2023年4月17日月曜日

日本海に・・北朝鮮ICBMの捕捉に常に失敗する理由と真相(世に倦む日々)

 13日の「Jアラート騒動」は、政府に対する大いなる怒りを呼び起こしましたが、いまだにその詳細はあきらかになっていません(Jアラートは7回目とのこと)。
  *  Jアラート精度の低さ 改めて問われる「敵基地攻撃能力保有」の危うさ
 TVの解説では、専門家によって「上空3000mを超えるとレーダーから消える」などの説明があったようですが、もしもそうであるなら「ミサイル防衛システム」はこの上ない役立たずということになるので今後一切手を引くべきです。憲法違反の「敵基地攻撃能力の保有」どころに騒ぎではありません。
 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 その最後の部分で「一体、ミサイル防衛の導入整備に自衛隊は何兆円使ってきたのかすでに16年の段階で2兆円に達している(共産党宮本徹議員の質問)。2兆円投じたミサイル防衛システムで、レーダーから消えた』『落下地点は不明だのと言い、毎回予測を間違えて誤報を出しまくっている。 世界の前でどれだけ大恥を搔き、日本国の面目を失っていることか(要旨)」と述べています
 そして「北朝鮮からすれば、アメリカを攻撃するICBMのロフテッド実験をしているのに、何で無関係の日本が毎度空襲警報を出して大騒ぎするのだろうという珍妙な図だろう」とも述べています(メルカトール図法の地図では分かりにくいものの北朝鮮~米本土間の最短コースは北海道上空を通過する経路。北海道を標的になどしていない)。
 世に倦む日々氏は、ミサイル防衛を担うJADGEは航空自衛隊の管轄であるもののそれが使い物にならないので、イージス艦のレーダーに頼るしかないところに、米軍の要求などでたまたま2隻とも南方の海域にいたため、レーダー追跡が途中で出来なくなったと推測しています。それが唯一納得できる説明のように思われます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本海に海自イージス艦がいなかった北朝鮮ICBMの捕捉に常に失敗する理由と真相
                        世に倦む日日 2023年4月15日
大陸から飛来した黄砂が列島の空を覆い、村上春樹の久々の長編新作が店頭に並んだ4月13日、北朝鮮のミサイル発射実験によってJアラートが出され、それによってまた大騒動する一日となった。北朝鮮のミサイルでJアラートを発出するのは7度目らしいが、今回も含めて最近の3度は全て探知と捕捉に失敗し、間違った情報を流しては修正し、国民生活を無用に混乱させ、市民社会に迷惑をかけている。結論を先に言えば、今回の問題は次の二点に総括される。第一は、発出する必要のない煽り目的のJアラートだったということ。第二は、自衛隊がまともに対北朝鮮ミサイル防衛の警戒監視をしておらず、ミサイルの捕捉追尾と弾道計算ができていなかったという点である。昨年以来、続けて3度も軌道予測に失敗している。どう考えても異常で何かがおかしい

今回、関係者がどんな言い訳をするだろう、マスコミがどう釈明するだろうと神経を集中させてテレビ報道を注視した。マスコミが流す「解説」の中に、辻褄合わせの矛盾と破綻があり、真相が見え隠れする。前回の昨年11月3日に起きた「日本列島を飛び越えて1000キロ先の太平洋上に落下」の誤報のとき、私は『JADGEシステムが使われていない疑惑(⇒JADGEシステムが使われてない疑惑 - 北朝鮮ミサイル誤探知の謎を解くの記事を書き、謎解きの分析と推理を示して問題提起を上げた。正直に言って自信作であり、昨年書いた中で佳作の一つだと自負している。だが、批判・反論を含めて全く反響を呼ばず、誰からも注目と評価を受けなかった。拍子抜けさせられた。15年前のブログ環境だったら、1日2万アクセスの読者を集め、ネット空間で話題になり、多くの意見・感想が書き込まれただろうと想像する。日本人の社会的な知的関心レベルはすっかり劣化し砂漠化した。

