2023年4月12日水曜日

維新勝利 野党敗北の原因(植草一秀氏)/圧政、暴政に麻痺してきたか、選挙民(日刊ゲンダイ)

  植草一秀氏が「維新勝利 野党敗北の原因」という記事を出しました。

 その中で植草氏は、統一地方選前半戦の結果事前の情勢調査通りの結果になったとして、特筆されるべき点は 維新が大阪ダブル選に勝利しただけでなく奈良県知事ポストを奪ったことであるとしています。
 多選の知事退職時に法外な退職金を手にすることに対する批判が全体として強まっているなかで、維新が奈良県知事選で知事の退職金制度廃止などをアピールしたのは選挙対策上 極めて効果が大きく、政治に対する期待と信頼を失っている(普段は投票に行かない)半分の国民にとってそれが利いたと見ています。
 そして維新が勢力を拡大してきた最大背景はメディアの異常な応援にあり、それに並行して維新が有権者の琴線に触れるアピールを工夫してきたことも否定できないと述べています
 一方、北海道や大分の知事選で野党統一候補が惨敗した理由は野党共闘の崩壊にあるとして、野党第一党が「野党」と「ゆ党」のどちらを選ぶか揺れ動いている現状では、野党共闘が大きな力を発揮することは困難であるとして、もしも立民党が完全に「ゆ党」路線を選択するなら、共産、れいわ、社民との共闘はあり得ないので、どちらの道を進むのか、立憲民主党は旗幟を鮮明にするべきだとしています。
 そして当面は立民党を完全分離しリベラル勢力の結集を図るしかなく、その際に最重要になるのは、政治不信層の信頼をいかにして獲得するのかであり、維新が知事退職金廃止の提案を示して民意を引き付けたように、政治不信層の琴線に触れる路線を効果的に打ち出すことが事態打開の鍵を握るとしています。
 併せて日刊ゲンダイの記事「 ~ 下馬評通りの統一選 圧政、暴政に麻痺してきたか、選挙民」を紹介します。
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維新勝利 野党敗北の原因
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年4月10日
統一地方選前半戦の結果が明らかになった。事前の情勢調査通りの結果になった
9つの道府県知事選が実施された。
与野党対決型の知事選は北海道と大分で、いずれも与党系候補が勝利。
徳島は保守3分裂選挙。神奈川、福井、鳥取、島根は与野党相乗りの無風選挙。
神奈川では黒岩氏スキャンダルが表面化したが無風選挙では選挙結果が覆される余地は乏しかった。

特筆されるべき点は維新が大阪ダブル選に勝利しただけでなく奈良県知事ポストを奪ったこと。
奈良県では自民系が分裂選挙になった。自民党県連会長の高市早苗氏の責任が問われることになる。
徳島では保守3分裂選挙を後藤田正純氏が制した。6選を目指した現職の飯泉嘉門氏が敗北。
奈良県では5選を目指した現職の荒井正吾氏が敗北。
多選に対する批判が全体として強まっている。
多選の知事は退職時に法外な退職金を手にするのが一般的。
私は維新の政策路線に賛同しないが、有権者に対して知事の退職金制度廃止などをアピールすることは選挙対策上、極めて効果が大きいと考えられる。

4月23日に投開票日を迎える衆参の5つの補欠選挙では和歌山1区に維新が候補を擁立する。奈良県知事ポストを獲得した維新が和歌山1区で議席を確保すると次の衆院総選挙に向けて勢いづくことが予想される。
昨日記事にも記述したが、日本の有権者は完全に二極化している。
投票所に足を運ぶ有権者の半数が自公維国に投票する。
自公維国以外の政党が候補者を乱立させると大半の選挙区で自公維国が議席を獲得する。
このまま進めば、自公維国が国会議席の7割を占有することになるだろう。
しかし、全有権者のうち、投票所に足を運ぶ者は全体の半分に過ぎない。

