口4区は前回から8.95ポイントも減って48.64%という低投票率でしたこれは安倍氏には入れたくないが、他に有力な対抗馬もいないからと棄権した人が多かったのではと見られ、不人気のほどが窺えます。
 それに対して総裁選で安倍氏が排除した河野太郎氏は全国1位21万515票を獲得し石破茂氏は全国1位の得票率で84.07%でした(そして安倍氏の妨害を押し切って参院から衆院山口3区に鞍替えした林芳正氏は得票率76.94%で安倍氏を上回りました)。
 こうした凋落ムードの焦りが安倍氏に派閥復帰を急がせているといわれています。これにはもういいかげん後進に道を譲ればいいのに…というしかありません。

 ところで岸田首相は総裁選に向けて、早々に「モリカケ桜の疑惑を解明する」と謳いましたが、それに安倍氏が激怒するとすぐに引っ込めて男を下げました。それでも安倍氏の「高市氏⇒幹事長に、萩生田氏⇒内閣官房長官に」という要求は聞かずに、甘利氏を幹事長に就けたことで、国民からは大顰蹙を買いましたが、それによって安倍氏のいう通りにはならないところを見せました。
 岸田首相は甘利氏の幹事長辞任後の対応でも、再び安倍氏の願望を無視して新幹事長に茂木氏を指名しました。岸田氏はそれ以外にも安倍氏と犬猿の仲である福田康夫元首相の息子の野田達夫氏を総務会長に抜擢しています。それには安倍氏は、「嫌がらせをされているようだと怒ったそうです。このあたりは「あっぱれ岸田」です。
 ところがここにきてさらに決定的なことが起きました。それは幹事長になった茂木氏の後任の外相に林芳正氏を起用したことでした(11日決定の予定。NHK)。岸田派のNO2で東大法卒・ハーバード大学院出の秀才として知られる林氏が要職に就くのに別に不思議はないのですが、今回の衆院選で念願の衆院への転身を果たした林氏の選挙区が山口県3区で、安倍氏の地盤山口県4区と隣り合わせなのでした。
 しかも山口県の3区と4区は近く合区される予定で、そうなるとどちらかが去るか同士討ちをするしかなくなるので、安倍氏としてはそれだけは「避けたかった」というよりも絶対に「許せない」ことでした。
 それが岸田政権下でいともすんなりと実現してしまったのでした。 素知らぬ顔をしながら岸田氏もやるものです(^○^)
 二つの記事を紹介します。
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お前はもう死んでいるとばかりに…岸田首相が安倍元首相に“嫌がらせ”で関係悪化を 心配する声
                   小倉健一 デイリー新潮 2021年11月8日
                         ITOMOS研究所所長
 権力の欲望が渦巻く永田町に秋風ならぬ、すきま風が吹いている。舞台の主役は政権与党の頂点に立った岸田文雄首相と、自民党最大派閥の影響力を背景に「令和のキングメーカー」となった安倍晋三元首相だ。主要メディアの予想を覆す勝利を総選挙で手にした岸田自民党だが、2人の最高権力者の間に生じた微妙な距離感に不安を抱く声は少なくない。
「3A」──。9月末の自民党総裁選で岸田氏の勝利に貢献したといわれる安倍氏、麻生太郎元首相、甘利明元経済再生相の3人の「A」は、歴代最長の5年以上も幹事長職に君臨した二階俊博氏にかわる「キングメーカー」として、岸田政権で圧倒的な存在感を放つ。
 実際、岸田氏は自民党第2派閥の麻生派(49人)から麻生氏を党副総裁に、甘利氏は党ナンバー2の幹事長に任命。安倍氏が絶大な影響力を持つ最大派閥・細田派(87人)からは松野博一官房長官、福田達夫党総務会長、高木毅国会対策委員長を起用し、首相自ら率いる岸田派(41人)を含めた主要派閥で政権基盤を安定させる道を選択した。
 だが、政権発足から1カ月も経たず、強固に見えた首相と「3A」との関係に亀裂が生じたという。決定打となったのは、総選挙で敗北(比例復活)した責任をとって幹事長職を辞任した甘利氏の後任人事である。
 自民党担当のテレビ記者が解説する。
「安倍氏ら細田派には党役員・閣僚人事や衆院選の公認調整などで『岸田―甘利体制』に不満がありました。その甘利氏が事実上失脚したので、同派の萩生田光一経済産業相の幹事長起用か、安倍氏に近い高市早苗政調会長の横滑り人事を期待していたわけですが、それも岸田氏に無視されてしまい……。お前はもう死んでいる、とばかりに2度までもコケにされて安倍氏の面子は丸つぶれですよ」

