米空母艦載機着陸訓練地移転に伴う馬毛島での自衛隊基地建設工事の整備費が、①滑走路等 ②係留施設等 ③仮設桟橋-の新設工事で、当初国交省が見積もった概算金額はそれぞれ ①約350億円、②約1700億円、③約600億円だったのに対して、業者からの最終見積額は、①約910億円(2・6倍)、②約2200億円(1・3倍)、③約840億円(1・4倍)と、契約金額の最大2・6倍に激増していることが赤旗日曜版編集部の調べなどで分りました。
国交省は土木事業の専門部署なので概算見積もりの場合でもキチンと積算用図面を引き、土木数量(掘削、残土処分、コンクリート、鉄筋、型枠…等の所要量)を求め、それに各地に適応した単価(一位代価表)を掛けるなどして見積もるので、上記のような大幅な「誤差」を生じることはありません。
増額のカラクリは、防衛省が上記の3施設の施工業者選定で採用したECI方式(「技術提案・交渉方式」=技術協力・施工タイプ)という発注方式にあり、土木工事についての知識がない防衛省がゼネコンに手玉に取られた結果に他なりません。国の予算が投じられるのですから土木工事についての知識を持った部署の査定を受けさせるべきです。
防衛省は今後5年間で約4兆円を投じる全国約300の自衛隊施設の強靭化事業を行いますが、そこでもこのECI方式での発注を検討しているということです。識者はそれではゼネコンに操られて青天井の支出になると警告しています。
併せてしんぶん赤旗の記事「15億円 岸田内閣の官房機密費 領収書不要97% ~ 」を紹介します。ここでもデタラメが行われています。
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馬毛島自衛隊基地建設 工事費最大最大2・6倍
激増のカラクリは 技術提案で事業者選び 上限決めずに価格交渉
しんぶん赤旗日曜版 2023年4月2日号
当初の見込み額の最大2・6倍 ー 。米空母艦載機着陸訓練(FCLP)移転に伴う馬毛島(鹿児島県西之表市)での自衛隊基地建設工事の整備費が激増していることが編集部の調べなどで分りました。主要大規模工事の契約の際、価格の上限がない特殊な随意契約で発注されているため。今後5年間で4兆円を投じる全国約300の自衛隊施設の強靭(きょうじん)化事業でも防衛省がこの発注方式を検討しています。 藤川良太記者
「馬毛島では青天井でカネが出る」。ゼネコン関係者が驚くようなことを口にしました。 岸田政権は住民の反対もかえりみず、馬毛島の自衛隊基地建設工事を強行しています。施設整備費は2022年度当初予算で3183億円を計上。同年度第2次補正予算で1441億円を積み増し、23年度予算でも3030億円を盛り込みました。22年度当初予算から2・4倍の総額7654億円に膨れ上がっています。しかし総事業費を防衛省は公表していません。
整備費膨張の大きな要因となっているのが①滑走路等 ②係留施設等 ③仮設桟橋-の新設・築造工事です。
日本共産党の田村貴昭衆院議員の調査と編集部の取材で、この3施設の整備費がいずれも当初の見込み額から激増していることがわかりました。
3施設は、防衛省ではなく国土交通省が発注。国交省は発注にあたり事業規模を示す参考額(見込み額)を設定しました。滑走路等は約350億円(アスファルトなど材料費は合まず)、係留施設等が約1700億円、仮設桟橋が約600億円です。
しかし、3施設の整備費の最終見積額は、滑走路等が約910億円(2・6倍)、係留施設等が約2200億円(1・3倍)、仮設桟橋で約840億円(I・4倍)に膨れ上がりました。
文教費と桁違い
23年度予算の文教費の増加順はわずか約103億円です。
他方、馬毛島の3施設は、増額分だけで1300億円。貧しい文教費とは対照的です。
増額のカラクリは、3施設の施工業者選定で採用されたECI方式(「技術提案・交渉方式」=技術協力・施工タイプ)という発注方式にありました。
