2024年10月5日土曜日

激しい石破新首相攻撃への違和感(植草一秀氏)/『石破おろし』がハネムーン期間ゼロで始まる?(窪田順生氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 石破首相が森山幹事長らの進言を受けて10月27日に総選挙を実施することを表明すると、「ウソつき」だという批判の嵐が巻き起こりました。
 植草氏は「たしかに石破氏は総裁選の過程で総選挙を急がない方針を示していた。国会で論議を戦わせ、その上で総選挙に進むべきだと述べていた。したがって、発言が変わったと批判されるのはやむを得ない面がある」が、現実は「その範疇を超えて石破氏が激しくメディアに攻撃されている印象が強い」と述べました(政治・経済学者で、かつ野党連合を志向する「ガーベラの風」の主宰者である植草氏が、自民党や石破氏の支持者でないことはいうまでもありません)。
 植草氏は、「批判の急先鋒に立っているのは二つの勢力で、一つは石破氏がアベノミクス路線からの決別を指向していることを批判する勢力。いま一つは石破氏が嫌中、嫌韓の姿勢を鮮明に示さないことを批判する勢力(日本の極右勢力)」で、「中心に位置するのは高市早苗氏を支援した勢力」だと述べました。
 そして「石破氏がここまで激しく攻撃を受ける現実は、何らかの意味で石破氏が正しい方向を指向していることの表れであると見る視点が必要と感じられる」としています。
 立民党が野田佳彦氏を代表に選出したことについては、「これでは自民党と立民党の区別がつかない」「自公政治を打破すべきと考える主権者は多数存在するのに、この主権者勢力を真正面から受け止める中核野党が不在になっている」として、総選挙を通じてこの第三極勢力を確立することが求められると述べています。

 併せてノンフィクションライター・窪田順生氏の記事「『石破おろし』がハネムーン期間ゼロで始まる? 自民党保守派が狙う『新政権のアキレス腱』とは」を紹介します。
 石破氏は「徴兵制」を唱えるなどの超タカ派であるものの、他方で韓国や中国から親近感を持たれていることから、極右勢力からは「左翼」「反日」と見られていると、窪田氏は指摘しています。5000字弱のやや長文の記事です。

追記)石破氏が総裁選中「日米地位協定」の改定に言及したことも、総理・総裁としては初めてのケースでしょう。
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激しい石破新首相攻撃への違和感
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年10月 2日
自民と立民が新しい党首を選出。
石破首相は10月27日に衆院総選挙を実施する方針を決めた。いわゆる7条解散。
天皇の国事行為に関する規定を「悪用」する衆院解散。
衆院の任期は4年で、本来は任期満了が基本。
日本国憲法は内閣不信任案が可決された場合に衆議院が解散されることがあることを規定している(69条)。
内閣が内閣の都合で勝手に衆院を解散して総選挙を行うのはおかしい。これが正論。
しかし、現実には内閣が内閣の都合で勝手に衆院解散・総選挙を実施してきた。
憲法違反の司法判断も示されていない。

したがって、内閣が内閣の都合で解散・総選挙を強行することを止める手立てはない。
石破氏が10月27日に総選挙を実施することを表明したことに対する批判がかまびすしい。
たしかに石破氏は総裁選の過程で総選挙を急がない方針を示していた。
国会で論議を戦わせ、その上で総選挙に進むべきだと述べていた。
したがって、発言が変わったと批判されるのはやむを得ない面がある。

しかし、その範疇を超えて石破氏が激しくメディア攻撃されている印象が強い
米国でトランプが大統領選で勝利したときのメディアの反応に通じる部分がある。
批判の急先鋒に立っている顔ぶれを見ると、二つの勢力の存在を見て取れる。
一つは石破氏がアベノミクス路線からの決別を指向していることを批判する勢力。
いま一つは石破氏が嫌中、嫌韓の姿勢を鮮明に示さないことを批判する勢力。
日本の極右勢力だ。

批判の中心に位置するのは高市早苗氏を支援した勢力。高市氏は財政拡張と金融緩和を主張した。アベノミクス路線を引き継ぐ方針を明示していた。
この路線が否定され、この勢力がいら立っている。
しかし、金融政策の軌道修正は正当である。日本円が暴落して深刻な経済安全保障問題が浮上している。
高市早苗氏は経済安全保障担当相でありながら、日本円暴落に対する注意を喚起することすらしなかった。日本円暴落で日本は外国資本に買い占められつつある。外国資本に破格値で日本を売り渡すことを推進する政策が「売国政策」である。高市氏は売国政策を推進してきた。
日銀が政策路線を修正して日本円暴落阻止に向けて動いていることは正当である。

また、高市氏は靖国参拝方針を明示していた。
近隣諸国との対立を意図的に深める姿勢は戦争屋が望むもの
米国の軍産複合体は東アジアの緊張が拡大することを切望している。高市氏はその意向に沿う言動を示してきた。
彼らにとっての最大の脅威は東アジアの平和と安定。
この意味で石破氏が激しい攻撃を受けているように思われる。
メディアから激しく叩かれたら、叩かれる者が「真実を追求する者」であると認識するのが基本的には正しい。「本物」は叩かれる。叩かれることは「本物の証明」と言える

