政府は12日、新型コロナ感染症対策本部を開き「第6波」に向けた対策の全体像を決定しました。今夏のピーク時と比べて3割増となる約3・7万人分の病床を月内に構築するとし、感染再拡大時の「自宅・宿泊療養者」を約23万人と想定した体制強化などの対策を打ち出しましたが、第5波で多くの在宅死を招いた「原則自宅療養」の方針は撤回しませんでした。
また総選挙中に岸田首相が「しっかり進めていく」と訴えて、無症状の人がPCR検査や抗原検査をする場合の費用が無料になることが期待されていた(フジTV)にもかかわらず、フタを明けてみれば、それは「健康上の理由などによりワクチン接種を受けられない人を対象に限定」されたものでした。これでは「羊頭狗肉」です。
先進諸国でいまや常識となっていることが日本ではどうしても行われません。これでは保健所がPCR検査のストッパーとなった弊害は改まりません。またも厚労省技官の利権絡みと言われる抵抗に屈したのでしょうか。
しんぶん赤旗は、病床削減を進める地域医療構想に固執したままで総じて具体性に乏しいと指摘しています。
また別の佐久間亮氏の署名記事では、保健所の機能強化や病床確保策がことごとく具体性・実効性を欠くなか、妙に生々しいのが最悪の事態で起きるとされる医療制限や行動制限の書きぷりで、「最悪の事象を羅列することが危機への備えと錯覚」しているのではないかと皮肉っています。
二つの記事を紹介します。
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政府がコロナ「第6波」対策 病床3・7万確保いうが削減計画は変わらず
無料検査は対象限定
しんぶん赤旗 2021年11月13日
政府は12日、新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・岸田文雄首相)を首相官邸で開き、「第6波」に向けた対策の全体像を決定しました。病床削減を進める地域医療構想に固執したまま、今夏のピーク時と比べて3割増となる約3・7万人分の病床を月内に構築すると表明。都道府県の推計で、感染再拡大時の「自宅・宿泊療養者」を約23万人と想定した体制強化などの対策を打ち出しましたが、具体性に乏しく、感染防止策も不十分な内容にとどまりました。
感染拡大で医療がひっ迫する「最悪の事態」に至った場合は、コロナ以外の通常医療を制限すると明記。多くの在宅死を招いた「原則自宅療養」の方針は撤回しませんでした。
全体像では、病床を確実に稼働できるよう都道府県と医療機関の間で、病床が対応可能となるまでの期間や、患者を受け入れることができない場合の理由などを明確化した書面を締結することも示されました。感染ピーク時には、病床使用率が8割以上になるようにするとしています。
岸田首相が総選挙中に「しっかり進めていく」と訴えていた無料検査は、健康上の理由などによりワクチン接種を受けられない人を対象に限定。期間は来年3月末までとしました。また、これまでと同様に感染拡大の傾向がみられるときには、無症状者への無料検査ができるよう都道府県に対する支援を継続。一方、職場や学校で行う自主検査への支援策は盛り込みませんでした。PCR検査については、検査体制の縮小につながりかねない診療報酬の引き下げを示唆しました。
12歳未満の子どものワクチン接種は、厚生科学審議会の承認を得た上で接種を開始。追加接種は、2回目接種完了から8カ月以降の希望者全員が12月から開始することが明らかにされました。国産経口治療薬などの開発には、1薬あたり最大約20億円を支援。経口薬は、今年度中に約60万回分を確保するとしています。
最悪の事態へ「真の備え」こそ コロナ「第6波」想定 政府の対策は…
しんぶん赤旗 2021年11月13日
新型コロナウイルスの「第6波」を想定して政府が12日に発表した対策は、冒頭「最悪の事態を想定」したと強調しました。最悪の事態を想定するのは危機管理の鉄則です。しかし対策は、最悪の事態を回避するための努力も、最悪の事態を想定した備えも手も打ち尽くしているとは到底言えない内容です。(佐久間亮)
コロナ病床を確保するための柱は病床使用率の「見える化」や医療機関間の医師や看護師派遣の強化で、普段から人手不足の医療体制そのものを強化するための施策はみえません。検査にいたっては、発熱外来の縮小につながる診療報酬の引き下げを示唆。さらに政府は
1月にも「Go Toキャンペーン」を再開すると報じられています。
保健所の機能強化や病床確保策がことごとく具体性・実効性を欠くなか、妙に生々しいのが最悪の事態で起きるとされる医療制限や行動制限の書きぷりです。最悪時には感染拡大による医療逼迫(ひっぱく)地域ではコロナ以外の通常医療を制限し、手術もできるだけ延期。それでも足りなければ逼迫地域以外でも通常医療を制限するといいます。医療逼迫による悲劇が相次いだこれまでの感染拡大時を振り返れば想定が過剰だとは言えないものの、最悪の事象を羅列することが危機への備えと錯覚しているかのようです。
日本医師会や全国知事会などの批判を受け対策からは記述が削除されたものの、岸田文雄首相はこの間「幽霊病床」という言葉を使って、病院がコロナ患者を積極的に受け入れないことが医療逼迫の原因かのように主張してきました。公衆衛生や社会保障を切り捨ててきた失政がコロナ危機を増幅しているとの反省が決定的に欠けています。
最悪の事態に真に備えるというなら、公衆衛生の要である保健所機能の抜本的強化、医師・看護師の配置基準の引き上げ、医療機関に病床削減や統廃合を迫る地域医療構想の撤回に踏み出すべきです。
新型コロナ対策の全体像のポイント
■感染力が2倍となった匍杏にも対応できる体制を構築
■今夏と比べて3割増の約3・7万人分の入院体制整備
■臨時の医療施設等は4倍弱の約3400人分を確保
■公立公的病院で約2・7万人の入院患者受け入れ増
■ピーク時の自宅・宿泊療養者を約23万人と想定
■医療機関別の病床使用率を12月から毎月公表
■感染力3倍なら強い行動制限を求め通常医療も制限
■来年3月をめどに3回目のワクチン職域接種を開始
■治療薬の開発に1種類当たり最大約20億円を支援
■健康上の理由等での未接種者に3月末まで検査支援
■ワクチン接種証明書のデジタル化、国内利用を推進