ウクライナのゼレンスキー大統領は10月16日、議会で対露「勝利計画」の要点を明らかにしました。それにはウクライナのNATOやEUへの加盟を実現し、ロシア深奥部を攻撃するための長距離ミサイルの使用制限を緩和することが含まれていますが、長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃は米/NATOの軍事衛星、偵察機、人的な情報網などが集めた情報を必要とするだけでなくそのオペレーターを派遣する必要もあるので、ロシアが反撃する場合米/NATOを直接攻撃することになります。
それは世界大戦の勃発であり、核戦争の始まりになり兼ねないものです。
それとは別にゼレンスキーは常にNATOへ加盟させろと要求します。そうなれば形式の上でも米国の属国になることで、これ以上米国へ服従を強めることに一体どんなメリットがあるというのでしょうか。
ゼレンスキーは9月下旬に米国を訪問した際に、バイデンの他、次期米大統領候補の民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプにも、自国が核兵器を保有するか、NATOに加盟したいと語ったということです。「貧すれば鈍す」で、とても正常な判断とは思えません。まだしも核戦争についての具体的なイメージを持っている米国側の方が理性的です。
事ここに至った原因は、22年5月の段階でウクライナ戦争の終結を決断したウクライナに対してそれを許さなかった米・英に責任があるので、ゼレンスキーは強腰なのでしょうけれども‥‥
櫻井ジャーナルの2つの記事を紹介します。
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窮地に陥っているウクライナ大統領はロシアとの核戦争への道を進むと脅している
櫻井ジャーナル 2024.10.21
ウクライナのウォロディ ミル・ゼレンスキー大統領は10月16日、議会で「勝利計画」の要点を明らかにした。ウクライナのNATOやEUへの加盟を実現し、ロシア深奥部を攻撃するための長距離ミサイルの使用制限を緩和することが含まれている。
長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃はアメリカ/NATOの軍事衛星、偵察機、人的な情報網などが集めた情報を必要とするだけでなく、オペレーターもミサイル供与国は派遣する必要が生じる。つまりアメリカ/NATOが直接ロシアを攻撃することを意味し、ロシアはアメリカ/NATOを直接攻撃することになる。つまり世界大戦の勃発であり、それは核戦争になる可能性が高い。
それをロシアのウラジミル・プーチン大統領は指摘、核戦争に勝者はいないと警告しているのだが、それを西側ではプーチンが核戦争で脅したとする人がいる。そうした主張は、ロシアに対しておとなしく攻撃されて殺されろと言っているに等しい。米英の情報機関にコントロールされている有力メディアはともかく、西側の支配層でもゼレンスキーの要求が受け入れられていない理由はそこにある。
ウクライナがNATOに加盟できない場合、残された唯一の選択肢は核兵器を保有することだとドナルド・トランプに伝えたとゼレンスキーは10月17日、欧州理事会で語っている。核武装されるのが嫌ならNATOへ加盟させろというわけだが、NATOに加盟するとはアメリカの命令に従う属国になることを意味する。
ウクライナを戦乱へと導いたのはアメリカにほかならない。アメリカの外交/安全保障政策を決めてきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、翌年の2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。
ネオコンは1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見てロシアも「脅せば屈する」と確信、中立政策を掲げていたウクライナをアメリカの属国にするため、2004年から05年に「オレンジ革命」を仕掛けた。
しかし、この「革命」政権が行った新自由主義政策は西側の私的権力の手先になった特権集団を生み出す一方、大半の国民を貧困化させた。ボリス・エリツィン時代のロシアと同じだ。そこで2010年の大統領選挙では「オレンジ革命」で大統領への就任を阻止されたビクトル・ヤヌコビッチが当選。そこでバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使い、クーデターを実行した。
このクーデターをホワイトハウスで指揮したのは副大統領のジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだとされている。
このクーデターでキエフにはネオ・ナチ体制が樹立されたが、ウクライナがソ連から「独立」するのと同時にウクライナからの独立や自治権を求めていた東部や南部は反クーデターの抵抗運動を開始した。この抵抗運動を潰すためにアメリカ/NATOはキエフ政権を支援、軍事力を増強し、反クーデター軍が支配する東部のドンバス周辺に複数の地下要塞を結ぶ要塞線を築いた。
2021年1月にバイデンが大統領に就任すると、サリバンは国家安全保障補佐官になり、ヌランドは同年5月から国務次官を務め始め、このチームにアントニー・ブリンケンが国務長官として参加している。
クーデターから8年後の2022年にキエフ政権はドンバスに対する大規模な攻撃を仕掛ける動きを見せるが、実際に動く直前にロシア軍がミサイル攻撃を開始してウクライナ軍に大きなダメージを与え、ウクライナ政府はロシア政府と停戦交渉を開始、ほぼ合意に達した。これを潰したのがアメリカやイギリスだということは本ブログでも繰り返し書いてきた。
一連の戦いはネオコンが冷戦でソ連に勝利したと考えたところから始まった。21世紀に入ってロシアが再独立に成功するが、そのロシアも簡単に制圧できると西側諸国は考えたようだ。