半分の国民が政治に対する期待と信頼を失っている。
主権者であるから選挙に行くのが当然との考え方もあるが、他方で、既存政党が有権者の信頼を勝ち取れていないことを問題視する考え方もある。
そのような既存政治への期待を失っている人々にとって、維新のアピールが利いているという側面がある維新が拡大してきた最大背景はメディアの異常な応援にある。
広告費換算で法外な水準に達する維新誇大宣伝を主要メディアが展開してきたことが大きい。
しかし、これと並行して維新が有権者の琴線に触れるアピールを工夫してきたことも否定できない

国民に痛みのある政策を訴えるなら、まずは、為政者が範を示すべきだ。
日本の議員は職業化している。
高水準の経済的処遇を獲得するために議員を目指す、議員職を続ける者が多い。
まさに本末転倒。議員の経済処遇を大幅に引き下げるべきだ。
その一方で、議員が政策立案に取り組むためのサポートを拡充するべきだ。

国民に奉仕するのが議員の本分。ところが、現状では国民に奉仕させるのが議員の特権だと勘違いしている者が多い。
北海道や大分の知事選で野党統一候補が惨敗した理由は野党共闘の崩壊にある。
野党第一党が「野党」と「ゆ党」のどちらを選ぶか揺れ動いている現状では、野党共闘が大きな力を発揮することは困難だ。
維新の政策路線は自民より右に位置する。立憲民主党がリベラルなら維新との共闘はあり得ない。
立憲民主党が完全に「ゆ党」路線を選択するなら、共産、れいわ、社民との共闘はあり得ない。
どちらの道を進むのか、立憲民主党は旗幟を鮮明にするべきだ。

立憲民主党を完全分離し、リベラル勢力の結集を図るしかない。
その際に最重要になるのは、政治不信層の信頼をいかにして獲得するのかだ。
維新が知事退職金廃止の提案を示して民意を引き付けた点からは、路線が異なるとはいえ、学ぶべき点がある。
政治不信層の琴線に触れる路線を効果的に打ち出すことが事態打開の鍵を握る。

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             (以下は有料ブログのため非公開

本番は次の補選だが下馬評通りの統一選 圧政、暴政に麻痺してきたか、選挙民
                         日刊ゲンダイ 2023/04/10
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 統一地方選の前半戦は下馬評通りの結果だった。9日、午後7時58分から特番を組んだNHKは15の首長選をすべて「ゼロ打ち」。投票箱のフタが閉められた午後8時ちょうどに当確を出した。次点以下に大差をつけた圧勝が間違いないからだ。
 与野党対決は岸田自民党が制した。北海道では鈴木直道知事が再選し、大分県知事選では参院議員を辞職して臨んだ安達澄氏が元大分市長の佐藤樹一郎氏に敗れた。2030冬季五輪の誘致で揺れる札幌市は、推進派の秋元克広氏が3選。不倫相手に宛てた変態じみたメールを暴露された神奈川県の黒岩祐治知事も4選した。

 大阪のダブル選は大阪維新の会が総ナメ。新型コロナウイルスをめぐるデタラメ対応で人口あたりの死亡者数が全国ワーストで、IR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致をめぐっても府民が割れているのに、吉村洋文府知事が再選し、横山英幸元府議が市長選で初当選した。高市経済安保担当相のスタンドプレーで保守分裂となった奈良県知事選も、維新が勝った。日本維新の会の馬場代表は「大阪での改革を見てもらった奈良の皆さんから『奈良も大阪のようになればいい』という期待をいただいたと思う」とか言っていたが、ウソやろという話だ。

フランスのデモは11度目
 自民党が政権を奪取し、第2次安倍政権発足以降というもの、弱肉強食の新自由主義が猛威を振るい、弱者が露骨に虐げられるようになった。圧政、暴政に有権者の感覚は麻痺してきたのか。だから、こんな結果になったのか。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「投票率が低く、選挙に民意が反映されているとはとても言えない。地方行政のみならず、国政に対しても有権者が物申す絶好の機会を統一選の前半戦では生かしきれなかった。歯がゆいです。国民の責任は非常に大きいと思いますよ。コロナ禍では住んでいる自治体によって、健康や命が左右される問題が露呈した。維新が牛耳る大阪では医療費などをムダだと削減し、多くの犠牲を出したにもかかわらず、無能なトップが再び選出された。そういう意味では、後ろ向きに変化していると言えるでしょう。自公与党に維新もくっつき、この国は大軍拡路線を突き進んでいる。後半国会では防衛費倍増を裏付ける財源確保法案が審議されています。民意も国民の暮らしもないがしろでいいのでしょうか」