石破氏がここまで激しく攻撃を受ける現実は、何らかの意味で石破氏が正しい方向を指向していることの表れであると見る視点が必要と感じられる。
私は石破氏の政策路線を支持しないが、高市氏が首相になることと比較すれば、自民党ははるかに賢明な選択をしたと評価する。

このなかで、一部の人々が激しく石破氏を攻撃している姿を興味深く観察している。
立憲民主党は野田佳彦氏を代表に選出したが、これでは自民党と立憲民主党の区別がつかない。
自民党が十分に大きいのだから、わざわざ第二自民党を創設する必要はない。
いま日本に求められているのは自公政治に対峙する政治勢力の確立。
当然のことながら、共産党もこの範疇に含まれる。
自公政治を打破すべきと考える主権者は多数存在する。
残念ながら、この主権者勢力を真正面から受け止める中核野党が不在になっている。
総選挙を通じてこの第三極勢力を確立することが求められる。

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      (後 略)


「石破おろし」がハネムーン期間ゼロで始まる? 自民党保守派が狙う「新政権のアキレス腱」とは
                 窪田順生 ダイヤモンドオンライン 2024.10.3
                    ノンフィクションライター
本連載読者の石破茂首相へ
著者が伝えたいこと
 10月1日、石破茂氏が第102代の内閣総理大臣になった。新総理がどういう日本を目指そうとしているのかを知りたくて、今年8月に出版された新著『保守政治家 わが政策、わが天命』(講談社 石破茂著)を読んでみたところ、ちょっと驚いた。
 冒頭の「はじめに──天命が降りる時」というところで、本連載の記事が引用されていたのである。
《さらに引用で恐縮ですが、日本は世界一の「誹謗中傷大国」なのだそうです(窪田順生・ダイヤモンドオンライン・23年7月20日)。この記事によると、日本人はX(旧ツイッター)の利用者率、利用時間、匿名利用率、削除要求件数のすべてが世界一なのだそうで、そうだとすればかなり異様なことでしょう》(本書18ページ)
 当該記事で筆者が日本における「誹謗中傷」の実態を取り上げて伝えたかったのは、「正義の暴走」の危険性だ。その意図を汲み取ってくれたのか、石破氏はこう続けている。
《言論の自由が保障されるべきは当然ですが、匿名で自分は安全なところに身を置いて、会ったこともない相手を、事情を深く知らないままに罵倒して正義を気取る、というのは醜悪の極みです。これがやがて「正義」を掲げる勇ましい世論となり、「正義」が暴走をして批判を封殺し、最終的に国を誤ることになるのが一番恐ろしいと思います》(同上)

 このように本連載をちゃんと読んでくれていることがわかった今、差し出がましいようだが、これから政権運営をしていく石破首相にぜひお伝えしたいことがある。
 それは、ハネムーン期間ゼロで新内閣がこんなにも批判されてしまっている理由と、これから週刊誌やSNSで叩かれるとしたら、この方面が危ないのではないかという「予想」である。
 ハネムーン期間とは、メディアの政権批判が抑制的になりがちな就任から100日の期間を指す。わかりやすいのは3年前の岸田首相だ。就任直後、ある政治評論家は「永田町で岸田さんを悪く言う人はいないんですよ」と露骨に媚を売り、首相がテレビ出演するとスタジオでは「岸田ノートって何が書いてあるんですか?」なんてヌルい質問が飛ぶなど、しばらくは「ハネムーン」を満喫していた。
 こういう慣例に照らし合わせれば、石破首相も来年1月の通常国会が始まるくらいまでは「やっぱり魔人ブウに似てますね」とかイジられたり、電車・軍事オタクのネタで盛り上がったりしているはずだった。

 しかし、現実はそうなっていない。平将明デジタル相が皇居で任命式に参列していた最中に「文春砲」をくらったようにハネムーン期間ゼロで攻撃が始まっている
 もちろん、これはご自身が招いた事態でもある。総裁選に勝った直後から、これまでの発言によって株価が暴落、まずは「石破首相に経済界がノーを突きつけた」などと言われてしまった。首相になって衆院早期解散を表明したことも前言撤回と受け取られ、「首相になった途端、ひょう変した」と失望の声が寄せられた。経済学者の成田悠輔氏も情報番組で「数日で早くもいろいろ妥協や忖度が見られる」などとコメントしている。
 その後の組閣でも、自身に近い人物ばかりを起用したことが「身内偏重」「非主流派の在庫一掃セール」など揶揄された。しかも、閣僚に旧安倍派がゼロなことが「やりすぎ」「喧嘩売っているのか」と批判されている。
 まだ就任したばかりだというのに、このまま「石破おろし」のネガティブキャンペーンが始まりそうなムードさえ漂ってきているのだ。
自民党保守派が狙う
石破新政権のアキレス腱
 では、なぜこんなにも石破氏は攻撃されてしまうのか。
 まず、一番の理由はよく言われるように、自民党内に「敵」が多いことだ。「最高顧問」という名誉職に閉じ込めた麻生太郎氏を筆頭に党内で、石破氏をこころよく思っていない人は少なくない。が、その中でも特に恨みを買っているのが今回、高市早苗氏を支えた旧安倍派などの「保守系議員」である。
 つまり、今のハネムーン期間省略のバッシングムードは、自民党内や支持者の「保守勢力」が積極的につくり出しているのだ。