その判断が間違っていたことに気づいた人が西側でも少なくないようだが、ネオコンは今でも世界制覇の妄想から抜け出せないでいる。そのネオコンの後ろ盾になっている私的権力はロシアの富を奪うことを前提にして多額の投資をしてきた。ロシアに勝たせるわけにはいかないはずだ。ウクライナに核武装させ、ロシアとの核戦争へと導いて共倒れにさせて「漁夫の利」を得ようとしているとも見られている。彼らは核戦争になっても自分たちのいる場所は安全だと信じているのだろう。
追い詰められたウクライナ大統領は西側を核戦争で脅した
櫻井ジャーナル 2024.10.19
ウクライナのウラジミール・ゼレンスキーは自国が核兵器を保有するか、NATOに加盟したいと語った。ゼレンスキーは9月下旬にアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領のほかふたりの大統領候補、つまり民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプと会談、その際、トランプにも同じことを伝えたというが、この主張は西側にロシアとの核戦争を求めているのだと理解する人もいる。
アメリカ/NATOはウクライナを舞台にした戦闘でロシアに負けている。その結果、ウクライナ側兵士の死傷者は増え、武器弾薬が不足している。さすがに「ウクライナは勝っている」という宣伝は無理になり、「ロシアを勝たせてはならない」という主張に変化した。
そうした状況をイギリスのベン・ウォレス前国防大臣も明らかにしている。昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘しているのだ。
また、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は今年2月、ドイツのウクライナへの砲弾供給を昨年に比べて今年は3から4倍に増やすと述べた。ウクライナへ十分な弾薬供給を維持するのに苦労しており、同盟国からの軍事援助が減ったことで懸念が高まっているとしていた。EU外相を務めていたジョゼップ・ボレルは1月31日、EUは3月までにウクライナに約束していた砲弾100万発のうち、約半分しか提供できないと述べている。
しかし、実際のところ、アメリカ/NATOの兵器供給は2022年にロシア軍が軍事介入した直後の段階で不足、ウクライナの戦死者も膨らんでいた。だからこそ、ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と和平交渉を開始、合意に達していたのだ。その交渉を壊し、戦争を継続させたのがアメリカとイギリスにほかならない。そうした西側の判断が間違っていたのだ。
アメリカの選挙システムは事実上、民主党と共和党の二者択一を要求している。それ以外の政党、あるいは個人として立候補し、当選することは至難の業だ。
勿論、例外的な人物もいた。例えば2000年の大統領選挙では、その前年に実施された世論調査でジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまりジョン・F・ケネディ大統領の息子が共和党や民主党の候補者を5ポイントほどリードしていたのだ。ケネディ・ジュニアは出馬の意思を示していなかったが、彼の大統領就任を望む有権者が多かったということである。
もしケネディ・ジュニアが立候補したなら、投票数でトップになる可能性は高い。そこで選挙人が投票結果に拘束されるのかどうかという点が議論された。選挙人が別の候補者に投票することは可能なのか、不可能なのかということだ。アメリカの大統領選挙は候補者本人に投票するのではなく、選挙人を選ぶからだ。アメリカの大統領選挙が機能不全に陥る可能性すらあった。
しかし、そうした懸念を吹き払う出来事が1999年7月16日に起こる。ケネディ・ジュニアが操縦する単発のパイパー・サラトガが墜落したのだ。目的地であるマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島へあと約12キロメートルの地点だった。本人だけでなく同乗していた妻のキャロラインとその姉、ローレン・ベッセッテも死亡している。
いくつかの点から考えて操縦ミスで落ちた可能性は小さい。例えば、墜落した位置からするとパイパー機は自動操縦で飛んでいた可能性が高い。
現在、こうした例外的な人物は見当たらない。ハリスかトランプになると一般的には考えられている。通常、アメリカの外交/安全保障政策はどの政権でもシオニストが握っている。ジョン・F・ケネディ大統領は在任中、シオニストの命令に従わなくなったが、暗殺された。
ジョー・バイデン政権の場合、外交/安全保障政策はアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官を中心に動いている。バイデン政権が始まった当初はバイデン大統領や今年3月まで国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドもこのグループに加わっていた。このグループはシオニストの中でも好戦的なネオコンだ。
しかし、アメリカの支配システムが揺らいでいることもあってアメリカの支配層は割れている。システムが安定していれば、次の政権も基本的に同じ政策を実行するはずだが、状況が違う。ウクライナで戦争を主導してきたネオコンはアメリカの支配層で孤立しつつあるようで、戦争を継続してロシアを破壊、分裂させようと必死だ。トランプが大統領に選ばれた場合、状況は変化する可能性がある。
そこで、イスラエルやロシアがトランプ政権の誕生を見通して様子を見る一方、ウクライナはバイデン政権の間に何とかしたいのだと考える人もいる。パレスチナやレバノンでイスラエルが住民を虐殺しているにも関わらず動きの鈍いロシアにイランが苛立っている原因もそこにあると分析する人もいる。
ロシアはイスラエルによる攻撃に備え、イランに防空システムS-400を配備済みだろうと推測されているが、もしその推測が間違っていたなら、ロシアにとって困難な状況を作り出すことになるかもしれない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。