前回、私は、JADGEが運用されておらず、経ヶ岬の米軍レーダー基地が捕捉と計算を間違って日本側に伝えたのだと推断した。その根拠として、TBSのサンデーモーニングが提示したフリップに、レーダーサイトの地点を丹後半島に示した地図が描かれていた事実を指摘した。JADGEのレーダーシステムで探知解析したのなら空自の基地が地図にプロットされなくてはならない。ミサイル防衛を担うJADGEは航空自衛隊の管轄で、警戒管制の主任務は空自部隊なのだ。今回、13日夜に元海将の伊藤俊幸が生出演したNHK-NW9では、解説パネルの地図に空自のレーダー基地が点々と13ヵ所描かれていて、経ヶ岬1ヵ所ではなかった。そして「JADGE」という単語も一応紹介された。覚えておられるだろうか。前回、11月3日の事件の際、マスコミは一言も「JADGE」を報道に載せず、その存在を説明しなかったことを。

JADGEは機能していない。今回あらためて確信した。もともと対北朝鮮ミサイル防衛は空自の主担であり、JADGEをオペレーションするのは空自である。だから、Jアラート問題を含めた対北朝鮮ミサイル防衛に関してマスコミに登場するのも、本来なら空自の大物OBでなくてはいけない。だが、空自元幹部はこの方面の問題で一度もテレビに出ることなく、香田洋二や伊藤俊幸が、つまりは海自の重鎮OBが広報説明の役割を専らにしている。これは偶然ではなく、要するに、現在は北朝鮮のミサイルの探知捕捉の主力が海自イージス艦の搭載レーダーに移行していて、このミッションが海自の守備範囲になっていることの証左なのだ。空自が外されていて、NECが開発納品したJADGEが動いてないのである。おそらく、今回は経ヶ岬(米軍)は関与していない。去年11月の騒動で懲りたのだろう。そしてまた、米軍にとって北朝鮮が日本海に撃つミサイルは今は二の次の些事なのだ。

NW9の番組で伊藤俊幸が解説資料として案内したパネル地図には、重要な「真実」が暗示されていた。皆さん、お気づきになっただろうか。そこには2隻の海自イージス艦が描き込まれていたが、何と、2隻とも列島の南の太平洋上に浮かんでいたではないか。マスコミ(=軍部と政府)は、昨年11月のサンデーモーニングでの杉浦みずきのフリップと同様、こうやってこっそり真相と内情を教えてくれる。これが真実でありタネ明かしなのだ。疑問が氷解した。伊藤俊幸が全部教えてくれた。このNW9の解説で、伊藤俊幸は(一般には意味不明で専門的で複雑な)重要な話をした。①北朝鮮のミサイルが上空3000mを超えるとレーダーから消えること、②海自艦のレーダーでは電波の距離が遠くなりすぎて目標を追跡できなくなること。聞きながら、多くの視聴者は内容が理解できなかっただろう。私もその一人である。 

具体的な技術の中身については、ネット上に詳細情報があるので参照していただきたい。が、私はおおよそ意味を直観できた。遠く離れた南の太平洋に位置したイージス艦レーダーでは、日本海をほぼ真上に直進する北朝鮮のミサイルが(電波性能上遠距離すぎるため)上空で消え、正確な軌道計算ができないのである。イージス艦が日本海に常駐していれば、レーダー捕捉は物理的機能的に十分であり、そうした不具合は起きないのだ。そのことを伊藤俊幸は国民に示唆した。防衛省自衛隊のHPに概念図を載せて説明しているように、ミサイル防衛の任務では海自イージス艦は必ず日本海で警戒監視活動していなくてはいけない。誰もがそう行動していると信じている。だが、今回、イージス艦は日本海に配置されておらず、日本海上でレーダーを駆動してなかったのだ。だから、目標を上空3000mで見失うのがスペックだという間抜けな釈明を垂れているのである。

今回、この直前に中国軍による3日間(4/8-10)の対台湾威嚇演習があり、おそらく米軍の指示で、海自イージス艦はその方面の警戒監視と情報収集に全力集中していて(させられていて)、南西諸島に近い太平洋上に展開していたか、任務を終えて基地に帰還していたのだろう。だから、日本海は空っぽであり、北朝鮮のミサイルは放ったらかしだったのに違いない。そう推測する。米軍にとって、もう北朝鮮のミサイルは二の次以下の重要性であり、対応するリソースは割いてないのだ。米軍の手足部品である自衛隊にもその指揮命令と優先順位を徹底させているのに違いない。これまで、北朝鮮のミサイルが高度3000mを超えたらレーダーから消失するなどという説明は一度も聞いたことがない。伊藤俊幸の今回の話が初めてだ。一方、香田洋二は、前回は電波の影響でゴーストが映るからと弁解し、13日正午のNHKニュースでも、電波障害が目標消失の原因だと曖昧にお茶を濁していた

