2023年4月10日月曜日

10- 18歳・22歳の名簿 自衛隊に提供 市区町村の6割超

 歴代の自公政権地方自治体に自衛官募集のための18歳(高卒)と22歳(大卒)の名簿の提供を迫ってきました。
 19年2月の自民党大会で安倍首相(当時)が自衛官募集対象者の名簿提供について「6割以上の自治体が協力を拒否している」と発言したのを機に、2012月、市区町村長が住民基本台帳の一部写しの提出が可能であることを閣議決定し、21年2月には、防衛省と総務省が自衛隊法、同法施行令、住民基本台帳法を根拠に、防衛相が市区町村長に提出を求めることができるとする通知を出しました(それまでは住民基本台帳の「閲覧が可能」に留まっていました)。その結果電子・紙媒体で提供した自治体が21年度は半数を超え、22年度は6割を超える見通しであることが分かりました
 これに対し、「本人の同意なしに、個人情報を提供するのは個人情報保護条例に違反し、プライバシーの侵害」「住基法は閲覧を認めているだけで、電子媒体や紙での提供は認めていない」―など、自衛官募集のための自治体の名簿提供に、住民の不安や懸念、批判が広がっています。
 埼玉県上尾市では、15年9月19日の安保法制=戦争法の強行をうけて、平和委員会を結成し、自衛官募集のための自衛隊への名簿提供をしないことなどを求め、市への要請や懇談に取り組んできました。
 鹿児島市では、これまで対象者を抽出閲覧させていましたが、23年度から紙媒体で提供することを決めました。これに対し市民団体「市民の市政をつくる会」、新日本婦人の会鹿児島支部、鹿児島県平和委員会の3団体は昨年12月、名簿の自衛隊への提供をしないよう求める署名2万2156分を提出し、「本人の同意なしに個人情報を提供することは問題だ」と訴えました。
 しんぶん赤旗が報じました。
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18・22歳の名簿 自衛隊に提供 6割超 22年度 市区町村
    「プライバシー侵害」 反対広がる
                        しんぶん赤旗 2023年4月9日




 岸田自公政権が地方自治体に自衛官募集のための名簿提供を迫るなか、2021年度に電子・紙媒体で名簿を提供した市区町村が初めて半数を超え、22年度は6割を超える見通しであることが、8日までにわかりました。これに対し、各地で「個人情報保護条例や住民基本台帳法に違反」「プライバシーを侵害している」などとして、自治体に提供をやめるよう求める住民の運動が広がっています

 防衛省報道室によると21年度、住民基本台帳に記載されている18歳と22歳男女の住所・氏名・生年月日・性別の4情報を電子・紙媒体で提供した自治体は、全国1747市区町村中962自治体(55・07%)住民基本台帳閲覧による提供は659自治体(37・72%)でした。20年度の電子・紙媒体810自治体(46・37%)、閲覧836自治体(47・85%)から初めて電子・紙媒体提供が上回り、過去最多となりました。
 防衛省は22年度について集計中で正確な数字は答えられないとしつつ、電子・紙媒体が「6割を超える」と説明。具体的な自治体名の公表は「当該地方公共団体との信頼が損なわれ、今後の募集事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」と拒否しました。
 自治体による自衛隊への電子・紙媒体での自衛官募集対象者の名簿提供は、安倍晋三首相(当時)が2019年2月の自民党大会で、「6割以上が協力を拒否している」と発言したのをきっかけに、20年12月、市区町村長が住民基本台帳の一部写しの提出が可能であることの明確化を閣議決定。21年2月には、防衛省と総務省が自衛隊法、同法施行令、住民基本台帳法を根拠に、防衛相が市区町村長に提出を求めることができるとする通知を出していました。これが自治体への圧力となり、電子・紙媒体での提供が急増しました。

各地で反対運動 自治体に要請
紙媒体・抽出閲覧中止 拒否申請周知も
 「本人の同意なしに、個人情報を提供するのは個人情報保護条例に違反し、プライバシーの侵害」「住基法は閲覧を認めているだけで、電子媒体や紙での提供は認めていない」「安保法制のもとで、若者を戦場に送ることに自治体が協力すべきではない」―自衛官募集のための自衛隊への自治体の名簿提供に、住民の不安や懸念、批判が広がっています。
 全国各地で住民団体の反対運動や日本共産党議員の追及で、電子・紙媒体での提供をしない自治体や、対象者を抽出しての閲覧の中止、個人情報の提供について拒否申請の受け付けなども生まれています。

