明治神宮地区の再開発計画は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を入れ替えて建て替え、超高層ビル3棟を建設するもので、住民の強い要求で銀杏並木は保存されましたが、その他の3m以上の貴重な樹木743本を伐採するというものでした。
ユネスコ諮問機関イコモスが遺産危機警告を発し、国連人権理事会報告書が「公開協議が不十分」と指摘するなど国内外の批判が高まる中、都の指示で事業者が9月に示した「見直し」案を都は追認しましたが、大規模施設中心で樹木や環境を犠牲にする本質は変わっていません。
10月中に伐採が始まる見通しとなったことを受けて26日には、都民ら200人が集まって「伐採反対」などを訴えるパレードが行われました。
しかし多くの市民が「伐採反対」「市民、専門家の声を無視するな」と抗議する中で28日、三井不動産など事業者が樹木の伐採工事に着手しました。
しんぶん赤旗と毎日新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
神宮外苑 伐採に着手 森守れ 市民が抗議 癒やしの土地 高層ビル不要
しんぶん赤旗 2024年10月29日
多数の樹木を伐採し超高層ビルを建設する神宮外苑再開発(東京都新宿区・港区)で28日、多くの市民が「伐採反対」「市民、専門家の声を無視するな」と抗議する中、三井不動産など事業者が樹木の伐採工事に着手しました。
吉良議員ら参加
再開発計画は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を入れ替えて建て替え、超高層ビル3棟を建設するもの。ユネスコ諮問機関イコモスが遺産危機警告を発し、国連人権理事会報告書が「公開協議が不十分」と指摘するなど国内外の批判が高まっていました。事業者は9月に「見直し」案を示し、都も追認しましたが、大規模施設中心で樹木や環境を犠牲にする本質は変わっていません。
抗議行動には緊急の呼びかけを受け数十人が参加。「守ろう神宮の森」と書いた幕を掲げた新宿区の女性(71)は「居ても立ってもいられない気持ちで来た。外苑の森は市民みんなの財産で、癒しの土地。高層ビルで金もうけにしてはならない」と話しました。
午後に入り事業者が樹木の伐採を始めると、抗議行動の参加者は「高層ビルはいらない」「市民、専門家と対話して」と声を上げました。
日本共産党の吉良よし子参院議員、里吉ゆみ、原純子両都議が参加。吉良氏は「総選挙で『利権まみれの政治を変えよう』という市民の声が示された。その最中に、対話もなく強行するのは民主主義を踏みにじるもの。国会でも引き続き取り上げていく」と語りました。
「伐採強行は許せない」 明治神宮外苑の再開発、市民から反対の声
毎日新聞 2024/10/28
東京・明治神宮外苑の再開発事業で、三井不動産などの事業者は28日、再開発地区で樹木の伐採を始めた。再開発を巡っては大量の樹木が伐採されることから市民団体の反対の声が根強い。事業者は伐採樹木を減らす見直し案を東京都の審議会に報告。大きな異論が出なかったことから伐採に踏み切ったとみられる。
この日、神宮第2球場跡地の近くで樹木の伐採が報道陣に公開された。作業員らはチェーンソーを使い、ケヤキを伐採した。樹木を別の場所に移植する作業も公開した。近くには再開発に反対する市民団体が集まり、「伐採反対」などとシュプレヒコールを上げた。
伐採作業を見守った新宿区の男性会社員(41)は「見直し案は伐採本数を減らしただけで計画そのものは変わっていない。(神宮外苑に)超高層ビルを建てていいのかなど問題は残ったままだ。住民説明会で反対意見が出ても事業者はその声を聞こうとしない。伐採を強行するのは許せない」と話した。
事業は三井不動産のほか、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事が担う。再開発地区は国立競技場に隣接する約28・4ヘクタールで、老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えてそれぞれ建て替え、超高層ビル2棟を新設する。神宮外苑のシンボルである「4列のイチョウ並木」は保全されるが、他の樹木743本が伐採される予定だった。
事業は都の認可を受け、2023年3月から工事が始まったが、反対の声がやまず、都は同9月、事業者に樹木を保全するための具体的な方法を示すよう要請。これを受け、事業者は今年9月、伐採樹木を124本減らして619本とした上、イチョウ並木と新しい神宮球場との距離を、生育への悪影響が指摘されていた当初の約8メートルから約18・3メートルに引き離す見直し案を発表。今月21日に見直し案を都環境影響評価審議会に報告した。審議会で都の担当者は「今回の変更が環境に著しい影響を及ぼす恐れがあると認められない」と説明した。
小池百合子都知事は25日の定例記者会見で「都民の理解と共感を得られるように情報発信などにしっかり取り組んでほしい」と事業者に要望した。【島袋太輔、山下俊輔】