「福田総務会長」をめぐり…
 元々、安倍氏は最側近の萩生田氏を官房長官に、幹事長には高市氏の起用を期待していた。しかし、実際に官房長官に就いた松野氏は細田派であるものの、甘利氏が結成した派閥横断グループ「さいこう日本」のメンバーという「甘利印」でもある。選挙公約などを取り仕切る政調会長に高市氏が就任したが、党内屈指の政策通といわれる甘利氏が幹事長の立場から自民党や政府の施策に口をはさむことが予想された。
 さらに安倍氏の機嫌を損ねたのは、当選3回の福田氏が党3役の総務会長に任命されたことだ。小泉純一郎首相時代の2003年、官房副長官から当選3回で幹事長に抜擢された安倍氏としては、若手からの大胆な抜擢は驚くことではない。福田氏が細田派に所属していることも歓迎すべきことである。だが、福田氏の父は安倍氏と犬猿の仲である福田康夫元首相。小泉政権で上司だった康夫氏とは北朝鮮による日本人拉致問題への対応などをめぐり確執が生まれ、陰に陽に批判をし合ってきた関係にある。
 両者の関係を知る閣僚経験者が語る。
「岸田氏から『福田総務会長』プランを聞かされた安倍氏はおもむろに不機嫌になり、再考するよう求めたそうです。岸田氏とのパイプ役は萩生田氏に任せ、首相経験者としての矜持から露骨にアレコレ言うことは控えていた安倍氏ですが、さすがに『嫌がらせをされているようだ』と怒るのも無理はありませんよ」
 党総裁選の決選投票で、先頭に立って支援した高市氏陣営の勢力を岸田氏に加勢させ、岸田政権誕生の立役者である安倍氏の苛立ちは隠せそうにはない。

友情もあるが勝負は別
 だが、物事には表と裏がある。いずれも岸田氏サイドから見れば、その風景は大きく違う。国民の人気が高い河野太郎前ワクチン担当相への危機感から、総裁選で支援を求めたものの安倍氏には高市氏の全面支援に回られ、1回目の投票結果は高市氏が国会議員票で岸田氏(146票)に次ぐ2位の114票を獲得。
「安倍氏は『河野潰し』で岸田氏を勝たせるために高市氏を担いだとも言われましたが、本気で高市氏を勝たせようと全面支援していた。下手をすれば、岸田氏と順位が逆になっていた可能性もありました。岸田、安倍関係には友情もありますが、勝負はまた別ということでしょう」(自民党中堅)
 との声もあがる。
 振り返れば、岸田氏はたびたび安倍氏に苦汁を飲まされてきた。直近では、昨年の党総裁選をめぐる対応があげられる。2018年の総裁選で立候補を模索した岸田氏は、長期政権を築いていた安倍氏からの「禅譲」を期待して出馬を見送った。「ポスト安倍」の筆頭格として意欲を示し続け、安倍氏や麻生氏と良好な関係を維持してきたのも「次」に両氏の支援を期待してのものだ。
 しかし、2020年8月に安倍氏が体調悪化を理由に首相辞任を表明。岸田氏が当然の流れとして次期総裁選での支援を求めた際、安倍氏は首を縦に振らなかった。安倍路線を継承した菅義偉氏らとの総裁選は、菅氏が377票、岸田氏は68票。一時は「政治生命を絶たれた」といわれるほどの大敗を喫している。

