2023年4月5日水曜日

アメポチでは日本国民を守れない(植草一秀氏)

 タイトルの意味は、「政府がアメリカの飼犬になっていては日本国民は守れない」という岸田首相への警告です。岸田氏は「ウクライナは明日の東アジアかも知れない」を大軍拡を実行する上でまたとないスローガンになると考えて多用していますが、それはウクライナ戦争がどんな経緯で始まったのかについての無知に基くものです。

 開戦に至った経緯については植草一秀氏が繰り返し述べている通りで、ウクライナ戦争の責任は米国が負うべきものです。戦乱創出した米国軍産複合体はいまこの戦争によって莫大な利益を得ていて、ゼレンスキーが停戦に傾こうとする度にそれを禁じてきた経緯がありました。
 岸田氏は、ロシアを敵国とするNATO軍事同盟をあたかも至高の組織と思い込んでいて、ことある毎に中国やロシアの脅威を煽り敵視する発言を憚りませんが、そうした姿勢こそが日本を危機に導くものです。
 いま極東において火種とされるのが台湾」ですが、それを煽っているのが他ならない米国であり、それを丸呑みして同調しているのが岸田首相です。そもそも「台湾有事」というのは、中国のGDPが米国を追い越すのを25年と想定した米国が、その前に中国を叩く必要があるとして米中戦争を始める口実として編み出したもので、火のないところに煙を立たせたのでした。
 「台湾有事」があるとすれば、それは米国が策動して「台湾独立運動」を起こし、中国政府がその制止に介入せざるを得なくなった場合であり、それを口実に米中戦争⇒日中戦争を引き起こそうとするものです。もしもそうなれば日本は火の海となって決定的に破壊されます。

 植草氏は文中で、筑波大学名誉教授で中国問題に極めて造詣が深い遠藤誉氏の論考馬英九訪中vs.蔡英文訪米の中、台湾民意米台友好は必ずしも台湾にいいわけではないURL)を紹介しています。興味深い内容なので同記事を別掲します。
 著者の遠藤氏はその中で台湾人は目覚めている。日本人よりも、よほど賢い」と評価し、台湾の民意調査は、「アメリカが常に世界のナンバー・ワンであるために、何としても台頭する中国を潰そうとし、その目的を達成するために関係国を巻き込んで軍事力を発揮するのは人命を奪うばかりで警戒しなければならない」ことを、日本に教えてくれると述べています

 併せてケイトリン・ジョンストンの記事「何としてもアメリカが世界の『リーダー』だと人々に思わせたいアメリカ当局」を紹介します。
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アメポチでは日本国民を守れない
                 植草一秀の「知られざる真実」 2023年4月 2日
ウクライナでの戦乱発生に伴い、同様の戦乱が極東で発生するとの警戒感が煽られてきた。
岸田内閣は戦争体制への移行を加速させている。
沖縄から台湾に至る南西諸島において自衛隊と米軍による戦争遂行体制の構築が推進されている。安倍元首相に至っては「台湾有事は日本有事」の発言まで示していた。
たしかにウクライナで発生したような戦乱が極東地域で発生する恐れはある。しかし、その戦乱はウクライナの戦乱同様に、本来は回避可能なもの。

しかし、ウクライナでは戦乱が勃発した。その原因を明らかにしておくことが重要だ。
結論を示すなら、ウクライナでの戦乱「創作」を主導したのは米国である。
米国がなぜウクライナ戦乱を「創作」したのか。理由は単純明快だ。戦乱創出が米国軍産複合体の利益になるからである。
同じ背景で極東において戦乱が創作される危険が存在する。
しかし、これもウクライナ戦乱同様、本来は回避可能な戦乱である。
ウクライナでは回避可能であるにもかかわらず、戦乱が創作された。
同様に、極東においても、回避可能な戦乱が創作される危険がある。
私たちは、ウクライナの二の舞を演じずに、戦乱発生を回避しなければならない。

ウクライナの戦乱が回避可能であったというのは、ウクライナ内戦を収束するための枠組みが確定していたからである。
2015年にミンスク2が制定された。ウクライナと東部ドネツク、ルガンスク両地域の間で内戦収束のための枠組みが決定された。
ミンスク2はロシア、ドイツ、フランスがオブザーバーとして加わり、決定事項は国連安保理でも決議された。国際法の地位を獲得している
内容の中核はドネツク・ルガンスク両地域に高度の自治権を付与するというもの。
これが確保されればウクライナのNATO加盟は消滅する。この内容で合意が成立した。

ウクライナ政府がこの合意を誠実に履行していれば昨年来の戦乱は発生していない。
2019年4月の大統領選でゼレンスキーはミンスク合意履行による東部和平確定を公約に掲げた。
ゼレンスキーは大統領就任後にミンスク合意を履行する姿勢を示したが、ウクライナ民族主義者が強く反発した。
ゼレンスキーは民族主義者の脅しに屈し、ミンスク合意履行方針を撤回した。

このタイミングで米国においてバイデン大統領が誕生した。
バイデン政権はウクライナの対ロシア軍事対決路線を誘導した。
米国、ウクライナの挑発によってロシア特別軍事作戦が誘発された。

極東において火種とされるのが台湾だ。台湾と中国との緊張が高まり、軍事作戦が展開されることが警戒されている。
米国は台湾と中国の緊張関係を高めることに注力している。そのエスカレーションの延長線上に軍事衝突勃発が生み出される危険がある。
ウクライナと同様の手口が用いられるリスクが存在している。