 石破氏はもともと「徴兵制」唱えるなどゴリゴリのタカ派だが、保守勢力からは「左翼」「反日」「こんな人が総理になったらおしまいだ」といった感じで、さながら「売国奴」の扱いを受けて嫌われている。
 なぜかというと、石破氏は周辺国との軋轢を生む靖国神社参拝に慎重な姿勢を持っており、中国や韓国と「対話」をしていくべきだと考えているからだ。また、先の戦争について当時の政府や軍部に対して、「勝てない戦争を始めたことの責任は厳しく問われるべき」というような歴史認識を繰り返し主張している。
 これは保守勢力的には看過できない。他国から何を言われようとも靖国に参拝して、英霊に哀悼の誠をささげるようなことがでできなければ、日本のリーダーとして「失格」と考えているからだ。
 また、先の戦争は白人支配からアジアを解放するという「大義」のもとに進められた戦争であって、中国や韓国、東南アジアで報告される戦争犯罪のほとんどは「日本を貶める謀略」や「冤罪」というのが基本的な保守の考え方である。
 そのような人たちからすれば「石破茂首相」はとても許容できないのである。しかも、その拒否反応を今回さらに強めてしまったのが、石破首相に対する中韓の好意的な反応だ。「歴史認識が穏健」ということもあって岸田政権で築いた関係が継続・発展できるのではないかと期待しているようだ。
 中でも特に前のめりなのが韓国だ。「中央日報」(9月30日)は歴代の駐日大使や関係者の「石破評」を掲載したが、以下のようにベタ褒めなのだ。
「韓国に対して関心が高く、非常に真摯な人
歴史観も自民党議員の中で最も正しい
「韓国のことが本当に好きで、友好的な話をよくしていたのが印象深い」(同上)

 さて、このような韓国の持ち上げぶりを聞くと、愛国心あふれる保守派の皆さんはきっとこんな風に思うのではないか。
「ここまで韓国とズブズブということはきっと何か裏で繋がっているに違いない」
 まさしくそれこそが、筆者が考える「石破氏のアキレス腱」だ。政治家とは中国や韓国と対立してナンボという考えの人たちからすると、中国や韓国と友好的な関係や、パートナーとして何かを進めようとするだけで、そこに「陰謀」を感じてしまう。そして今の時代、それはネットやSNSで拡散され、そのまま「報道」されてしまうのだ。
 わかりやすいのは、大阪市長時代の橋下徹氏の「上海電力メガソーラー疑惑」と、河野太郎氏の「日本端子疑惑」である。
 どちらも両者が中国共産党と「蜜月」であって、自治体首長や政府閣僚の立場を利用して、中国に利するような政策をしたのではないかという疑惑である。ネットやSNSで大変な注目を集めてから、実際にマスコミも報道をした。
 ただ、結論から申し上げると、どちらも憶測の域を出ないビミョーな疑惑だ。その理由は「橋下徹氏「上海電力疑惑」にモヤモヤ、河野太郎氏の親中疑惑騒動と瓜二つ」(22年5月19日)の中で詳しく解説をしているので興味のある方はお読みいただきたいが、ここでは「結論」だけを引用する。
どちらも「中国」と「太陽光パネル」という、人々のイマジネーションを刺激して巨大な陰謀を想起させるようなキーワードによって、やや話が一人歩きしているきらいがある

