2023年4月20日木曜日

20- 「改悪法案提出やめ議論を」 政府に勧告 学術会議全会一致で決定

 日本学術会議は18日、総会を開き、政府に対し、今国会への学術会議法改悪案の提出をとりやめ、開かれた議論の場を設けるべきだとする勧告を出すことを全会一致で決めました。総会で決議した勧告を出すのは18年ぶりで、「声明」より強い意思の表出と位置付けられています。
 内閣府が17日の総会で示した学術会議法改悪の条文案は、学術会議の会員・連携会員以外の第三者が会員選考に関与するために新設する「選考諮問委員会」の委員について、首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議の議員と、日本学士院の院長と協議の上、学術会議会長が任命すると明記し、さらに法改正後3年と6年をめどに、組織のありかたを見直す法改正などを講じるとなっています。

 海外の自然科学系のノーベル賞受賞者61人は、日本のノーベル賞受賞者ら8人が学術会議法改悪への危惧を表明した声明(2月公表)を支持するとして、13日付で共同声明を発表しました。2月の8人の声明では、先進国の政府はナショナルアカデミーの活動の自律を尊重し介入しないことを不文律にしてきたことを強調し、学術会議の会員任命拒否を「大変憂慮」し、「政府は性急な法改正を再考し、日本学術会議との議論の場を重ねることを強く希望」するとしています。

 以上の2つのしんぶん赤旗の記事に併せて、同紙の記事:「学術会議 任命拒否問題 政権批判する科学者を排除 独立性壊す法改悪案」を紹介します。
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学術会議 政府に勧告 「改悪法案提出やめ議論を」 全会一致 総会で決定
                       しんぶん赤旗 2023年4月19日
 日本学術会議は18日、17日に続いて東京都内で総会を開き、政府に対し、今国会への学術会議法改悪案の提出をとりやめ、開かれた議論の場を設けるべきだとする勧告を出すことを全会一致で決めました
 細かい字句の修正は、幹事会での議論を経て梶田隆章会長に一任。梶田会長は「勧告という形で表明する強い意思を、政府が真摯(しんし)に受け止めることを期待する」と述べました。
 日本学術会議法は、学術会議は科学的な事柄について「政府に勧告することができる」と規定。政府に対して実現を強く勧めるもので、これまで学術会議が会員任命拒否問題や政府の法改悪方針をめぐって出してきた「声明」より強い意思の表出と位置付けられています。総会で決議した勧告を出すのは、18年ぶり
 総会では政府への勧告とあわせて、国民に向けた声明も議論し、出すことを決定。当事者である学術会議との真摯な対話を欠いたまま、政府が法改悪方針を突然示した問題や、学術の独立性の意義、法改悪への危惧を表明するもので、勧告と同じく、細かい修正は会長に一任されました。
 内閣府が17日の総会で示した学術会議法改悪の条文案は、学術会議の会員・連携会員以外の第三者が会員選考に関与するために新設する「選考諮問委員会」の委員について、首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議の議員と、日本学士院の院長と協議の上、学術会議会長が任命すると明記。さらに、法改正後3年と6年をめどに、組織のありかたを見直す法改正などを講じるとしており、会員からは、政府からの介入を危惧する声が多数あがっていました。


日本の科学者を支持 海外のノーベル賞受賞者61人
                       しんぶん赤旗 2023年4月19日
 海外の自然科学系のノーベル賞受賞者61人は、日本のノーベル賞受賞者ら8人が学術会議法改悪への危惧を表明した声明(2月公表)を支持するとして、13日付で共同声明を発表しました。
 学術会議の梶田隆章会長が17日に開いた学術会議の総会で報告し、「(日本学術会議法改悪の動きは)世界の傑出した科学者にとっても重大な関心事であることが確認された」と述べました。
 共同声明には、真鍋淑郎氏らと共に2021年にノーベル物理学賞を受賞したドイツの気象学者クラウス・ハッセルマン氏も名前を連ねています。 
 61人が支持を表明した日本のノーベル賞受賞者らによる声明では、先進国の政府はナショナルアカデミーの活動の自律を尊重し介入しないことを不文律にしてきたと強調。日本での首相による学術会議の会員任命拒否を「大変憂慮」し、法改正への「大きな危惧」を表明した上で、「政府は性急な法改正を再考し、日本学術会議との議論の場を重ねることを強く希望」するとしています。
 さらに梶田会長は、主要7カ国のアカデミーあてに学術会議法改悪をめぐる動きを報告した文書を2月に送付し、米独仏伊各国のアカデミーから、学術会議の懸念を共有する趣旨の返信があったと報告しました。


