田中宇氏が掲題の記事を出しました。
この22~24日にロシアで開かれた年次定例サミットで、BRICS諸国は米英が作った既存の世界経済システムに依存しない、独自の経済システムを構築する過程を(一応)完了したと述べています。
22年2月のウクライナ開戦後、米国側から強烈に経済制裁されたロシアに中国が結束し、制裁を乗り越えるために対米自立した非米側システムの構築を開始してから2年半になります。
非米経済システムがほぼ完成し、米国側の既存システム(米覇権体制)と非米側の新システムがしばらく併存するものの、いずれ財政赤字急増の結果として米国側の金融バブルが大崩壊し、世界経済の中心が非米側に移っていくと述べています。
今回、世界の13か国がBRICSの伴侶諸国(パートナー)になりましたが、その中のインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムはASEANのメンバーです。ASEANはかつて米国の傀儡勢力でしたが、それがBRICSの伴侶として非米側に入る感じが濃厚になりました。
世界は活力をもって合理性のある方向に向かっているということです。
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BRICSが多極型世界の準備完了
田中宇の国際ニュース解説 2024年10月29日
BRICS諸国は、10月22-24日にロシア中央部のカザンで開いた年次定例サミットで、米英が作った既存の世界経済システムに依存しない、独自の経済システムを構築する過程を(一応)完了した。
BRICSクリア、ブリッジ、ペイ、ユニット、保険、格付けなど貿易、決済、通貨に関する機能。穀物取引所から産業運輸インフラやデジタル環境の共同整備まで、多分野にわたる経済システム構築がサミットの宣言に盛り込まれている。(Kazan Declaration)(BRICS summit: Key takeaways from the Kazan declaration)
2022年2月のウクライナ開戦後、米国側から強烈に(不当に)経済制裁されたロシアと、次に制裁されそうな中国が結束し、制裁を乗り越えるために、BRICSを主導して対米自立した非米側システムの構築を開始した。(多極型世界システムを考案するロシア)(資源の非米側が金融の米国側に勝つ)
2年半の構築・試用期間を経て、今回のサミットで非米システムがほぼ完成し、今後は本格運営に入っていく。非米システムは米国側より不便だろうが、何とか機能するところまで作れたのだろう。
世界経済は、米国側の既存システム(米覇権体制)と、非米側の新システムがしばらく併存する。いずれ、米政府の財政赤字急増の結果として米国側の金融バブルが大崩壊し、世界経済の中心が非米側に移っていく。(BRICS countries may present instruments for mutual settlements at summit in Kazan)(Pepe Escobar: BRICS Make History - Can They Keep the Momentum?)
BRICSは今回のサミットで、非米側の多極型世界システムを完成した。中露の言い分は、米国が覇権延命のためにライバルになりそうな露中などを敵視制裁したり、途上諸国の資源を安く買い叩いたりするのが不当だから、敵視制裁されても潰れないようにする正当防衛として非米システムを作った、というものだ。
私から見ると、この中露の言い分は、いま起きていることの全体像の半分(中露から見た視野)しか表していない。残りの半分は、米国の覇権運営体(諜報界、DS⇒デープステート)の中に、世界が多極型に転換した方が実体経済の世界規模の成長が長期的に拡大するので、過激に稚拙にやり続けて米覇権を自滅させ、非米側・途上諸国を世界の中心に押し出してきた勢力(隠れ多極派)がいる、ということだ。(米英覇権を潰す闘いに入ったロシア)(Here’s what the West misunderstands about BRICS)
米国が良質な覇権策をやっている限り、中露は便利な米国システムに満足し、わざわざ不便な非米システムを作る必要などなかった。米国は、中露を不必要に敵視制裁し、ウクライナの露系住民を殺して戦争を誘発する極悪で自滅的な策をやり、中露BRICSが非米システムを作りたくなるように仕向けた。
米諜報界は、覇権維持派(英国系・帝国の側)と、隠れ多極派(国連P5を作ったロックフェラー系・資本の側)が騙し合って暗闘しており、多極派は覇権維持っぽい策を稚拙に過激にやって失敗させ、覇権自滅と多極化を招いてきた。(世界を多極化したがる米国)(世界帝国から多極化へ)
米中枢の隠れ多極派は、米議会を動かして、リーマン危機後の米金融システムの最大の延命策だったQE(造幣による債券買い支え)を2022年3月からやめさせ、替わりに米政府が急増する財政赤字の一部を注入して金融システムを延命させている。米国債は過剰発行になり、長期金利や金相場がじりじり上がっている。これは、ドル崩壊の兆候だ。