 これと同じことが石破氏でも繰り返されるのではないかと思っている。つまり、石破氏の過去の政治活動や関係者と、中国・韓国との接点を探してきて、それを強引に「疑惑」に結びつける。そして、「中国共産党の操り人形だ」「韓国と手を組んで日本を貶めている」などのネガティブキャンペーンが仕掛けられていくのだ。
 この手の対策は「初動」が大事で、SNSやネットで拡散され始めた段階で、公の形でしっかりとした反論や説明をして火消しをしないとどんどん広まって、さらにおもしろおかしいストーリーへと「進化」してしまう
 例えば、先ほどの2つの「親中疑惑」もいまだにSNSなどで「なぜマスコミは報じない!中国支配がここまで進んでいるとは闇が深すぎる」とか怒っている人がいる。
 本人たちもホームページやさまざまな場面で反論して、根拠のない話だと判断されたのでマスコミも扱わなくなっただけだ。しかし、モヤっとしたまま騒動が終わったため、「巨大な力にもみ消された」という陰謀論好きな人々の溜飲を下げる、刺激的なストーリーにマイナーチェンジして語り継がれてしまったのだ。
 こういうネットやSNSの「語り部」たちからすれば、石破氏は格好の「材料」であることは言うまでもない。例えば、石破氏は幹事長時代の12年、自身が代表を務める「自由民主党鳥取県第一選挙区支部」が2006~11年に、在日韓国人が経営するパチンコ店などからも献金を受けていたことが報道されている。
 さすがにもう外国人献金は厳しくチェックをしているだろうが、文春が報じた平デジタル相のケースのように、献金した企業や支援者を洗っていけば今の時代、どこかで中国や韓国と接点が生じる可能性が高い。もし仮に、中国や韓国の事業に力を入れているような企業が石破氏に多額の献金をしていた場合など、保守派の皆さんはこれを大きな「疑惑」として盛り上げていくだろう。

 もちろん、石破氏への攻撃材料はそれだけではない。今、掲げている政策だけでも実はその世界の人々からすれば、かなりハレーションを生むものが多いからだ。
 例えば「日米地位協定改定」の再交渉。米政府当局者から「われわれは興味も意欲もない」(時事ドットコム10月1日)と釘を刺されたことで、保守派を中心に反発が生まれている。世界的には保守とは、自国第一主義なので「反米右翼」となることが多いが、日本の保守は「親米右翼」である。
 つまり、「日本に不利益があっても、アメリカ様の嫌がることはしてはならぬ」というタブーが永田町や霞が関にはあるということだ。秩序を乱す石破氏へ「制裁」をすべきと考える人たちも当然、存在している。
 また、「2020年代に最低賃金1500円」もよろしくない。中小企業経営者の団体「日本商工会議所」の小林健会頭は昨年9月1日、岸田政権の掲げた「2030年までに最低賃金1500円」という目標について「やむえない」と理解を示したが、それがわずか1年で新首相がドカンと前倒しをしたのである。理解を示すのは難しいだろう。
 日本商工会議所は約125万事業者の会員数を誇り、自民党の有力支持団体である。自民党総裁はここの機嫌だけは絶対に損ねてはいけない。地元の商工会や中小企業経営者から手厚い選挙支援を受けている議員の中には、「石破おろし」を検討し始めている者もいるかもしれない。

 ただ、個人的にはこのような「石破叩き」が盛り上がるほうが、国民にとってはいい兆しのような気がしている。
 これまで日本の政治が何も決められない、何も変わらないという閉塞感があったのは、冒頭で述べたような「ハネムーン期間」に象徴されるように、政治家も官僚もそしてマスコミも同じ「ムラ社会」の中で「なあなあ」で物事を進めてきたからだ。
 集団合議制の中で、派閥の力学とキングメーカーが利権を調整して「落とし所」を決める─。人口も増えて日本が成長をしていく時代はそれでもうまくまわったが、これからの日本には「ムラの論理」から外れて、人々が目を背ける利権などに手を突っ込むことが求められる。
 つまり、今の日本に必要なのは「仲間に嫌われてもやるべきことをやるリーダー」だ。それが石破氏なのかどうかは現時点ではわからないが、そう願う。
 これからどんな「石破叩き」が始まるかも含めて、注目していきたい。
                      (ノンフィクションライター 窪田順生)

書評 『14歳からの非戦入門:戦争とジェノサイドを即時終わらせるために』伊勢崎賢治 著

 長周新聞に『14歳からの非戦入門:戦争とジェノサイドを即時終わらせるために』(伊勢崎賢治 著)についての書評が載りました。

 本書の著者:伊勢氏は、長く国際NGOや国連の職員としてアフリカ、東ティモール、アフガニスタンなど世界の紛争地帯で停戦調停や武装解除の実務を担ってきた人です。書中では「ウクライナ戦争」や「イスラエルによるガザ大虐殺」も取り上げられています。
 敢えて表題で「14歳から」と銘打っているのは、「次世代への提言としても有益な内容が詰まっているからとしています。年季の入った平和主義者への皮肉も多少込められているように思われます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
14歳からの非戦入門:戦争とジェノサイドを即時終わらせるために』
 著・伊勢崎賢治
                      書評 長周新聞 2024年10月2日
 ウクライナやパレスチナ・ガザでの戦争が世界不安定化の事象として取り沙汰されるなか、日本でも政府やメディアは日常的に「わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増し…」「東アジアの不安定化」という言説をくり返し、その脅威から身を守る手段として、日米同盟強化や軍備拡大を当然のことと見なす世論を醸成している
「新たな敵が現れた」「その敵は卑劣で残忍だ」「世界の秩序やわが国の主権を脅かそうとしている」 日頃から敵視している国や地域で不穏な動きが起きると、メディアなどあらゆる手段を通じて恐怖と敵愾心が煽られ、相手を徹底的に「悪魔化」する。
「民主主義を否定する独裁者」「大量破壊兵器を保持している」「予測不能なテロリスト」などの言説、果ては人種や宗教の違いを引き合いに出して「交渉不可能」な相手と見なし、国内では福利厚生の予算を削ってでも軍備を増強し、最新兵器を買い、戦力を認めていない憲法まで変えてしまおうという動きがかまびすしさを増す。今まさに欧米諸国や日本で起きている現象だ。

