2023年4月22日土曜日

学術会議法改悪案 政府提出を見送る 広がる批判に/民間法人案が俎上に

 政府は20日、日本学術会議法改悪案の今国会提出を見送る方針を決めました。

 後藤茂之経済再生担当相は記者団に、「日本学術会議の理解を得られないまま閣議決定した場合、政府との決定的な決裂を招く恐れがあるので提出見送る」とした一方で、「学術会議を民間法人とする案を俎上に載せ再度議論を進めたい」とも述べました。
 改悪案の提出を見送るというのは政府がこの問題で見せた初めて納得できる対応ですが、「民間法人とする」のでは新たな問題が生じます。
 この件に関して 19日付の記事「学術会議法の改悪案を政府が総会に提示 『政府の介入』と批判が集中」で紹介した通り、学術会議の元幹事でアジア学術会議元事務局長の白田佳子教授が、もしもそうなれば「国際学術会議やアジア学術会議への参加が困難になり、日本社会の未来にとっても大きな危機になる」との懸念を示す論文を東京新聞に寄稿しています。
  (20.12.2)学術会議「民営化したら日本の未来に大きな危機」(白田佳子教授)
 今回提案を見送ったのは一歩前進としても、政府は認識不足のままで学術会議法に手を付けるべきではなく、何ごとも学術会議とよく話し合うべきです。
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学術会議法改悪案 見送り 広がる批判 政府追い込む 民間法人案俎上に
                       しんぶん赤旗 2023年4月21日
 政府は20日、日本学術会議法改悪案の今国会提出を見送る方針を決めました。後藤茂之経済再生担当相が官邸で岸田文雄首相に報告後、記者団に提出見送りを表明。「日本学術会議の理解を得られないまま閣議決定した場合、政府との決定的な決裂を招く恐れがある」と述べました。岸田首相は記者団に「改めて学術会議と丁寧に議論し、早期に結論を得るよう伝えた」と語りました。
 一方で後藤担当相は、学術会議を「民間法人とする案を俎上(そじょう)に載せ、再度議論を進めたい」とも述べました。
 学術会議は18日の総会で、政府に今国会への法案提出を断念し、開かれた協議の場を設けるよう勧告していました。学術会議が勧告を出したのは13年ぶりで、総会で決議した勧告としては18年ぶり。
 政府案では、学術会議は会員選考に際し、外部の第三者からなる新設の「選考諮問委員会」の意見を「尊重しなければならない」と規定。諮問委の委員は、首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員らと協議の上で学術会議会長が任命するなどとしており、強まる政府の介入への懸念が高まっていました。
 政府が昨年12月に法改悪方針を示して以降、学術界からは学術会議の独立性が損なわれるとして再考を求める声明が続出。学術会議の歴代会長5人や、日本のノーベル賞受賞者ら8氏が声明を発表していました。世界のノーベル賞学者61人も懸念を共有すると表明するなど国際的な批判も広がっていました。こうした声が政府を法案提出見送りに追い込みました。


学術会議法改悪案 見送り 独立性侵害 断念を 小池書記局長
                       しんぶん赤旗 2023年4月21日
 日本共産党の小池晃書記局長は20日、東京・高田馬場駅前で演説し、政府が日本学術会議法改悪案の今国会での提出の見送りを決めたことについて、「学術会議は全会一致で法案提出を見送るように勧告を出しています。この声に応えるのは当然です」と述べました。
 小池氏は「今国会に法案を提出するのを断念するだけでなく、学術会議に対する独立性侵害を完全に断念すべきだ。『民間法人化』など論外だ」と強調。菅義偉首相(当時)による学術会議会員候補6人の任命拒否(2020年)について「6人の会員候補の任命拒否の経過を明らかにして、任命拒否の撤回を求めます。そして、岸田政権に、学術会議と真摯(しんし)に対話していくことを強く求めたい」と訴えました。