防衛省側が「自衛隊施設の強靭化に向けて」の意見交換会で行ったアンケート。ゼネコンが一番多く「望ましい」と回答した入札・契約方式が、このECI方式でした。どのような仕組みなのか ー 。
最大の特徴は、工事契約価格に上限がなく青天井だという点です。
公共工事の発注方式で一般的な競争入札の場合、役所などの発注者は事前に上限となる予定価格を設定します。価格競争の結果、受注した業者は予定価格以下で工事契約しなければなりません。
一方、ECI方式は施工する業者が設計段階から関与します。まず技術提案を公募・審査し、選ぱれた業者と設計への技術協力業務を契約。その後、価格交渉で合意すれば、随意契約で工事契約を結びます。予定価格が決まるのは価格交渉の後。交渉時には予定価格という上限がないため、工事の価格は青天井となります。
米軍の都合優先
施設整備に携わっていた防衛省関係者は話します。「海洋土木は業者側が強く、業者にこの値段だと言われれば納得するしかない。馬毛島は米軍の空母艦載機離着陸訓練が絡んでいる。急いで作ることを優先にした結果だろう」
ゼネコン関係者は「最終の見積もり額が、当初見込みの2・6倍になるなんて、普通の工事ではありえないことだ」と語ります。「予定価格もなく、競争もなく、話し合いで価格を決めるのだから、これほどゼネコンにとってありがたい発注方式はない。国交省の中でも、こんなやり方はおかしいとの声があがっていると聞いている」
全国283の「強靭化」でも同じ方法検討
馬毛島の基地建設で建設費増大を招いているECI方式。今後5年間で約4兆円を投じる全国283地区もの自衛隊施設の強靭化に青天井の同方式が採用されれば、当初の想定額をはるかに上回る血税が注ぎ込まれるのは必至。ゼネコン関係者は明かします。「ダムなどの巨大公共工事が減る中、5年間で43兆円の防衛費は巨大利権だ。防衛省は建設のことを知らないからゼネコンの言いなりだ」
15億円 岸田内閣の官房機密費 領収書不要97%
“使途秘匿金”が増加 情報公開請求で本紙が資料入手
しんぶん赤旗 2023年4月2日
野放図な軍備拡大を進める岸田文雄内閣が2021年10月に発足してから昨年末までの1年3カ月間に15億4200万円超の内閣官房機密費(報償費)を支出したことが分かりました。このうち14億9590万円(97%)は、松野博一官房長官が自由に使える領収書不要の「政策推進費」でした。松野氏への配分は、前任の加藤勝信厚生労働相や菅義偉前首相を上回っています。(矢野昌弘)
本紙が情報公開請求で入手した資料で判明しました。
機密費は国民の税金にもかかわらず、支出先を会計検査院にも明らかにしない“使途秘匿金”です。
機密費には、3類型があります(図参照)。このうち「政策推進費」は、官房長官に渡した時点で“支出完了”となります。松野氏しか使い道を知らないヤミ金中のヤミ金です。
岸田内閣が21年10月4日に発足し、官房長官となった松野氏は、前任の加藤氏が残した「政策推進費」8000万円を同月中に使い切っていました。
松野氏が22年12月末までに、「政策推進費」で支出した機密費は、加藤氏の使い残し分と合わせて14億9590万円となっています。
機密費のうち松野氏に渡った「政策推進費」の割合は97%です。これは加藤氏(菅内閣)の95・5%、菅氏(第2次安倍内閣)の90・9%をしのぐ高さです。
機密費は「内政、外交を、円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費」とされています。あくまで「機動的」な支出です。使い切らなければならないお金ではありません。
政治資金の問題に詳しい浦野広明税理士は「支出先が明らかではないものは、税務の世界では、支出する本人の所得になる。官房長官が支出したとされているが、自分の懐に入れたかどうかも明らかにできないのはおかしい。国民に説明できない支出は違法だ。国民が監視を強めないといけないし、問題にしていく世論づくりが必要だ」と指摘します。