大国が仕掛ける「安全保障化」の罠
 本書は、国際NGOや国連の職員としてアフリカ、東ティモール、アフガニスタンなど世界の紛争地帯で停戦調停や武装解除の実務を担ってきた著者が、戦争前夜に必ず起きるこの「安全保障化」(セキュリタイゼーション) 一般大衆に敵の「恐怖」を植え付け、集団ヒステリア化させる という現象と、そのために不可欠なメディア力を誇る米国の言説に囚われやすい「緩衝国家」 大国の狭間にあり、武力紛争において緩衝材として機能する国家 でありながらその自覚が乏しい日本の問題を焦点に、現在進行中の戦争と日本の危機をいかに解決するかについて論じている

 本書で扱われているテーマは、現在進行中のウクライナやガザでの戦争、また筆者が直接経験したアフガニスタン戦争など多岐にわたるが、停戦実務家としての著者の立場は一貫している。「永久に続く戦争などない。いつか終わる。ならば、それを一日でも早く」というものだ。対立する「正義」のどちらかに加担して、一方を否定する(犠牲が出ても「あっちが悪い」というだけ)というものではなく、あくまでもそこに生きる無辜の人々をいかに救うかを模索する。いくら「人権が」「正義が」と悲憤慷慨したところで、戦闘を止めることなしにその回復は為し得ないからだ。
 ところが現在、直接の紛争当事国でもなく、国連や国際人道法による秩序を謳ってきたはずの欧米諸国は、停戦仲介には踏み出さず、ロシアには経済制裁、ウクライナには軍事支援一辺倒、そしてイスラエルのパレスチナ人大量虐殺に対しては制裁を科すどころかこれを擁護している。著者はこれを「国際法の理念の基盤を脅かす、今までにない脅威」と厳しく断罪している。

 憲法9条を持つ日本でも、普段からの排外主義勢力だけでなく、「戦争反対」「平和主義」を唱えてきたはずのリベラル政党や護憲団体までが「ロシアと戦うウクライナとの連帯」を主張し、即時停戦を主張する著者らに「プーチンを利する親露派」のレッテルを張るという奇妙な現象が生まれた。国会ではロシア国民全体への集団懲罰であるロシア制裁決議が与野党の賛成で可決し、集団懲罰に対する寛容な空気が日本を含む欧米諸国に蔓延するなかで、イスラエルによるガザ大量虐殺が始まった
 そこでも10・7のハマスによる「テロ」が「いきなり突然起きた」という言説が前提とされ、ウクライナ戦争をめぐる論議でその淵源であるドンバス内戦を無視たように、ハマスの「奇襲」を生んだイスラエルの80年余続く違法な土地収奪とパレスチナ人迫害は無視される。イスラエルの非道性を訴える側も、前置きとして「ハマスによるテロ」を糾弾し、イスラエルの「自衛権の行使」を許容するという具合である。
 「悪魔叩き」の言説だけが肥大化し、停戦を実現する営みが阻止され、その下で夥しい犠牲者が生まれるという構図は同じなのだ。

「専守防衛」という概念の危うさ
 著者はこのことを日本の改憲派・護憲派のなかにある「専守防衛」(日本特有の概念)とつなげて問題を提起している。
 日本では戦力の保持を認めない憲法9条を持ちながらも「専守防衛」「個別的自衛権」を是として軍拡が進められたが、ジェノサイド条約批准しておらず、戦争犯罪を裁く法体系がない。そのため100年前の関東大震災で起きた朝鮮人虐殺のような集団暴行や殺害事件が発生したときに、それを煽動したり命じた「上官責任」が問われない。また、日本の自衛隊が海外で戦争犯罪を犯した場合にも、現在の自衛隊法には「抗命罪」、つまり上官の命令に背いた末端の自衛官を罰する法しかない。まさに「ヤクザの親分と鉄砲玉」の関係のまま、世界屈指の軍事力を有する国になっているのだ。
 国際法が規定する戦争犯罪に「先に手を出したのはお前だろうが」という言い訳は通用しない。こちら側がいくら正当防衛のつもりで撃っても民間人を殺してしまうこともある。そのような当然起こりうる戦争犯罪すら想定もしない「目眩がするような“法の空白”の状態」で、ひたすら隣国の脅威を叫び、「敵基地攻撃能力」などという戯れ言が政局化する日本の異常さである。