渦中の台湾において、人々はどのような意識を有しているのか。
この点に関して、極めて示唆に富む論考が示されている。
筑波大学名誉教授であり、中国問題に極めて造詣が深い遠藤誉氏の論考だ。
馬英九訪中vs.蔡英文訪米の中、台湾民意「米台友好は必ずしも台湾にいいわけではない」 https://bit.ly/40yFSZ3 
遠藤氏は台湾の財団法人「台湾民意基金会」が本年3月13-14日に実施した「2023年3月国際情勢・政党競争と2024年総統選」というタイトルの民意調査を紹介している。
この調査に台湾市民の現状判断が集約して示されている。

台湾市民は極めて冷静である。
一言で要約するなら、米国が主導する台湾と中国との関係悪化工作を台湾市民は批判的に見つめているということ。台湾有事=台湾における戦乱勃発を台湾市民は望んでいない。
同時に台湾市民は、仮にそのような戦乱が勃発する場合、その戦乱は米国が米国の利益のために創出するものであるとの本質を、冷徹に見抜いている

日本は米国のポチで、米国の意のままに操られている。
米国に操られる日本の終着点は日本の地獄である。
私たち日本国民も少しは冷徹な透徹眼を保持できるようにならないといけない。

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             (以下は有料ブログのため非公開)


何としてもアメリカが世界の「リーダー」だと人々に思わせたいアメリカ当局
                マスコミに載らない海外記事 2023年4月 3日
                 ケイトリン・ジョンストン 2023年3月23日
 月曜日の記者会見で習近平とウラジーミル・プーチンが中国とロシアの戦略的パートナーシップ「新時代」を固めたという質問に答えて、ホワイトハウス国家安全保障会議のジョン・カービー報道官はアメリカが世界の「リーダー」だと七項目にわたり主張した

 彼の発言抜粋は下記のとおり。
「両国はより緊密になった。しかし両国はどちらも世界中のアメリカ指導力を非難して苛立っている。」
「そして特に中国の場合、彼らは確実に世界中のアメリカの指導力に挑戦したいと考えている。」
「しかし、この二国々は何十年にもわたる協力の経験や完全な信頼や自信を持っていない。彼らは最近急成長して、世界中でアメリカの指導力が高まっていることに対し、それを抑制しようとしている。」
「ピーター、私がジェフに言った通り両国は長年苛立っているのだ。世界中のアメリカの指導力や我々が持っている同盟や提携関係ネットワークに長年不満を抱いている。」
「そして我々は一つずつ、これらの関係に取り組んでいる。大陸の全ての国は異なり、アメリカの指導力に対し様々なニーズと異なる期待を持っているためだ。」
「それが各国をまとめるアメリカの指導力だ。そしてロシアにも中国にもその力はない。」
「だが両国関係が緊密になっている理由の一つは彼らがしようとしていることに対する国際的支援の強力な基盤がないのを彼らが認識しているためで、これは基本的に世界中のアメリカ指導力への挑戦だ。」

 真実的錯覚というのは、人間の脳が情報を受け取り解釈する方法が、繰り返しと、真実とを、ほとんど、または、全く区別しない傾向があるため、人は何度も聞いたことを確立した事実と間違える原因ゆえの認知の偏りだ。プロパガンダや帝国支配者は我々人間の頭脳のこの不具合を利用することがよくあるが、それが人々に信じさせたい主要な言葉を何度も繰り返しているのを見る理由だ。
 最近アメリカ商工会議所が主催したオンライン会議で、駐中国アメリカ大使が、北京は中国がたまたま占領している地域の「指導者」としてアメリカを受け入れなければならないと主張した。
 アメリカ帝国の支配者連中は、自分たちが当然世界の「指導者」だという主張に非常に断定的になっているのは自称「指導力」が中国やロシアのように益々開放度を増している国を支持する国々に挑戦されているためだ。最近の主要国際ニュースのほとんどは直接か間接にこの動きに関連しており、中国の台頭を阻止し、中国の同盟諸国を弱体化させ、一極世界支配を確保するのにアメリカは苦労している
 連中が発信するメッセージは「ここは我々の世界だ。我々が支配しているのだ。そうでないと主張する人は誰であれ気まぐれで異常であり、対峙しなければならない。」

とにかく、なぜ彼らはアメリカが世界の「支配者」ではなく「指導者」だと言うのだろう? 実際両者の違いは私には分からない。アメリカは民主的投票によって世界を支配しているという印象を我々に与えたいと考えているのだろうか? これに世界の国々が同意しているのだろうか? 私はそれに投票した記憶が皆無なのは確かで、アメリカの「指導力」に従わない政権に何が起きるか我々全員見てきたのだ。

 私は多極世界が素晴らしいものになると信じているわけではなく、グローバル支配を維持するため益々無謀な核の瀬戸際政策を完全に打ち破る代替案だと認識しているに過ぎない。アメリカはアメリカが支配する世界秩序は絶え間ない暴力と攻撃によってのみ維持できるのを明確にするのに十分な期間支配しており、その暴力と攻撃は、益々主要核保有国に向けられている。事実は明白、一件落着だ。アメリカの一極覇権は持続不可能だ。
 問題はアメリカ帝国自体がこれを理解していないことだ。我々が核時代の世界大戦に向かって進んでいる、この恐ろしい路線は、多極世界秩序の台頭に対し、どんな代償を払っても一極支配を維持しなければならないという帝国教義の結果だ

 こんな状況である必要などない。アメリカが世界を支配し続ける必要があり、昔のように様々な地域の様々な人々が自分の問題を解決できない正当な理由などない。各国政府が全人類の利益のため平和的に協力するのではなくハルマゲドン兵器を互いに振り回す必要がある正当な理由などない。我々は「世界に対するアメリカの指導力」を維持するため災厄に追いやられているが、私はこんなことに同意しない一人だ。
              (中 略)
記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2023/03/23/us-officials-really-really-want-you-to-know-the-us-is-the-worlds-leader/