たぶん米国は、次期政権(多分トランプ)の間に金融崩壊して覇権衰退する。それで、イラク侵攻やリーマン倒産から続いてきた覇権の多極化・非米化が完成する。この流れを作ったのも隠れ多極派だ。(中露が金地金で米覇権を倒す)(ドルはプーチンに潰されたことになる)
米国のシステム崩壊が近づく中で、今回、BRICSが「ノアの箱舟」的な最低限の代替システム構築を完了した。
米国の金融崩壊が覇権消失に直結するのか不明だし、覇権維持派がQE復活など新たな延命策をやれるかもしれない。米覇権消失は意外に先かもしれないが、BRICSはそれでもかまわない。非米システムを改善する時間がとれて、むしろ良い。(A Multipolar World: Where BRICS Stands)(Russia's Landmark BRICS Summit And The Specter Of De-Dollarization)
BRICSは今回のカザン宣言に、人為説に基づく地球温暖化対策や、パンデミック対策も盛り込んでいる。人為説はシミュレーションを歪曲したインチキだ。米国側がインチキを軽信して手放した石油ガス利権は、BRICS・非米側の手中にある。それなのにBRICSが温暖化対策やるって変だ。これには裏がある。
BRICSは、温暖化対策をやるふりだけして、表向き優等生であり続ける(判定役のIPCCや国連は中国が握る)。BRICSは、米欧の温暖化対策が不十分だと非難し続け、米欧に石油ガス利権の追加放棄や、エネルギー利用を減らす経済自滅策を強要できる。
それでも米欧経済が潰れなければ、中国主導のWHOが(再び米諜報界の多極派と結託して)新たなパンデミックをでっち上げ、米欧に都市閉鎖(ロックダウン)の経済自滅策を強制する(欧米人を恐怖に陥れて軽信させるマスコミも諜報界の傘下)。
これらの米欧潰しの策をやれるよう、BRICSはカザン宣言に温暖化やパンデミックへの対策を何か条も盛り込んだ。(気候危機の捏造)(米諜報界が中国のために作る世界政府)
今回のサミットの場を借りて、中国の習近平と印度のモディが5年ぶりに会談し、プーチンの仲裁でラダックの中印国境の紛争を4年ぶりに解決した。中印関係は改善していく。
中国と印度はこれまで、国境紛争の対立を解決できたのに、意図的に未解決なままにしていた。その方が、BRICSが団結していないように見せかけ、米国側の権威筋や人々に、BRICSは大したことない、印度は中国敵視で米国側だ、米覇権は永遠だと油断させられる。
中印は今回、そんな「弱いふり」の孫子の兵法を終わりにして、米国側にアッカンベーしつつ仲直りした。BRICS加盟国間の大きな紛争はなくなった。
これまで米国が強かった間は、米国を油断させる策が必要だったが、今後は米国の覇権衰退が加速し、油断させるより、恐れさせて譲歩させる策が有効になっていく。(India and China prepare to complete border disengagement)(The West is in denial about BRICS)
今回、世界の13か国がBRICSの伴侶諸国(パートナー)になった。その中に、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムというASEANの4カ国が入っている。ASEANはかつて米国の傀儡勢力だった。近年は、米国と中国の両方の影響圏になっていた。
それが今、BRICSの伴侶として、非米側に入る感じが濃厚だ。米国側から問われれば「ASEANは中立です」と言うだろうが、全く自由がない米傀儡・対米従属である日本やEUから見ると、中立とは非米側のことだ。(This week’s BRICS summit was historic and here’s why)(BRICS just dropped a manifesto for the new world order)
日本では、選挙で自民党が負けた。しかし今回の選挙で、米覇権が衰退してBRICSが台頭し、非米化や多極化が進んでいる世界の中で日本がどうすべきかという外交安保の話は、争点にも話題にもなっていない。これが今後の日本にとって最重要なことなのに。与野党とも馬鹿みたいに中露敵視・米覇権衰退無視だ。
日本人のほとんどがマスコミ権威筋のインチキ話を軽信するだけなので、このような事態になっている。まあ、米覇権が完全に消失するまで気づかず、お得意の無条件降伏を、次は中露に対してやればいいだけの話。米英より中露の方が他国を放任する。それほど不幸にならない。
石破茂は、かつての安倍晋三に劣らず(むしろそれ以上に)トランプと気が合いそうだ。国内で劣勢でも、首相職が維持できれば、安倍がやり残した、トランプに牽引された対米自立(もしくは、米・非米両属)をやれるかもしれない。(中国敵視を使って対米自立)(BRICS signals shift from US dominated financial system)(BRICS Sensation No. 1 - India's Turn From U.S. To China)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。