 そのことは現在、戦争犯罪を無視してパレスチナ人を虫けらのように殺戮するイスラエルの「自衛権の行使」と重なると著者は指摘する。国際法を遵守する意識を放棄すれば、みずからも国際法に守られない。いくら後ろ盾に超大国米国の存在があるとしても、その米国は国の威信をかけて20年戦ったアフガニスタンでタリバンに完敗し、全面撤退を余儀なくされた。イスラエルの極右政府もいまや全世界(イスラエル国内も含む)の世論から包囲され、近隣国へのテロ行為をくり返し、果ては核兵器の使用までちらつかせて自滅の度を深めている。
 同じ米国の「同盟国」であっても、日本の場合は、たとえば休戦中の朝鮮戦争において朝鮮国連軍(実質は在韓米軍)と地位協定(在日米軍基地が後方司令部となる)を結んでおり、朝鮮有事のさいには、日本はみずからの意志にかかわらず自動的な参戦国になる。つまり、自衛隊が何もしなくても国際法上正当な攻撃対象になるのだ。米国が仕掛ける戦争において、協議も合意もなく、否応なしに戦場となり焦土にされる関係――それを「日本人がみずから進んで受け入れる」ように煽るのが「安全保障化であり、脇目も振らず米国と「一体化」することに「国家の主権」の発露を置き換える日本特有の悲劇的姿があると著者は訴えている。

「新しい戦前」に抗うために
 著者は停戦実務家として、むしろ米軍やNATO軍と行動をともにしてきた。「超大国が国連憲章を悪用することによって生まれた現場」で「その悪用が生んだ『敵』に命を狙われる立場での任務」だ。だからこそ紛争現場でその内実をつぶさに目撃し、軍人の本音にも触れ、NATOも米軍も、ロシア、北朝鮮、中国との武力行使に一時的感情にまかせて突き進めるほど一枚岩でないことも肌身を通じて体感している。
 また、停戦実務家は、その実現のために戦争犯罪などの追及を一時棚上げにする冷徹さが必要となるため、常に人権団体からも「悪魔に寛容」「不処罰の文化を流布する」として非難を受ける。そして戦闘が長期化すればするほど、停戦交渉者はこれまで犠牲を払って戦ってきた大義との関係で「敵に弱みを見せた」「脅しに屈した」などの批判に晒され、ときに背後の味方から命を狙われることもあるという。同調圧力が支配する紛争当事国であれば十分に想定されることだ。
 だが現在、少なくとも外部の「安全地帯」にいる私たち、かつて侵略戦争に国民を駆り立て、破滅的局面に追い詰められても「一億玉砕」を叫び、東京大空襲、沖縄戦、そして広島・長崎の原爆投下を経験した日本人、そして平和憲法を持つ国だからこそ、戦争において気分感情や「国家の大義」に身を委ねることの愚かさを自覚し、大国が煽る「安全保障化」に囚われぬ民族融和の道を探る使命があると著者は強調する。
 「力による現状変更を許さない」という論調だけが肥大化し、その「備え」としての軍備拡大や、相手との対話を拒む同調圧力が支配するなかで、改憲勢力が勢いづくだけでなく、その真逆にいるはずの反戦勢力までも「平和を自衛する」ために仮想敵国の絶対悪魔化に加担する 本書は、このような文化がはびこる「新しい戦前」の空気のなかで、21世紀の「対テロ戦争」を現場の視点から総括し、戦後のリベラル・平和運動に一石を投じるものでもある。表題で「14歳から」と銘打っているように、次世代への提言としても有益な内容が詰まっている。
           (ビジネス社、228ページ、1700円+税)

中国敵視を使って対米自立(田中宇氏)

 田中宇氏が掲題の記事を出しました。

 石破氏がかねてから提唱している「アジア版NATO」がテーマです。
 この構想について、岩屋外相は「直ちに設立するのは困難」と述べ、インドの外相も「念頭にない。構想を共有しない」と否定しました。
 いずれにしてもどの国が仮想敵国なのか、という根本問題が明白でなく、もしもそこで紛糾するようであれば「結成」することなど出来ません。
 その点は第二次大戦の直後、共産主義革命が広がりつつあった西欧で、米国が主導して「NATO」を結成した状況とは根本的に異なります。構想自体をポエム扱いする記事が出る所以でもあります。

 そもそも石破氏の提唱する「アジア版NATO」の詳細が不明なので、記事を読んでもよく理解できません。とはいえ田中氏が、大きな流れの中で日本の対米従属関係をどのように変えるべきかにおいて、その一つの手段として肯定的に捉えようとしていることは何となく理解できます。
 石破氏は総理総裁として初めて「日米地位協定」の改定に言及しました。それに対して米国は早々に「全く念頭にない」と一蹴したのは、関心を寄せていたことの証明でした。念頭に置いてもらわないことには困ります。
 田中氏は、「石破は、既存の日米安保体制について、米国が軍事的に日本の安全を守ってくれる代わりに、日本は外交政策の決定権を米国に握られており、外交権を持たない日本は真の独立国家でないと考えている」と述べています。
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中国敵視を使って対米自立
                 田中宇の国際ニュース解説 2024年10月1日
日本の石破茂新首相は、中国包囲網の色彩を持つアジア版NATOの創設を提唱したり、8月に台湾を訪問するなど、中共の敵として名乗りを挙げている。独自の中国敵視でなく、中国敵視を強める米国のお先棒担ぎをしたがっている感じだ。

