2024年10月2日水曜日

自民党総裁選のドラマと極右の高揚感 - 票を動かした日本会議とアメリカの権力

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 小泉進次郎氏が総裁選の最終段階で脱落したのは、「解雇規制緩和」と「選択的夫婦別姓」を争点に持ち出すという愚策を演じたことで、前者で世論の猛反発を受け、後者で日本会議の百地章氏を激怒させたためであると述べています。
 代わりに高市氏が浮上したのは、優勢とされていた小泉氏を蹴落とすために、百地氏が組織を挙げて地方党員票に徹底的に働きかけて小泉票を高市票に切り替えさせた結果であり、それに米国CIAの〝高市氏(の首相就任)は容認しない″という意向を受けた森本敏氏が23日のプライムニュースで、「米国は『高市首相』の靖国参拝を容認しない」と語ったことで、最終的に石破新総裁が誕生したと述べています。
 まさに日本会議と米国CIAの連係プレイともいえるもので、改めて両者の実力のほどを知らされます。
 いずれにしても『極右の高市首相』が誕生しなかったのは日本にとって幸いなことでした。

追記)菅義偉氏の副総裁就任に当たっての「あいさつ」が、余りにもたどたどしくかつ異様であったために、 X#菅さん 大丈夫?」のハッシュタグが立ったということです。機会があったら動画をご覧になってください。
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自民党総裁選のドラマと極右の高揚感 - 票を動かした日本会議とアメリカの権力
                     世に倦む日日 2024年10月1日
自民党総裁選の投開票 9/27に行われ、石破茂が大逆転で勝利して選出された。一回目の投票で、高市早苗(党員票109:議員票72)がトップに立ち、石破茂(党員票108:議員票46)が2位となり、二人で決選投票となった。小泉進次郎(党員票61:議員票75)は3位と落伍し、この時点で敗退が決まった。決選投票の結果は、石破茂215票(議員189:地方26)、高市早苗194票(議員173:地方31)となり、石破茂が逆転のドラマで勝負を制した。まさかの展開であり、テレビに釘づけとなった当日午後2時から午後3時15分の刻一刻を思い出して興奮がよみがえる。スリリングな政治だった。決選投票を石破茂が制し得た理由は、多くの自民党議員が高市早苗を不安視し忌避した点が挙げられる。ルール違反のリーフレット配布も敗因の一つであり、同僚議員たちが高市早苗の資質に疑問符をつけていた内実を見落とせない。

思い出せば、そもそも高市早苗は総裁選出馬に意欲満々でありながら、レース開始の時点で推薦人20人が集まらず、他候補が次々と出馬表明する中、出遅れて躓いたまま、告示前の最後の最後に滑り込んだ弱小候補だった。裏金議員を名簿に並べるという、鉄面皮の所業に及んでようやく推薦人の数を搔き集め、政治記者から実力不足と人望欠如を指摘されていた事実を再確認する必要がある。だが、それが突然情勢が変わり、高市早苗に追い風が吹く。最有力候補だった小泉進次郎「解雇規制緩和」と「選択的夫婦別姓」を争点に持ち出すという愚策を演じ、前者で世論の猛反発を受け、後者で日本会議の逆鱗を買い、一気に失速したため、入れ替わって有力馬として高市早苗が浮上する幸運を得たのだ。本命馬の自滅で先頭集団に躍り出た。特に大きかったのは、9/9の報道1930での日本会議の百地章の発言である。

TBSのカメラの前で、百地章は、よくも裏切ってくれたなと小泉進次郎への憤怒と怨恨をたぎらせ、この総裁選での反撃と報復を誓い上げたのだった。意味は誰でも分かる。組織を挙げて地方党員票に徹底的に働きかけ、小泉進次郎票を高市早苗票に切り替えさせるという意思表明であり、その号令の伝達と飛檄だ。自民党議員に対して、小泉進次郎に入れたらただでは済まないぞと脅しをかけ、圧力と牽制と威嚇の布告を発した。私はそれを見ながら、ずいぶん剛胆で不敵で直截だなと驚き、短期戦の時間を考えれば博打だなと思いつつ、敢えてそれをテレビで言い切った百地章の不気味な自信を感じ取った。果たして、総裁選後半は高市早苗の独壇場となり、Xのタイムラインは高市早苗を応援する右翼のポストで充満し沸騰した。YouTube 動画の再生回数は、高市早苗が313万回と群を抜いて圧倒的な数を記録した。

