共同通信が10月中旬に実施した世論調査では、岸田政権が安倍・菅政権の路線を継承するべきかについて、「転換するべきだ」は69%に達し「継承するべきだ」の27%を大きく上回っていました。しかし衆院選では自民党は若干議席を減らしたものの「絶対安定多数」を確保しました。一体どうなっているのか、です。政権交代は無理にしてもその予兆があるかと期待されたのに、そんな気配も示されませんでした。
野党候補の1本化は、枝野代表のサボタージュにもかかわらす、共産党の犠牲的協力によって289の小選挙区の7割強の213選挙区で出来上がりました。しかしそこで野党候補が勝った選挙区は3割に届かず、多くの接戦区で競り負けました。立民党の事実上のサボタージュが野党の選挙準備に決定的な遅れを生みだしたのは明らかで、真剣さに欠けていた立民党に大きな責任があります。
それだけではなく国民の多くには、民主党政権時代の菅(直人)首相や野田首相の政治姿勢への失望感があります。枝野代表や安住国対委員長がそのころの中心メンバーであるのも、マイナスに作用したと思われます。
日刊ゲンダイが、「真っ当な国民の失望と嘆息 この国では永久に政権交代は起きないのか」とする記事を出しました。
その中で「風頼みの野党では与党に勝てない」との中見出しは立民党への批判です。また「家業政治家にマトモな未来はつくれない」は、ウェーバーが「職業としての政治」で述べている「政治家のあるべき姿」から大きく逸脱している日本の世襲議員を当てこすったものです。
そして「地方組織づくりが政権交代の一歩目」であるとしたのは、文中では明示していませんが、毎回「連合」に「おんぶにだっこ」で選挙戦に臨んでいる立民党への忠告であり叱咤です。
政治評論家の森田実氏は、
「旧民主党政権が2009年に政権交代を実現させた最大の理由は、地道に地方組織をつくってきたからです。~ 野党が本気で勝ちに行く気があるなら、まずは地方にも点在する労組を中心に地方組織をあらためてつくり直すこと。そこから始める以外にありません。~ このままだと最悪、永遠の自公政権になりかねません」
と述べています。立民党は「連合」との関係を根本的に見直すべきです。
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真っ当な国民の失望と嘆息 この国では永久に政権交代は起きないのか
日刊ゲンダイ 2021年11月2日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
共同通信が10月中旬に実施した世論調査の「民意」とは一体、何だったのか。岸田政権が安倍、菅両政権の路線を継承するべきかについて尋ねた質問で、「転換するべきだ」は68・9%に達し、「継承するべきだ」(26・7%)を大きく上回っていたにもかかわらず、10月31日投開票された衆院選の結果を見る限り、世論調査とは正反対の結果に終わった。
有権者の「反骨心」が辛うじて感じられたのは、自民の甘利幹事長(神奈川13区)と石原元幹事長(東京8区)が小選挙区で落選したぐらい。
1日朝のフジテレビ番組で、自民の遠藤選対委員長は「単独過半数(233)も難しいと思っていた。本当にうれしい」と驚きを隠せなかったが、終わってみれば自民は公示前から15議席減らしたとはいえ単独過半数が危ういどころか、常任委員会の委員長ポスト独占や他の委員会の過半数を確保でき、予算案や各法案を主導的に進めることができる「絶対安定多数」(261議席)を単独で得たから唖然呆然だ。
「風頼み」の野党では与党に勝てない
自民、公明両党の幹事長は1日午前、国会内で会談し、特別国会を10日に召集する方針を確認。
衆参両院本会議で首相指名選挙を行い、第101代首相に指名される見通しの岸田首相が第2次内閣を発足させる流れだ。第1次内閣発足から1カ月しか経っていないため、岸田は閣僚を再任するとみられる。
それにしても、不甲斐なかったのは野党だ。立民、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の5党は「政権交代」を掲げ、衆院選では初めての候補者一本化に踏み切った。
289の小選挙区のうち、実に7割強の213選挙区で「与野党一騎打ち」の構図をつくったものの、このうち、野党候補が勝った選挙区は3割に届かず、多くの接戦区で競り負けた。惨敗したと言っていいのが立憲だろう。
立憲は140議席の獲得目標を掲げていたが、結局、公示前の110議席にも届かず96議席に。枝野代表は開票速報を伝えるテレビ番組に出演した際、「自民が強い選挙区でも接戦に持ち込めた。一定の効果と思っている」なんてのんきなことを言っていたが、野党第1党が公示前議席を割り込む状況について「一定の効果」なんて言っているようでは、とてもじゃないが「政権交代」など夢のまた夢だろう。
