沖縄大学教授の高良沙哉さんは、安保3文書の中で書かれている国民保護について、海に囲まれた沖縄での避難は非常に困難で、石垣島で農業や畜産をやっている人たちはこれまで育ててきた牛や作物を放って自分たちだけが逃げることはできないと言うなど、沖縄での住民保護は非現実的な話だと受け止められていると語りました。
そして戦時中は軍事性暴力が非常に多く、戦後も人々の人生に多大な影響を及ぼし続けたことから、政府が人々の住む地域を戦場にしても良いと考えているなら、これほど非人道的なことはないと述べました。
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岸田大軍拡異議あり 沖縄軍事日常化に危機感
沖縄大学教授(憲法学) 高良 沙哉(たから さちか)さん
しんぶん赤旗 2023年4月4日
与那国島で沿岸監視隊が配備された2016年頃から、徐々に危機感が高まっていました。 ただ、軍拡の危機感が沖縄全体に広がったのは、安保3文書の改定以降だと思います。
大軍拡の問題は、戦争によって生活と命が脅かされる危機感だけではありません。訓練激化による騒音などの影響に加え、軍事に関係するものが、住民の生活の中でも日常的に目撃されるなど、目に見えた変化が起きるはずです。
日本の憲法はそもそも軍事力を否定しているはずなのに、生活の中に軍事の姿が当然のように浸透してしまうことは、国民が軍車力を監視し、警戒することをできなくさせてしまう危険を感じます。
安保3文書の中で書かれている国民保護についても、沖縄では非現実的な話だと受け止められています。戦争になったとき、海に囲まれた沖縄での避難は非常に困難です。
石垣島で農業や畜産をやっている人たちに話を聞くと、これまで育ててきた牛や作物を放って自分たちだけが逃げることはできないといいます。物理的な避難の困難さに加えて生活に根ざした問題があるのが現実です。
沖縄戦の教訓をみれば、戦場で軍人と民間人が入り乱れるような状態になってしまうと、被害は甚大になります。戦時中は軍事性暴力が非常に多く、戦後も人々の人生に多大な影響を及ぼし続けてきました。政府が人々の住む地域を戦場にしても良いと考えているなら、こんな非人道的なことはありません。
日本は軍事力を持だないと明記した憲法を持っています。対立をあおるのではなく、憲法を生かし、日本の非軍事的な存在意義を他の国々に示す外交をしていくべきです。
日中平和友好条約を起点に中国との関係を考えていくなど、日本がやるべき課題は多々あります。ただ、いまの政治をつくり出したのは、私たち国民一人ひとりでもあります。戦争を回避するために、私たち自身の行動も問われていると思います。 (聞き手 田中智己)