党員党友票の分かれ方を分析すれば、おそらく年齢的に70代以上の票が石破茂に多く流れ、60代以下が高市早苗に集まったと考えられる。前者は、地方の一次産業生産者や商店主の層であり、後者は、右翼性向が顕著なJC(青年会議所)の層である。前者は、アベノミクスに批判的な嘗ての経世会支持層であり、後者は、アベノミクス万歳で株転がしで儲けている面々だ。石破票と高市票の都道府県別の分布は傾向が明らかで、ヨリ農林水産業や公共事業の建設業の比重の高い過疎県地域で石破茂の支持が高く、都市部の地域で高市早苗の支持が高い。すなわち明確に推定できるのは、若手党員(JC)の票を日本会議が強引に手術し、小泉票を高市票に移し替えた真相だ。日本会議はその政治に時間を要さなかった。日本会議恐るべし。百地章の有言実行。宣告どおり小泉進次郎の地方票を奪い取り、1回目議員票も削り取っ

破竹の勢いで快進撃した高市早苗が、しかし、9/27 の決選投票で勝てなかった理由は何だろうか。無論、政治家の資質を比較したとき、石破茂の方が識見も政策弁論も上で、国民一般からの人気も高く、自民党議員が自分の選挙にとって有利になると判断した点がある。高市早苗は言動下品で卑しく、ウソ失言多く、謙虚さに欠け、「選挙の顔」として不安だというマイナス面が意識されたのだろう。イデオロギー的に極右すぎ、極端を嫌う有権者から票が入るだろうかと危惧された点もある。だが、それだけではない。イデオロギーの問題と重なるが、アメリカ(CIA)から「高市は却下」という意向がシグナルされたのである。終盤、投票5日前の9/23、プライムニュースに出演した森本敏が、首相就任後に靖国参拝を断行すると言い張る高市早苗に対して、「アメリカは容認しない」と釘を刺す場面があった。大きな一撃だっ

この放送回の出席者は、後藤謙次と中北浩爾と森本敏の3人で、森本敏だけが浮いている不自然な取り合わせだった。おそらく、もともとは総裁選レース終盤戦を漫談する平板な政局中継の予定だったのだろう。そこに、ある筋から急なリクエストが来て、森本敏が割り込む変更になったものと推測される。ある筋とはアメリカ(CIA)だろう。森本敏が高市早苗を批判した発言は、9/25のデイリーで配信され、ヤフーニュースに載って拡散された。総裁選終盤、すでに小泉進次郎は脱落が確実となり、解雇規制と夫婦別姓は争点から外れていた。代わって、台風の目となって鼻息荒く進撃する高市早苗の靖国参拝が争点となり、注目を集める局面となっていた。森本敏の「アメリカは容認しない」の発言は、エマニュエルかCIA幹部の差配ではないか。これを投擲するために森本敏はフジに乗り込み、俗臭芬芬の低レベルな政局漫談に同席したのだ。

深圳の児童刺殺事件の後、中国と日本の関係は緊張していて何が起きてもおかしくない。もし、ここで高市早苗が総裁の座を射止め、有頂天のまま靖国神社の秋季例大祭(10/17-19)に参拝決行した場合、中国国内の反日感情が燃え上がり、偶発的事件が発生し、中国政府も収拾できない騒動になりかねない。現在、中国の若者は就職難で不満と鬱憤が溜まっていて、日本首相の靖国参拝は暴発の引き金になり得る。中国共産党が世論の憤激を抑えられず、軍が台湾に動く最悪の事態を招きかねない。そうなった場合は、台湾有事が制限時間前立ち合いで始まってしまう。アメリカはそれを恐れていて、今ここで中国を刺激したくないのだ。自分がコントロールできないアクシデントを惹起させたくないのである。台湾有事はあくまでアメリカがグリップし、アメリカのプログラムに従って計画を実施遂行するのであり、日本(右翼)の論理や動機は持ち込ませない。排除す

