2023年4月24日月曜日

買い控えで値上げ企業の半数が“利益率ダウン”(日刊ゲンダイ)

 東京商工リサーチ(TSR)が4月3~11日に実施した調査4424社回答)によると、企業はコスト上昇分を価格転嫁できたケースでも、そのうちの半数の企業は利益率が低下していることが分かりました。
 原油や原材料価格の高騰によって調達価格が上昇した企業は87.7%に上りましたが、このうち上昇分を全く転嫁できていない企業は42.2%を占めました。4割超が“ゼロ転嫁”なのです。
 では価格転嫁できた企業は万々歳かというとそうではありません。付加価値が高い製品やサービスを提供できる企業は値上げしても顧客が離れないかもしれませんが、そのような企業はごく一部で大半の企業は受注減のリスクを抱えながら、どうやって価格転嫁を行うのか苦慮しているわけです。
 日本はそもそも需要がインフレ(価格上昇)を牽引するタイプではなく、ひたすら原材料の高騰(円安)によるコスト上昇なので、消費者も企業も痛みばかりが伴い、経済の好循環など生れないというのが実態です。
 黒田前日銀総裁は「反省する事項は何もない」と公言して退任しました。そう言うしかなかったとはいえ、間違った方針を10年間も強行してきた害悪は余りにも甚大で、元々異次元から正次元に軟着陸する方法などはないのでした。
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値上げ企業の半数が“利益率ダウン”の衝撃…ほど遠い「賃上げと価格転嫁の好循環」
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「賃上げと価格転嫁の好循環」にはほど遠い実態だ。東京商工リサーチ(TSR)が17日公表した調査結果は衝撃。コスト上昇分を価格転嫁できても、そのうちの半数の企業は利益率が低下していることが分かったのだ。調査は4月3~11日に実施され、4424社から回答を得た。
 まず、そもそもコスト上昇分を価格転嫁できていない企業がいまだ多い。原油や原材料価格の高騰によって、調達価格が上昇した企業は87.7%に上り、このうち、上昇分を全く転嫁できていない企業は42.2%を占めた。今年の春闘では、賃上げを実現するために価格転嫁の必要性が叫ばれたが、4月の調査でも4割超が“ゼロ転嫁”なのだ。

 さらに、驚いたのが値上げを実施した企業についての結果だ。コスト上昇分の一部または全てを価格転嫁できた企業のうち51.2%が「利益率が低下した」と回答したのだ。TSR情報本部長の原田三寛氏が言う。
 「コストアップ分を一部しか価格転嫁できなければ、利益率は低下します。また、値上げにより、受注量が減れば、固定費などのコストのウエートが大きくなり、利益率は下がってしまいます。価格転嫁をすることで、賃上げの原資である利益額が減ってしまうことがあるのです。賃上げを実現するには価格転嫁が重要と言われますが、こういう副作用があることも認識する必要があります」

“痛み”は消費者だけじゃない
 消費者は値上げラッシュに苦しんでいるが、価格転嫁した企業側も利益が減って困っているのだ。TSRは〈昨今のコスト上昇は消耗戦の様相を呈している〉としている。
 「付加価値が高い製品やサービスを提供できる企業は値上げしても顧客が離れないかもしれませんが、そのような企業はごく一部です。大半の企業は受注減のリスクを抱えながら、どうやって価格転嫁を行うのか苦慮していると言えます」(原田三寛氏)
 米国のように需要が牽引するタイプでなく、日本のインフレはもっぱらコスト上昇によるもの。消費者も企業も痛みばかりが伴う。いつになったら経済の好循環はやってくるのか。