学術会議 任命拒否問題
政権批判する科学者を排除 独立性壊す法改悪案
                       しんぶん赤旗 2023年4月19日
           任命拒否問題をめぐる経過

2020年

9月30日

菅首相が学術会議会員候補6人の任命を拒否。「赤旗」が翌日1面トップで報じる

 

 

9月2日

学術会議が、理由説明と6人の任命を求める要望書の提出

 

 

12月9日

自民党PTが学術会議の「改革」を提言

 

2021年

4月22日

学術会議が、組織「改革」の理由を「見出すことは困難」と声明

 

 

4月26日

任命拒否の6入が、理由を明らかにするよう求め情報開示請求。 1162人の法律家が同趣旨の請求書を提出

 

 

6月28日

政府は情報開示請求に対して不開示決定

 

2022年

12月6日

政府は、学術会議に介入する法改悪をめざすと公表

 

 

12月21日

学術会議総会で、政府の法改悪案を「強く再考」を求める声明

 

2023年

2月14日

学術会議の歴代会長5氏が連名で、岸田首相に法改悪の再考を求める。

 

 

2月19日

日本のノーベル賞受賞者ら8人が法改悪に「大きな危惧」を抱くと声明

 

 菅義偉首相(当時)による日本学術会議会員候補の任命拒否は2020年10月1日、『しんぷん赤旗」のスクープで発覚しました。梶田隆会長は総会で、「任命しない理由の開示」と「6人の任命」を求める要望書の提出を決定。首相の任命拒否は遺憾だとする決議も採択しました。
 政府が強行した違憲・違法な任命拒否の発覚を受け、同2日に野党もただちに合同ヒアリングを開催し、この問題での共闘体制をかためました。

国際的批判の声
 菅内閣の任命拒否強行に対し、学問分野を問わず抗議や懸念を表明した団体は20年12月末時点で1349に上りました(「安全保障関遅法に反対する学者の会」調べ)。問題発覚からわずか3ヵ月で学会全(2065団体)の過半数に達するなど、危機感はかつてないものとなりました。140以上の国や地域を代表する学術団体が加盟する国際学術会議も、菅内閣の決定が学問の自由に与える影響は深刻だとする書簡を出すなど批判の声は国際的にも広がりました。
 一方、菅首相は「一部の大学に偏っている」「私立大が少ない」「民間、若手が少ない」などと事実に反する学術会議批判を展開。自民党も首相に呼応し、同年12月9日に発足したプロジェクトチームで「独立した新たな組織として再出発すべきだ」との提言案を出し、問題を学術会議の「在り方」にすり替え、政権批判を回避しようとしました。

介入 より強める
 同時に任命拒否には、安倍晋三政権が進めた安保政策などを批判する科学者を排除する狙いがありました。政権の政策に都合よく働く組織へ「改革」しようとの思惑がありました。
 同会議はその後、21年の総会で組織の在り方について、「変更する積極的理由を見出すことは困難」と報告しました。さらに同年、任命拒否された6人の研究者と法律家1162人が任命拒否の理由を明らかにするため、内開府や内閣官房に情報開示請求書を提出。ところが、政府は開示請求に関し、「文書不存在」「存否応答拒否」などと不開示を決定しました。
 今国会では岸田政権が日本学術会議の独立性を壊す重大な法改悪を企てています。改定案は新たに設置する「選考諮問委員会」の議長を首相が務めるなど、会員選考に関し政府の介入をより強める仕組みとなっています。
 こうした政府の動きに白川英樹氏や本庶佑氏らノーベル賞受賞者人が2月19日、学術の独立性の問題につながると警告し、「政府は性急な法改正を再考」するよう求める声明発表。これに世界の自然科学系ノーベ賞者61人が全面的に支持する共同声明を出すなど、国際的な批判が再び広がっています。