30万円給付で赤っ恥
 他にも苦い記憶がある。新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ国民への支援策として、自民党政調会長だった岸田氏は「困窮世帯への30万円給付」案をとりまとめ、政府に実現を求めた。この案は当時の安倍首相と決めたものだったが、二階幹事長や公明党の反対から急きょ方針転換を余儀なくされ、党内での求心力が急落する「赤っ恥」をかかされている。
「普通に考えれば、あれだけ期待していた『後継指名』を袖にされ政治家として終わりかける危機を強いられれば、安倍氏に対して良い感情はないでしょう。本音では何度も裏切られたと感じていると思いますよ」
 全国紙政治部デスクは、こう岸田氏の複雑な胸中を探る。党役員・閣僚人事で安倍氏の意向を忖度せず、総選挙の群馬1区の公認争いでは、安倍氏が「公認候補でなくなることはあり得ないと思っている」と公言していた尾身朝子氏(細田派)ではなく、中曽根康隆氏に軍配をあげた。
 成長と分配、新しい資本主義を掲げてアベノミクスからの修正を目指す岸田氏。自民党第3派閥の竹下派で会長代行を務める茂木敏充元外相を新幹事長に迎え、岸田派・麻生派・竹下派という主要3派で政権運営を安定させたいとの思惑も透けて見える。年末に控える来年度予算案の編成や税制改正大綱の策定、国家安全保障戦略の改定などで「岸田カラー」は打ち出せるのか。寒風が訪れる季節、2人の関係がさらに冷え込むことを不安視する向きは多い。                デイリー新潮取材班編集


安倍元首相が怒り心頭! “天敵”林芳正氏の外相起用で「選挙区争奪戦」への危機感露わ
                          日刊ゲンダイ 2021/11/09
 いま頃、怒りまくっているのではないか――。岸田首相は10日、第2次岸田内閣のスタートに合わせて、林芳正元文科相(60)を外相に任命する方針だ。
 林氏は防衛相や経済財政担当相、農相(2回)を歴任するなど、すでに閣僚経験5回。東大法―ハーバード大大学院という政界屈指の大秀才だ。現在、岸田派の座長、派内ナンバー2のポジションにいる。今回、当選5回を重ねた参院議員を辞職し、衆院山口3区から出馬して当選している。総理総裁を目指しているのは間違いない。
 予想通り、林氏の外相起用に対し、安倍晋三元首相がカンカンになっている。週刊現代によると「党の反対を押し切って強引に鞍替えした人が、いきなりポストを得るのはおかしい」と文句をつけているそうだ。

選挙区がなくなる
 もともと、安倍元首相と林氏は地元山口で親子2代にわたって対立してきた“天敵”同士。嫌いなヤツが外相就任でスポットライトを浴びるだけでも不愉快なのだろうが、このままでは林氏に選挙区を奪われかねないと危機感を強めているらしい。
「山口県内では“林総理”への期待が強く、安倍さんは“過去の人”になりつつあります。今回の選挙でも、安倍さんは地元に張りついてガムシャラに選挙運動をやったのに前回から2万票も減らしている。ややこしいのは、次期衆院選から山口県の選挙区は定数4から定数3に1減になることです。恐らく、林さんの山口3区と安倍さんの山口4区が統合され“新3区”になるはず。安倍VS林の公認争いが勃発するのは間違いない。もし、2人とも無所属になってガチンコで戦ったら林さんの方が強いと思う。次回、安倍さんは選挙区を手放さざるを得なくなる可能性があります」(政界関係者)

岸田首相の「挑発人事」か
 安倍元首相の怒りの矛先は、当然、岸田首相に向かっているはずだ。そのためか一時、林外相を断念し、小野寺五典元防衛相を外相に起用するプランも取り沙汰された。岸田首相は安倍元首相の怒りを十分承知しながら、林氏を外相に就ける判断をしたとみられている。
「どう考えても“林外相”は安倍さんを挑発していますよ。これまでも岸田さんは、<高市幹事長―萩生田官房長官>という安倍さんのリクエストを無視している。ああ見えて岸田さんは、政局に絶対の自信を持っている。なにか狙いがあるのかも知れませんね」(自民党事情通)
 この先、キングメーカーを気取る安倍元首相がどう出てくるのか見ものだ。