伊藤俊幸の今回のコメントを聞き、あらためて再認識した事実がある。NECが開発し対北朝鮮ミサイル防衛で運用しているJADGEは、あくまで日本列島を狙った短距離弾道ミサイルが監視警戒の対象であり、アメリカを狙うべく発射実験を繰り返しているICBMは対象外だという基本的事実である。灯台下暗し。前回記事を書いたとき、私はその前提によく気づかなかった。日本のミサイル防衛システムは、アメリカを守るための装備ではないのだ。だからICBM捕捉では「使えない」のである。アメリカにとって無用の代物であり、そのため、空自のJADGEは実務の運用から排除されたのだ。何でわざわざ米軍が経ヶ岬にレーダー基地を設置したのか。その目的と理由は、アメリカ本土を狙う北朝鮮ICBMを探知捕捉するためである。経ヶ岬のレーダーの性能は、日本海上空3000mで目標が消失する仕様ではない

アメリカにとって大事なのは米本土であり、次がアジア太平洋の米軍基地であり、その他はどうでもいい。アメリカにとって自衛隊は米軍のロボットでありパーツである。自衛隊のリソースはアメリカを守るためのものでなくてはならず、日本を守る目的に特化したJADGEシステムなど不要なのだ。空自のJADGEは、北朝鮮から10分で日本に飛来する短距離弾道ミサイルを迎撃するための警戒監視システムである。海自イージス艦が日本海で24時間活動していることが前提だ。南の太平洋上に展開するイージス艦など想定にない。前回記事を書いたとき、米軍の軍事目的から見たJADGEの「無価値」という、その決定的な意味に気がつかなかった。逆に北朝鮮からすれば、アメリカを攻撃するICBMのロフテッド実験をしているのに、何で無関係の日本が毎度空襲警報を出して大騒ぎするのだろうという珍妙な図だろう。

レーダーからミサイルが消えたこと、落下地点を予測できなかったことについては、伊藤俊幸の示唆と解説から推理を伸ばして謎が解けた。「北海道南西部の陸地に着弾の恐れ」の件は、明らかな政治目的の煽りであり、恐怖を扇動する意図的なアナウンスである。レーダーから消えて軌道予測が不能となったため、その失敗を悪知恵をはたらかせて逆利用し、北海道の住民を恐怖させる方向に仕向けたのである。「戦後初」などという形容詞まで付けて。悪辣きわまりない「情報戦」だ。小野寺五典や佐藤正久が主導して策謀している。政府発表の情報では、「北海道南西部  」を言う前に、すでにEEZ外に落下したと判断している。EEZ外落下を確認しながら、「落下地点は不明」だの「北海道南西部の陸地に着弾の恐れ」と言い、徒に危機と恐怖を煽っていた。この点は、ぜひ時系列の仔細を整理した上で野党に国会で追及してもらいたい。そもそも、北海道に被弾の恐れがあるのに、何で破壊措置態勢が講じられていないのだ。

ミサイル防衛で最初の一撃(SM3)を入れるのは日本海上の海自イージス艦である。今回、イージス艦はどう行動したのか。野党は防衛省から説明させないといけない。一体、ミサイル防衛の導入整備に自衛隊は何兆円使ってきたのか。2016年の宮本徹の国会質疑で防衛副大臣が答弁した数字では、すでに2兆円に達している。2兆円投じたミサイル防衛システムで、「レーダーから消えた」「落下地点は不明」だのと言い、毎回予測を間違えて誤報を出しまくっている。政府と国民が狼狽して騒動している。世界の前でどれだけ大恥を搔き、日本国の面目を失っていることか。この「北海道南西部」の件については、冷静に考えれば簡単に意味は分かる。北朝鮮がロフテッド軌道でICBMの発射実験をやるときは、常に同じ北東に向けて打ち上げるのであり、それが最も慣れて安定した軌道だから、同じ角度と方位で繰り返しているのである。だから、北朝鮮がロフテッドでICBMを発射した際は、方角的には延長線上に北海道が位置する。

レーダーから見失ったことを口実にして、前後脈絡の辻褄合わせを仕組み(杜撰だが)、北海道住民を恐怖させるアナウンスを意図的に撒いたのだ。その憲法違反の戦争政策をマスコミ報道で正当化し、警報を出すのは当然だと言い、警報に国民を慣れさせ従わさせろと言った。佐藤正久と小原凡司がプライムニュースでそう言っていた。