立憲などの野党はなぜ、議席を減らしたのか。自民に近しい「ゆ党」と言われる日本維新の会はなぜ、議席を公示前(11議席)から3倍以上(41議席)に増やし、「漁夫の利を得る」ことができたのか。自民があまり負けなかった理由は何か。
今こそ、野党は真っ当な国民の失望と嘆息を真正面から受け止め、きちんと敗因を分析しなければ来夏の参院選でもまた同じ失敗を繰り返すだろう。「負けちゃったけど、頑張ったよね」なんて傷をなめ合っているような甘ちゃんでは、狡猾な自公政権を負かすことは不可能だ。
福田赳夫元首相の秘書を務めた中原義正氏がこう言う。
「『政権交代』というのは内政、外交を含めて、この国の政治に政党、所属議員がすべての責任を持つ強い信念を持つということ。国民に痛みを伴う政策も言わなければならないし、当然、自分たちが率先して身を削ることも必要だ。その覚悟が立憲などの野党にあるのかと言えば、本気度が見えない。それが有権者に見透かされてしまったのだろう。選挙のたびに『風頼み』では勝てるはずがない。地道に選挙区を回り、有権者の声を聞く。自民候補はなんだかんだといっても地域行事などにも顔を出しており、その差が競り負けた敗因と言っていい」
地方組織づくりが政権交代の一歩目
「責任政党として、国民の負託に応える」「岸田政権の下で未来をつくり上げてほしいという民意が示された」
衆院選の結果を受けた会見で、岸田はこう言っていたが、冗談ではない。また「嘘八百」と「ゴマカシ」「利権ファースト」の自公政治が続くのかと思うとクラクラしてしまう。
国会答弁で118回も虚偽答弁し、公文書の改ざん、隠蔽、廃棄もへっちゃら。自分の言う事を聞く取り巻きや官僚だけを厚遇し、正論を言うと左遷で報復という恐怖人事を「権力」と勘違い。国民はそんな安倍・菅デタラメ政治からの転換を求めていたはず。悪行の限りを尽くした渦中の安倍、菅は本来であれば、選挙ではイの一番に落選するべきなのに、なぜか小選挙区では楽ちん当選だからワケが分からない。
自分で自分の首を絞める事態に陥りかねない状況にもかかわらず、投票用紙に盲目的に安倍、菅の名前を書き込む有権者は一体、何を考えているのか。岸田が「つくり上げる」と訴える日本の「未来」にどんな将来像を描いているのか。
喉元過ぎれば何とやらではないが、この国の国民はすぐに忘れてしまう。とりわけ、“票目当て”ともいうべき露骨なバラマキ合戦にはめっぽう弱い。「実行力を持っているのは政権与党」「政府とのパイプがあるのは与党」といった嘘つき与党の口車にコロッとだまされてハイ一丁上がりだ。
家業政治家にマトモな未来はつくれない
かくして世にも奇怪な勝者なき自民党政治の継続という最悪の展開となったわけだが、このままでは、この国では永久に政権交代が起こらないだろう。だが、それでいいのかといえば、いいわけがない。
どれだけ悪辣な政治を繰り返しても、最後は与党の利権がモノをいうのであれば、民主主義もヘッタクレもないからだ。
「どうせ何も変わらない」と傍観していた結果、この国の政治家は今や一大「家業」だ。今選挙で、父母や義父母、祖父母のいずれかが国会議員、または3親等内の親族に国会議員がいて同一選挙区から出馬した候補を「世襲」と定義すると、「世襲」当選者は全当選者の23・2%を占める108人。政党別では、最多は自民党の87人で、実に当選者の3分の1が「世襲」だ。
立憲と共産の選挙協力に対し、一部メディアやしたり顔の評論家は「共産主義になる」などと批判していたが、安倍を筆頭に、与党国会議員の多くが「家業」「世襲」となっている状況の方がよっぽど深刻、異常だろう。
どんなデタラメをやっても、どんなにオツムが弱くても血税をたんまりもらい、好き勝手に使いたい放題。そんな愚鈍な「家業政治家」たちにマトモな「未来」がつくれるはずもない。だから、政権交代が必要なのだ。
政治評論家の森田実氏がこう言う。
「旧民主党政権が2009年に政権交代を実現させた最大の理由は、地道に地方組織をつくってきたからです。しかし今、野党の地方組織が育っているのかといえばいないでしょう。これでは地方で野党候補が勝てるはずがありません。野党が本気で勝ちに行く気があるなら、まずは地方にも点在する労組を中心に地方組織をあらためてつくり直すこと。そこから始める以外にありません。立憲であれば国民民主、連合などに結集を呼び掛ける。多数派工作する以外に勝つ方法はないのです。このままだと最悪、永遠の自公政権になりかねません」
野党は来夏の参院選に向けて早急に態勢を整えるしかない。