森本敏の発言の意味はその点にあり、アメリカ(CIA)が自民党議員に対して、総裁選で高市早苗に投票せぬように要請を示唆した。百地章の 9/9 の発言と並んで、実に生々しい、遠慮なくあからさま権力行使の一幕だった。森本敏の発言は影響と効果が大きかっただろう。決選投票に臨んだ368人の議員は、無記名でも誰がどちらに投票したか判明してしまう。一方、高市早苗の側は、これで靖国参拝を撤回したら、日本中の右翼から激越な袋叩きとなり、政治生命を失いかねない境遇になる。当然、総理総裁になった暁には、世界が注視する中で「英霊に勝利をご報告」と靖国参拝を強行して、日中騒然の破局状況に持ち込んだし、そうせざるを得なかっただろう。それらの絵を想像して、自民党議員は石破茂を選んだのに違いない。アメリカの懸念と警告が、高市敗北の最も大きな要因だと思われる。CIAからすれば、石破茂などいつでも失脚させられ、首を挿げ替えられ

今回は、マスコミが小泉進次郎という初期不良品を担いだから失敗したのであり、次はしくじらないように、茂木敏充とか林芳正とか無難な玉を担がせればいい。高市早苗と日本会議は、アメリカにとって制御しにくい、アメリカの意向を無視して暴走しかねない危険な存在であり、今後も注意と警戒の目を光らせるだろう。アメリカは、今後半年間ほどホワイトハウスの権力が五里霧中の不安定な環境になる。大統領選の結果によっては内戦の危機に陥るとまで悲観されている。4年前はDCで議会乱入事件が起きた。そういう状況で、今、東アジアで中国相手に深刻な衝突は起こせないし、まして、日韓関係を壊すような妄動を日本政府にさせるわけにはいかない。これがアメリカ(CIA)の本音であり、石破茂が総裁になって安堵している根拠だ。石破茂なら、簡単にマスコミを使って支持率を落として失脚させられる。だが、高市早苗は、日本の極右という、アメリカ(CIA)でも管理統制が容易でない - 草の根含みの - 熱い勢力を台頭させてしまってい

おそらく、高市早苗は党内反主流派となり、この衆院選で、裏金議員の選挙区に入って応援運動するだろう。石破執行部が公認しないか、公認しても支援しない、逆風の安倍派裏金議員の支援に回り、日本会議のパワーを総動員し、裏金現職の落選を阻止するべく動くだろう。現在、高市早苗と日本会議と草の根右翼は、勝利感の絶頂で陶酔していて、その高揚感とエネルギー全開のまま4週間後の投票日に突入しようとしている。長い総裁選の期間、YouTube を313万回再生させたエンジンは回転し続けている。絶倫的に唸って止まってない。マスコミと世間は、この選挙を石破自民党と野田野党の戦いと位置づけ、政権交代がテーマだと構図化しているが、私はそうではなく、高市早苗が主役になり、極右が主導権を握る選挙になるのではないかと予感する。高市早苗の演説会場に日本会議が大動員をかけ、そこに無数の草の根右翼が結集し、怒涛の絵を作ってマスコミを驚かすのではないか。

選挙後、自民党の中は分裂状態になり、アモルフ⇒結晶構造を持たないなゲル状態となり、大連立の可能性を含んだ、不透明で荒々しい離合集散の図となるだろう。日本も、フランスやドイツや英国のように、極右が政治の一角を占めて跳梁する時代になるのではないか。最後に、率直に言って、今回の自民党総裁選はとても面白かった。いい年をして、クライマックスの逆転劇に感動を覚えた。政治のダイナミックス、権力闘争の醍醐味を感じた。そう感想することは、決して電通と自民党が仕掛けた総裁選ショーに踊らされたことを意味しない。電通の総裁選ショーは、最初から小泉進次郎を勝たせるために仕掛けた猿芝居で、新総裁は進次郎だと筋書きが決まっていた。だが、政治(の神様)は、くだらない電通のショーなどには付き合わないのである。全く意外な展開を作り、石破茂と高市早苗の一騎打ちという、咬ませ犬と穴馬との真剣勝負を作った。電通すなわちアドミニ(財界やマスコミ)の想定外の結果となった。

自民党(菅義偉や森山裕)は、小泉進次郎が台本どおり順当に圧勝し、それをNHKなどマスコミが派手に祝祭し、高い支持率を一挙に現出させ、定石どおり解散総選挙を行って自民党を勝たせようとしたのだ。進次郎時代の安定した自民党新体制へ繋ごうとした。進次郎劇場のお祭り騒ぎの中で裏金問題を払拭しようとした。だが、結果を見よ。自民党の中は内紛と分裂の状態になり、選挙の行方は見通せない。アドミニ⇒管理者・経営者の思惑と構想は外れ、自民党は明らかに弱体化した。安倍晋三以降続いた盤石のレジームは崩壊の危機に瀕した。裏目に出たのだ。