日米同盟をアジア版NATOに転換すると、本家NATOほどの縛りがないとしても、日本は自国周辺の防衛だけでなく、西太平洋からインド洋にかけての広域な中国包囲網に軍事関与・戦争準備せねばならない。米国から褒められること以外に、アジアの他国の領域に出ていって中国と敵対することに意味があるのか、という話になる。
米国は最近、中国との敵対を強める目的で、台湾への軍事関与を強めている。今回、石破が総裁選に出る前に訪台したことは、首相になれたら日本として台湾への関与を強め、米国の中国敵視の尖兵になりますよという表明になっている。
石破は、日本を中国の敵に仕立てることで対米従属・米傀儡色を強めたいように見える。

しかし米国では、石破が対米従属を強めるのでなく、逆方向の、対米自立を強めたがっている(だから米国は警戒すべきだ)という見方が出ている。米覇権派ジョージ・ソロス傘下のクインシー研究所やロイターが、そういう記事を出している。Japan's new PM may have a bone to pick with the US

石破は、既存の日米安保体制について、米国が軍事的に日本の安全を守ってくれる代わりに、日本は外交政策の決定権を米国に握られており、外交権を持たない日本は真の独立国家でないと考えている
石破は、日本を対米従属から離脱して自立させるために、米軍が日本を守るために日本に駐留する見返りに、日本の自衛隊が米国の西太平洋海域を守るためにグアム島に駐留する案(石破ドクトリン)を出している。Incoming Japan PM Ishiba's 'Asian NATO' Idea Test for US Diplomacy

従来のアジアの米国側の国際安保体制は、日韓比タイ豪NZの8カ国が米国と個別に2国間の安保協定を結んでいるだけで、8カ国間の横のつながりが少ない米国中心のハブ&スポーク型になっている。石破はこれを改善するために、8つの2国間協定を一つに統合し、横のつながりも新設して、全体を「アジア版NATO」として再編する構想も、以前から表明している。
クインシー研など米国(の単独覇権派)からみると、石破のアジア版NATO案は、日本が従来の対米従属一本槍から離脱して「米国と仲良くしたまま大東亜共栄圏」みたいなものを目指し始めたように見える
だから、米国だけでなく中国も、石破の案に反対している。米国の覇権派は、石破のことを(潜在的に反米的な)ナショナリスト、もしくは同盟内で米英支配に楯突く仏的ドゴール主義者だといっている。

石破は、米傀儡の過激派かと思ったらそうでなく、米国と中国の両方から敵視・警戒されて潰される間抜けな軍拡派なのか??。実はそうでもない
クインシー研の記事は、鳩山由紀夫と石破を対比している。鳩山は首相になった時、直裁的に対米自立と中国・韓国への接近をやろうとして、米国と、日本の米傀儡派(外務省など官僚機構とマスコミ権威筋のほとんど)から猛烈に阻止反対誹謗攻撃され、9か月で首相を辞めさせられた。
鳩山や小沢一郎の直裁的な親中国路線で日本を対米自立させることは非常に難しいことが確認された。多極化に対応し始めた日本)(民主化するタイ、しない日本

それなら逆方向からやるのはどうか、ということで、大統領になったドナルド・トランプに勧められて安倍晋三がやったのが、米日豪印の「インド太平洋」を提唱して米傀儡な感じで中国包囲網を形成しつつ、その一方で中国に対して仲良くしましょうと言い続けて協調関係を維持する「対中強硬的な親中路線」だった。米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本)(中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本

石破は、安倍晋三の好き嫌い重視の幼稚な党運営を批判しつつ、安倍の外交戦略を継承している。石破はもともともっと直裁的な親中国派だったが、鳩山や安倍の動きから学び、対中強硬的な親中路線に転換した。今回の総裁選では、高市も小泉も、外交策で安倍を継承している。Popular favourite for Japan PM, Ishiba, urges closer ties with Asia)(The Engaging Outsider: Can Ishiba Shigeru’s Iconoclastic Policies Gain Traction?