 円安物価高に苦しめられる中、防衛増税のみならず、少子化対策費が社会保険料に上乗せされようとしているのに、どうしたことか。欧州ではインフレや年金改悪などに怒った市民が、連日のようにすさまじい抗議運動を展開している。とりわけ激しいのがフランスで、英国のチャールズ国王の訪仏が延期されるなど、影響は多方面に広がっている
 マクロン政権が強行する年金制度改革に反対する大規模デモは、6日(現地時間)に11度目となった。内務省によると、全土で57万人が参加。前日にはボルヌ首相がデモを主催する主要労組の代表者らと初めて交渉したものの、決裂したことから、13日にも大規模デモを実施する見通しだ。一部が暴徒化し、マクロン大統領がなじみのパリのカフェに放火して100人以上が逮捕されたり、資産運用世界最大手の米ブラックロックがオフィスを構えるビルに数十人が押し入って発炎筒をたく騒ぎなども起きた。年金の受給年齢を現行の62歳から64歳に引き上げる改革法案は国民議会(下院)で投票を経ずに採択される異例の経過で成立したため憲法会議が違憲審査を進める事態になっている。

物価高の元凶・日銀総裁は居直り退任
 旧ソ連構成国ジョージアでは、政府与党が言論弾圧につながりかねない法案を推し進めたため、3日間にわたる激しい抗議デモを引き起こし、撤回に追い込まれた。資金の20%以上を国外から提供されている団体に「外国の代理人」としての登録を義務付け、未登録の団体には多額の罰金を科す内容で、ロシアで12年に制定された法律にソックリ。将来的な目標のEU加盟が遠のく懸念があった。

 アベノミクスが継続中の日本はもっとヒドイ状況なのに、選挙も無風で首相は鼻歌なんて冗談じゃない。
 物価高の元凶である日銀の黒田総裁は8日に退任。最後の会見では性懲りもなく「ベア(ベースアップ)が復活し、雇用者報酬も増加した。これまでの政策運営は適切だった」などと、自己正当化のオンパレード。22年の実質賃金指数(20年=100)は99.7で、異次元緩和を始める前の12年の105.9を大きく下回っているにもかかわらず、だ。日本の実質経済成長率はこの10年、平均で0.5%にとどまり、欧米から引き離されており、潜在成長率も伸び悩んでいるのに「むしろもっと下がるものが下がらなくて済んだ」と強弁だから、開いた口がふさがらない。安倍政権以降、国債頼みの政策乱発を丸のみし、日銀が国債を買い入れる事実上の財政ファイナンスを常態化させたことも忘れちゃいけない。日銀が保有する国債は580兆円に達し、政府発行済み国債の50%超を占める。政府が国債費増加を嫌がるから利上げできず、国民に負担を押し付け続けているのだ。

野党の自爆テロにニンマリ
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言った。
野党が壊滅的に崩れている立憲民主党は維新と組んだり、自民党に譲歩したり、何がしたいのかサッパリ分からない政権に対峙し、おかしいことはおかしいと言う野党第1党の立ち位置をグダグダにしている珍しい政党ですよ。共産党は党員除名問題で強硬な面を押し出してしまい、無党派層にとって魅力がなくなった。つまるところ、岸田政権に風が吹いているわけではなく、野党の自爆テロで『濡れ手で粟』状態なんです。これといった手を打っていないのに、野党が負けてくれる安いハナシなんですよ。投票率の低さは関心の薄さとイコール。政治の劣化に有権者がしらけるのは無理がありませんが、それでいて、生活に不満を言うのはツジツマが合わない。有権者もそう考え直さなければ、いい方向への変化は訪れませんよ」

 国民が声を上げ、あらゆる選挙で意思を示さないと、この国の凋落と生活苦は止まらない。本番は衆参5補選も実施される後半戦だ。選挙戦真っただ中の参院大分選挙区に続き、衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区、山口4区が11日、告示される。投開票日は23日。この2週間で流れは変えられる。