平和委を結成 市とも懇談 埼玉・上尾市
 埼玉県上尾市では、2015年9月19日の安保法制=戦争法の強行をうけて、平和委員会を結成し、自衛官募集のための自衛隊への名簿提供をしないことなどを求め、市への要請や懇談に取り組んできました。
 同市では、自衛隊埼玉地方協力本部からの依頼に対し、07年以来、紙の名簿で毎年2万件を超える情報を提供してきました。15年3月の市議会一般質問で、日本共産党が紙での提供をやめるよう要求。同年4月以降は、紙媒体での提供には応じなくなりましたが、対象年齢の名簿を住民基本台帳から抽出して閲覧させる方式に変更していました。
 上尾市平和委員会では「抽出閲覧は、自衛隊がほしい情報をわたすことであり、自衛隊に便宜を図っているに等しい」と、昨年8月に、抽出閲覧をやめるよう市に要請。市は要請書への回答・懇談のなかで、閲覧はやむを得ないとしながら「抽出閲覧はしない」と表明しました。
 同市は、名簿閲覧以外にも、自衛官募集グッズのポケットティッシュの作製、回覧板への募集チラシの挟みこみ、町内会・自治会の掲示板へのポスター張り出しなど自衛官募集に協力してきました。市平和委員会は、要請や懇談を重ね、17年12月の懇談で市から、自衛官募集グッズについて「今後つくらない」との回答を引き出しました。
 取り組みをすすめるなかで、19年11月にあった、成人式での自衛官募集広報資料の配布依頼に対し、市長名で「ご協力いたしかねます」と回答する状況も生まれています。

3団体 署名2万人超提出 鹿児島市
 鹿児島市では、これまで対象者を抽出閲覧させていましたが、市民に検討状況を明らかにせず、2023年度から紙媒体で提供することを決めました。個人情報保護審議会への諮問すらしていません。これに対し市民団体「市民の市政をつくる会」、新日本婦人の会鹿児島支部、鹿児島県平和委員会の3団体は昨年12月、名簿の自衛隊への提供をしないよう求める署名2万2156人分を提出。「本人の同意なしに個人情報を提供することは問題だ」と訴えました
 今年2月1日の要請では、改めて紙媒体での名簿提供の撤回を要求。県内で初めて導入した、提供を望まない市民の「除外申請」制度(受付期間2月1日~4月14日)について、▽対象者全員への個別の通知と制度の周知 ▽チラシの作製と対象者全員への学校を通じての配布 ▽十分な周知期間を確保するための期間の延長―などを要求しました。

殺し殺される隊員出さない
埼玉・上尾市 平和委員会事務局長 岩田眞智さん
 上尾市平和委員会は安保法制強行を受けて「上尾から海外で殺し殺される自衛隊員を出さない」と2016年に結成しました。上尾市では、12年間に150人も自衛官を出しています。イベントに上尾市自衛隊家族会を通じて自衛隊への勧誘が強められてきました。
 私たちは「やられてもそのままにしない」と、市への要請や懇談をしてきました。市が「広報への陸上自衛隊高等工科学校の生徒募集の不掲載」「自衛隊地方協力本部への住民基本台帳の抽出閲覧をやめる」「成人式会場などでの募集広報資料配布を断る」などの成果につながっています。
 「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と決意した憲法を実現し、非核平和都市宣言をしている上尾市が国の悪政の防波堤としての役割を果たすためにも、他団体とも共同してとりくみを強めていきたい。

「除外申請」を知らせていく
新日本婦人の会鹿児島支部 樋之口(てのくち)里花さん
 鹿児島市は防衛省の通知を受け、18歳の市民の住所と氏名・性別を紙媒体で自衛隊に提供することを決めました。個人情報を勝手に自衛隊に渡すなんて許されません。
 個人情報の提供を望まない人は、「除外申請」が必要で、市は4月14日まで受け付けると言っています。SNSなども活用して広く知らせていきます。
 鹿児島県では、馬毛島や奄美、鹿屋などで軍事演習や軍備増強が進んでいて、そういう動きを毎日のように目にしています。どこかで、軍事強靱(きょうじん)化の動きとつながっているのではないかと思っています。
 高校生の子の親は、個人情報が勝手に自衛隊に渡されることについて、「気持ち悪いし複雑だ」と語っていました。
 徴兵制につながるような動きを許してはいけないと思います。