2023年4月15日土曜日

Jアラート精度の低さ 改めて問われる「敵基地攻撃能力保有」の危うさ

 13日、北朝鮮が発射したICBM級のミサイルが北海道に落下するとして、政府は大々的にJアラートを発出しました。しかし日本の領土はおろか経済的排他水域にも落下しませんでした(どこに落ちたのかは不明)。

 Jアラートの不正確さや遅さは今に始まったことではありませんが一向に改善される気配はありません。Jアラートはもはや「オオカミ少年」になっています。
 かつては発射されたミサイルが地平線に隠れている間はレーダーでキャッチできないというようなまことしやかな説明がされていましたが、北朝鮮のミサイルは少なくとも数十秒後には超高度に達しているのでそんな言い訳は通用しません。
 「途中でレーダーから消えた」という説明もあったようですが、高空に飛翔したミサイルが落下ではなく「消失」したというのは空中爆発を起こしたということでしょうか。政府の説明では一向に疑念は晴れません。
 しかしこんな体たらくで敵基地攻撃能力の保有「不可欠」などよく言えるものです。
 日刊ゲンダイが「 ~ 改めて問われる『敵基地攻撃能力保有』の危うさ」という記事を出しました。
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“赤っ恥”Jアラート精度の低さ浮き彫り…改めて問われる「敵基地攻撃能力保有」の危うさ
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「国民の安全確保を最優先にする観点から発出した。Jアラートの役割を考えれば適切だった」──。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級とみられるミサイル発射を受け、岸田首相は13日、国民に避難を呼びかけたJアラートの発出について、そう強調した。日本の領域内に落下しなかったのは幸いだが、改めて浮き彫りとなったのは、岸田首相が前のめりで進めた「敵基地攻撃能力」保有の危うさだ。
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 政府は13日、ミサイル発射から30分以上が経った午前7時55分に、「北海道周辺へのミサイル落下」があるとしてJアラートを発出。当初は「北海道南西部の陸地に落下する恐れがある」と推定していたという。日本の領土・領海への落下予測が発信されたのは今回が初めてだ。
 政府は結局、北海道周辺へ落下する可能性はないと“訂正”。日本の排他的経済水域にも飛来しなかった。
 結果的に“大外れ”だったわけで、Jアラートの直撃を受けた通勤・通学者はたまったもんじゃない。札幌市営地下鉄で約5万5000人、JR北海道でも在来線と新幹線あわせて1万人以上に影響が及んだ。
 Jアラートが出されるたびに「またか」「慣れてしまう」といった声が漏れるのも無理はない。昨年11月、政府は北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、宮城、山形、新潟の3県にアラートを発出。発信時間は日本上空を通過する予想時刻よりも2分遅れ、しかも上空を通過しなかった。
 そして、今回の騒ぎだ。Jアラートはもはや、“オオカミ少年”になっている

精度が伴わなければ、ますます“オオカミ少年”に
 松野官房長官は13日発射されたミサイルについて「探知の直後、レーダーから消失した」「限られた情報の中でシステムが航跡を生成したため、国民の安全を最優先する観点からJアラートを発出した」と説明。「国民の命を最優先」にアラートを発出したという言い分は、まだ理解できる。だが、「探知直後にレーダーから消失」とは何事か。領域内に飛来しなくてよかったね、では済まされない話だ。軍事ジャーナリストの世良光弘氏がこう言う。
「多段式の弾道ミサイルは発射後から加速していきます。上に投げたボールは慣性が働いているので落下地点を予測しやすいが、加速するミサイルは落下地点が刻々と変化します。防衛省は発射直後に落下地点を予測したものの、その後の変化を追いきれなかったのではないか。今回は、通常のロフテッド軌道とは異なるともいわれているので、そもそも落下地点や軌道を予測しづらかった可能性がある。いずれにしても、Jアラートは早く出せばいいというものではなく、精度が伴わなければ、ますます“オオカミ少年”になってしまいます」

 政府は昨年11月時点で「(Jアラートの)システム改修も含めた改善策を検討している」(松野官房長官)との姿勢を見せていたが、改善どころか“失敗”の繰り返し。この体たらくでありながら、岸田首相は敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を「不可欠」と強調するなど、勇ましい。
「反撃能力に基づき第一撃に対する報復措置を行うとしても、相手が攻撃に着手した段階を察知できるのかどうか。北朝鮮のミサイル格納施設は地下に隠されているし、移動式トレーラーで発射台を移動できる。場所を特定したとしても、万が一、発射予測を外したら先制攻撃になります。政府は反撃能力の行使基準を示していませんが、具体性に欠ける議論が抑止力につながるとは思えません」(世良光弘氏)
 Jアラートの精度すら上げられないのに、反撃能力保有なんて言っている場合じゃない。