米国(の隠れ多極派)はニクソン訪中以来、中国を支援し続けて台頭させたが、いざ中国が台頭すると、米国は同盟諸国が中国と仲良くするのを禁止し、同盟諸国を中国敵視の監獄に閉じ込めている。その始まりは鳩山政権のころだ。
安倍は、トランプの機転を受け、中国を敵視しつつ仲良くする新路線を開拓した。だが、トランプが不正に落選させられた後、安倍も米諜報界に殺された安倍元首相殺害の深層

中国はどんどん台頭している。コロナ(パンデミック条約。WHO)や温暖化対策(IPCC)など、米国でなく中国が世界を支配する分野が拡大している。米覇権は衰退していく。
米国に強要されたからといって、中国を本気で敵視するのは馬鹿だ中国を敵視する対中強硬派を演じつつ、中国と仲良くする安倍路線しか、日本はとれないAproposed World Health Organization treaty on preparing for future pandemics is currently "not acceptable" to Britain, a UK health minister said on Tuesday

米国(隠れ多極派)は、日本など同盟諸国に中国(中露)敵視を強要することで、同盟諸国が米国の言うことを聞けなくなって対米自立して非米側に転じるよう誘導したい。
日本は、積極的に対米自立したいわけではない。対米従属は居心地が良い。だからこそ米国は、衰退しているくせに、日本に中国敵視を強要してきて、日本が米国に従属し続けられないようにしている。

米英は世界への支配欲が強いが、中国は国内が多様で統治に労力を割かれる分、世界への支配欲が弱い(冊封外交していた大昔からそうだった)。米国は、日本の上層部を細かくスパイして従属を強いてくるが、中国は(今のところ、というより多分今後も)そんな諜報力もない。
中国は、日本の政界が中国敵視を強めることを非難するが、従属を強いることはできない。日本政府が対中強硬姿勢をとりつつ、中国と仲良くしたいと言ってきたら、文句を言いつつ日本とふつうに付き合う。米国の覇権がもっと低下したら、日本は米国からの強制にあまり従わなくてもよくなり、中国敵視も減る。

現実的に見ると、尖閣諸島(や北方領土や竹島)の領土紛争は、戦争でなく外交(棚上げによる和解)でしか解決できない。領土紛争は、米傀儡として周辺諸国と対立し続けるために存在している。棚上げによる和解を、政略としてでなく本気で否定する者は馬鹿である。北方領土と対米従属

中共は、米日など諸外国が政治や軍事の面で台湾との関係を強化することを絶対に許さないと言い続けている。米国が台湾への軍事支援を強めたら、中国軍が台湾に侵攻して強制併合するぞと言っている。
だが実際に、中国が台湾に軍事侵攻することはない。台湾は経済的に繁栄している。半導体製造など、世界最高級だ。2014年から内戦で破綻気味だったウクライナと違う。中国は、繁栄したままの台湾を自国に併合していきたい。
中国は、米国側の諸国が台湾を国家承認するなど一線を超えない限り、台湾に侵攻しない。米国側は、台湾を、中国を怒らせるための道具として使っている。石破も高市も2021-22年ごろから、その目的で台湾に近づいている。
中国は、石破より高市を嫌っており、石破に対してはむしろ以前から評価する傾向がある。高市は女性なので、保守的な自民党内で、男たちを超える過激な保守路線を進まないと認めてもらえない。だから中国敵視が特に強いし、首相になっても靖国神社にお参りすると豪語したりする。外交策の本質は、石破も高市も小泉も、大体同じだ。Japan’s ‘Iron Lady’ Sanae Takaichi focuses on Taiwan, US in appeal to China hawks before LDP vote

中国敵視を活用した対米自立策は、11月の米大統領選でトランプが勝つ場合にうまくいく可能性が高い。トランプは、かつて安倍にインド太平洋の中国包囲網を任せたように、石破にアジア版NATOの創設を任せるかもしれない。トランプはNATOが嫌いだから、名称は別のものになる。(プーチンが言うように、トランプは予測困難な動きをするが)
トランプは米覇権を解体したいので、日本が中国敵視にかこつけてインド太平洋の諸国と安保的な連携を強め、対米自立していくことを歓迎する。
逆にハリスの民主党は、米単独覇権に固執するので、アジア版NATOの創設を許さない。ハリス政権ができる場合、石破は、これまでの岸田と同様、対米自立とは逆の、いないふり戦略の傾向を強める。短命の政権になるかもしれない。

石破は、11月5日の大統領選で米国の次の政権が決まる前に、自分の政権基盤を固めておきたい。だから10月27日に総選挙することにしたのでないか。
米大統領選は、民主党側のリベラル全体主義が崩れ出し、ハリスが担当していた移民政策の失敗などを、民主党自身が認めざるを得なくなっている。トランプが勝つ可能性が高まっているDemocrats Suddenly Care About Illegal Immigration After Years Of Gaslighting Americans)(Free speech makes US ‘hard to govern’ – John Kerry

日本の官僚機構やマスコミ権威筋は、旧来の米単独覇権体制の一部である対米従属一本槍の状態を好む米諜報界の傀儡であり、トランプの返り咲きや、トランプと組んで中国敵視活用の対米自立策を進めようとする石破の策を非難誹謗揶揄し始めている。
マスコミは、うっかり傀儡な野党とともに石破を非難し続ける。だが、石破の政権が短命に終わったとしても、次に出てくる高市や小泉の政権も、その後の政権も、中国敵視活用の対米自立策を進めようとする。そのうちに米覇権の低下が激しくなり、日本の対米自立が不可避になる。